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主役をはれるもうひとつのボニー 【トライアンフ新型ストリートツイン/スクランブラー試乗レポート】

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真出典:Webikeバイクニュース

2019年も月1台ペースで新型モデルを投入

先週、都内で開催されたトライアンフの新型「ストリートツイン」と「ストリートスクランブラー」の発表試乗会に行ってきました。会場は東京・青山にあるお洒落なスタジオ。2輪メディアの他、一般誌なども招かれゴージャスな雰囲気の中で新型モデルがアンベールされました。

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冒頭ではトライアンフモーターサイクルズジャパンの野田社長からの挨拶と近況報告がありましたが、世界におけるトライアンフの販売台数は昨年までのここ10年で160%の伸びを記録しているそうです。そして、さらなる攻勢をかけるトライアンフでは2019年も毎月1台のペースでニューモデルを投入していく計画がアナウンスされました。

そう言えば、今回の2台に加えつい最近も「スクランブラー1200」や「スピードツイン」などのブランニューモデルが発表されたばかり。トライアンフの本気度を感じます。

新型「ストリートツイン」

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▲新型「ストリートツイン」

クラッチも軽く乗り心地も向上

さて、短い時間ではありましたが、2台のニューモデルに実際に試乗することができました。

「ストリートツイン」はトライアンフのモダンクラシックラインの中核を成すボンネビルシリーズの中でも、最もモダンかつ最も売れているスタンダードモデルです。扱いやすいサイズ感とシンプルなデザイン、味わいのあるエンジンなどがビギナーからベテランまで幅広い層に指示されているようです。

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▲オプションパーツ装着車

見た目はあまり変わっていないようですが、よく見るとフロントブレーキにブレンボが付いて鍛造ホイールが新しくなり、ロゴデザインも今風になるなど全体的に質感が高まっています。

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跨ってみると足着きの良さは従来どおりですが、シートの厚みが増したせいか乗り心地が良くなっています。エンジンがリファインされて排気音もより迫力が増した感じで、改良されたクラッチを軽いタッチでつないでいくと、並列2気筒の小気味よい鼓動感とともにスムーズに発進していきます。

中速域の伸びやかな加速が気持ちいい

新型の最大のトピックは最高出力が従来から10psアップの65psに向上していることです。

走り出しではあまり感じなかったのですが、違いが分かるのが中速域での伸びやかな加速力。270度クランク独特の弾けるパルス感はそのままに、より回転もスムーズに吹け上がりがシャープになりました。

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試乗コースが青山・六本木界隈ということで、さすがに全開走行はできませんでしたが、「おっ、速いな!」と。また、ブレーキも初期が穏やかで握るほどに効いてくる、いわゆるブレンボタッチでコントロール性の良さを実感。それを受け止めるカートリッジ式フォークもしなやかなダンピング特性で、大幅にパワーアップした分、車体全体としてのバランスも整えられていると感じました。

新型「ストリートスクランブラー」

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▲新型「ストリートスクランブラー」

冒険心に火をつける専用装備の数々

続いて試乗した「ストリートスクランブラー」は見た目がまずタフで大柄。基本的にはストリートツインと同じエンジンと車体ですが、その名を象徴する右2本出しハイマフラーやフロント19インチのワイヤースポークホイール(ストリートツインは18インチ)、アドベンチャータイプのフットペグなど、オフロードでの走破性を高める専用装備を見ているだけで気分が高揚してくるのを感じます。

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特に新型ではワイドスパンのフォークが新たに採用されて、フロントまわりの迫力が一段と増しています。

足まわりも専用セッティングに

早速跨ってみましたが、ライポジは従来モデル同様、ストリートツインより大柄でハンドルはより高く幅広、ステップも前寄りにセットされるなどオフロード走行に適したセッティングになっています。

シート高も若干高めではありますが、スリムな車体と比較的ソフトな前後サスペンションにより初期の沈み込みで稼げるため、足着きも悪くはありません。前後サスともストローク量は120mmとスペック的にはストリートツインと同じなのですが、体感的にはよりクッション性が高められている感じも。おそらくオフロード走行を前提とした専用セッティングになっているものと思われます。

さらに積極的に「オフロード」を楽しめる

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▲オプションパーツ装着車

ピークパワーも従来比18%アップ、10ps上乗せされた65psを実現していますが、エンジンも同様に吸排気系に専用セッティングを施すことで、ストリートツインよりさらに元気よく弾けるサウンドが耳に心地よいです。

そして、印象的だったのが新たに採用された3種類のライディングモード(ストリートツインは2種類)。「ロード」「レイン」「オフロード」が選べるのですが、新型ではモードボタンが装備されて簡単に切り替えができるようになっています。「オフロード」モードにすると、自動的にABSとトラコンが解除されて不整地に適したグリップが得られるなど、新型はさらに積極的にオフロードを走れる仕様になったのが嬉しいですね。これは大きな進歩と言えるでしょう。

主役を食う脇役へと成長

トライアンフの伝統イメージを色濃く反映したボンネビルシリーズの中でも、2016年にデビューした「ストリートツイン」と「ストリートスクランブラー」はエントリーモデルの位置付けでしたが、今回新型に触れてみて思ったのは、もはやリーズナブルな初心者向けモデルではなく、大型バイクを乗り継いだベテランでも十分楽しめるパワーと装備を持った立派な看板モデルへと成長したこと。

T120やスラクストンなどトップエンドの大排気量モデルのステータス性は依然高みにあるが、それと並んでリアルな走りを手軽に楽しめるボニー(ボンネビルの愛称)として一段と存在感を増した気がします。主役を食う脇役とでも言うべきか。この2台にはそんな輝きが見えました。

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出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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