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【FATBOB 107】図太い走りのコーナリングマシン 107ならではの扱いやすさが光る

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
Harley-Davidson FATBOB 107

ファットボブは旧ダイナファミリーから移籍してきた“走りのモデル”である。元々がパフォーマンスクルーザーの位置付けだが、従来型に比べるとぐっと現代的でスポーティなデザインになっている。

特徴的だった2灯ヘッドライトはクールなLEDラインとなり、シルエットもキャスターが立って縦2本出しマフラーもかち上がったアグレッシブな姿に。もはやクルーザーというよりは超ド級ファイターといった雰囲気だ。

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114とはひと味違う楽しさがある

◆Harley-Davidson FATBOB 107 動画インプレッション◆

エンジンは排気量1745ccのミルウォーキーエイト107仕様だが、これがスムーズで扱いやすく実にいい感じ。114の大砲で弾き飛ばされるような加速感も刺激的だが、107にも独特の滑らかな回転フィールの味わいがあって、スロットルも開けやすくより細やかなビート感が楽しめる。

もちろん、スロットルを開ければぶっ飛ぶが、一方で高回転が伸びるのでワンギヤで引っ張るような走り方もできるなど、見方によっては114とはまたひと味違ったスポーティさが楽しめる。僅かな排気量の違いなのだが、実はキャラクターがけっこう異なるという作り分けも新型ソフテイルの魅力になっている。

ハンドリングもなかなかユニークだ。前後タイヤのサイズがフロント150に対してリヤ180という組み合わせになっていることもあり、倒し込みでは前輪がゴロっと転がるような大排気量マシンらしい手応えがあるのだが、バンクさせるにしたがって軽くなっていく。コーナリングではスロットルを開けさえすれば後輪が路面を蹴ってグイグイ向きを変えていく、いわゆるトラクション旋回の感覚が楽しめる。

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スポーツ性能を狙った作り込み

ファットボブが新ソフテイルの中でも特に走りにこだわったモデルであることは、その装備を見れば一目瞭然だ。

シリーズ中でもカートリッジ式倒立フォークとダブルディスクが装備されているのはファットボブと最新のFXDR114のみで、リヤショックもロングストローク仕様が採用されるなどハイグレードな足まわりが与えられている。

またキャスター角も28度とネイキッド並みに立っていることからも、旋回性重視のディメンションであることは明らかだ。

実際のところ、フロントまわりの剛性感があるので安心して強いブレーキをかけられるし、コーナーでも思い切って寝かせていける。リヤショックも強大なトルクをしっかり受け止めつつも、路面のギャップをうまくいなしてくれるしなやかさも持っている。通常のスポーツバイクのように前後サスのピッチングを生かしてきれいに曲げていけるのだ。

従来のハーレーのイメージからすると、「え、これがハーレーなの?」というぐらい走りのインパクトがある。ファットボブに試乗した人は、皆が口を揃えて「楽しい!」と言う。それがすべてを物語っていると思う。

ファットボブは新ソフテイルの中でも最もイメチェンに成功したモデルの一台だ。走りやデザインも含め、ある意味で“らしくない”というか、随分思い切ったことをしてきたなと。

でも根底に流れるスピリットはハーレーそのものだ。荒々しいエンジンの鼓動と重厚感あふれる走りはそのままに、運動性能をスポーツモデルと匹敵するまでに高めたという意味で、新たな価値を創り出したモデルと言えるのだ。

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出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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