「あおり」抑止にバイク用ドラレコ だがそこには盲点もある
すでにご存じの方も多いと思うが、先日、バイク用ドライブレコーダーが「あおり運転」の抑止につながるかどうかについての興味深いレポートがアップされていた。
これはオートバイ用品の小売・開発を行うナップスが行った【交通安全意識・運転マナー】に関しての実態調査で、対象は「現在125cc以上のバイクを所有し、過去1年以内にバイクを運転したことのある全国の男女500名のバイクライダー」とのこと。
同時にプロテクター着用についての意識調査も行っているので参考にしてほしい。
ライダーの7割がドラレコ肯定派
レポートによると、7割以上のライダーが「あおり運転」や「幅寄せ」でヒヤリとした経験があるとのこと。また、バイク用ドライブレコーダー(以下ドラレコ)が普及することで「あおり運転」が減少するかという問いに対しては、6割以上のライダーが「抑止につながる」と考えていることが分かったという。
中でも特に目を引いたのがドラレコの所有率で、対象者の約3割が既に所有している。そして、「所有していない」と答えたライダーの内、6割以上が「今後所有したい」と思っている。つまり、対象者となったライダーの7割以上がドラレコを既に所有しているか、あるいは所有したいと考えているということだ。
これは想像以上に高い割合と思う。昨年7月に発生した大阪府の「あおり運転」による大型バイクの死亡事故も報道で大きく取り上げられるなど、“いつか自分の身にも起きるかもしれない”事例としてライダーの関心度も高まっていると考えられる。
また、最近はドラレコの映像が動画共有サイトなどにも大量にアップされるようになり、こうした動かぬ証拠が危険運転の検挙につながる例が紹介されるなど、一定の抑止効果を期待できると考えるライダーが増えているということだろう。
ドラレコを標準装備にすべきでは
ドラレコに対するライダーのニーズがそこまで高いのであれば、バイクに標準装備すべきではないかとも思える。ほんの10年前にはETC車載器を付けているバイクはほとんどいなかったが、高速道路に限れば今や8割近くが装着していると言われ、国産・輸入車を問わずETC車載器を標準装備したモデルも増えてきている。
今の技術なら、バイク一体型の超小型カメラを開発することなど簡単なはずだし、たとえばバイクが走り始めると同時に自動で録画をスタートし、映像データをクラウド上に自動でアップロードしてくれるシステムも作れそうなものだ。
これに場所や速度、加速Gなどの走行データを記録するデータロガーをリンクさせてやれば事故の検証にも役立つし、事故証明などもより正確かつ効率的に行われるなどメリットも大きいはずだ。
常軌を逸した人間には効き目なし
ただ、技術にも盲点はある。先の大阪の例では猛スピードで煽りまくった挙句、バイクごとライダーを跳ね飛ばして「ハイ、終わりー」とまるでゲームでも楽しんでいるかのように冷淡につぶやく犯人の声がドラレコの映像とともに残されていた。彼は自らのドラレコによって裁かれることを知っていた確信犯だったとも言える。
このおぞましい事実は、怒りに囚われ常軌を逸した人間にはどんな抑止策も通用しないことを示している。
万が一の事故への備えとしてドラレコを活用し、ヘルメットやプロテクターなどの装備を充実させることはもちろん重要だ。ただ、それにも限界はある。逃げても逃げても追いかけてくる相手をどうかわせばいいのだろうか。
「あおり」のトリガーを自ら引かない
きっとそうなる前に抑止すべきなのだ。「失敗する余地があるなら、失敗する」と説いたマーフィの法則ではないが、経験則というか直感というか、そういう危険な香りを感じ取る嗅覚を動物としての人間は持っていると思う。
たとえば「このクルマはヤバそうだな」とか「このタイミングで割り込んだら煽られそうだな」と思ったら、それはおそらくその通りになる。そう分かっているなら、やらないこと。
「あおり運転」につながるトリガーを自ら引かないことだ。多少気に食わないと思っても、ぐっと抑えてやりすごすのが得策。バイクはクルマとケンカしても不利なだけと承知されたし。
我々は人生を豊かにするためにバイクに乗っている。ならば負のスパイラルに入ってはだめだ。攻撃的にあおり抑止を考える前に、まずはゆったり構えてみてはどうだろうか。