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「三ない運動」見直しへ!急先鋒の埼玉も届出制へ移行

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

「三ない運動」にも時代の変化

埼玉県が高校生のバイク利用を原則禁止とする「三ない運動」を見直し、いよいよこの4月から届出制へと移行することになった。

三ない運動とはバイクに関して「免許を取らない」「買わない」「乗らない」を推奨する社会運動であり、当時増加傾向にあった高校生によるバイク事故を防ぐ目的で1980年代に全国に広がった施策である。埼玉県でも山間部など一部地域では原付に限定したバイク通学を認めてきたが、今後は学校へ届出することで普通二輪免許の取得および通学以外でのバイク使用も可能になる。ただし、無条件・無制限に認めるものではなく交通教育の一環として必要な手続きを定めるとしている。

かねてから埼玉県では「高校生の自動二輪車等の交通安全に関する検討委員会」を設置して検討を進めてきたが、昨年2月に報告書を同教育委員会に提出。これを受けて従来からの「三ない運動」を見直し新たな指導要項の策定に取り組んできた。

今回の見直しの理由としては、高校生の二輪事故死傷者の大幅な減少や当時社会問題になっていた暴走族の減少などが挙げられる。また、現在でも「三ない運動」を推進している都道府県は半数以下に減少。こうした社会情勢の変化に合わせ、高校生に対する交通安全教育も見直す必要が出てきたということだ。埼玉県は全国の中でも特に“三ない”を強く推進してきただけに、他の自治体の今後の動向にも影響は大きいと思われる。

届出制で通学は原付に制限

では、見直しのための具体的な施策を見てみたい。

※以下、「BIKE LOVE FORUM」掲載記事より抜粋。

「三ない運動」を廃止して、具体的にはどのような二輪車指導を行うか。報告書をみると、「自動二輪車等の免許取得者に対する交通安全講習の実施など、安全確保対策に万全を期すこと」と記されている。その上で、新指導要項に盛り込むべき具体的な要件を3つ挙げている。

■1. 自動二輪車等の運転免許の取得に伴う届出等の手続きの導入

バイクの免許取得を希望する生徒に対し、交通社会の一員となる責任とリスクを自覚させるため、保護者との連名による「届出」を行わせる。交通法規の遵守、違法改造の禁止、任意保険への加入、安全運転講習の受講など、一定の制約事項を定めること、としている。

■2. 自動二輪車等による通学に関する制限

バイク通学に関しては、現行の指導要項と同様の規制方針を維持する。バイク通学を認める場合には、原付(50cc以下)に限ることが望ましいとした。

■3. 交通安全確保方策の実施

埼玉県教育委員会および各学校は、バイクの免許を取得した生徒を対象に、交通安全関係機関・団体と協力し、安全運転講習を実施することとしている。

リスク回避をどう学ばせるか

以上のことをまとめると、届出制によるバイク通学は許可するものの、現実的には原付に限られること。本人とともに保護者である親の責任が重くなり、学校側でもより積極的に安全運転教育が求められることなどが見えてくる。晴れてライダーの仲間入りをする当の本人としては、交通社会の一員としての厳格なルールやマナーを遵守する大人としての品行が求められるということだ。

これは決して軽いものではない。バイクという乗り物には少なからず危険が伴うものだ。迂闊に乗って大きな交通事故を起こしてしまえば、刑事・行政上の責任の他に損害賠償など民事上の重責を負うことになる。

バイクに乗るということは、社会のルールを学びリスク回避の社会勉強にも役立つという意見もある。そのとおりだと思うが、まずは“事故を避けるため”にも若者達には危険予知や防衛運転など安全マインドを徹底して学んでもらいたいと思う。それを大人たちは全力で手助けするべきだろう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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