Yahoo!ニュース

【ハーレー新型「FXDR114」試乗レポート】力こそ正義のアメリカ的スポーツ

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真・動画/藤村のぞみ 動画編集/山家健一 協力/ハーレーダビッドソンジャパン

ハーレーダビッドソンの最新作、FXDR114の試乗インプレッションをWebikeバイクニュース編集長のケニー佐川がお届け。

先日開催されたメディア向け試乗会での第一印象はインプレ速報でお伝えしたとおりだが、今回は動画解説も加えつつ掘り下げてみたい。

動画:ハーレー新型「FXDR114」試乗レポート 力こそ正義のアメリカ的スポーツ

新型ソフテイルの最新スポーツクルーザー

画像

XDR114は昨年フルモデルチェンジを果たした新型ソフテイルシリーズとして10番目となる最新作だ。

ハーレーをよく知らない人のために少し解説しておくと、「ソフテイル」とはリヤショックを持たない古い時代のリジッドフレーム(ハードテール)のハーレーに似せたデザインながら、実は車体内側にリヤショックを備えた現代のモデル。乗り心地の良さを意味するソフト・テールがその語源になっている。

画像

それが2018年に同じく伝統の「ダイナ」シリーズと統合されて名称もソフテイルに統一。ハーレーの中核を担うミッドレンジのスポーツクルーザーとして今最も勢いのあるシリーズとなっている。

モダンでスポーティな車体設計

まず見た目が新しい。ハーレー=昔ながらの豪華なアメリカン・クルーザーではなく、ロー&ロングな伝統的フォルムは踏襲しつつも、ぐっとモダンなドラックレーサースタイルに仕上がっている。ミニマルなヘッドライトカウルやテールが切り詰められたシングルシートなど見た目にも軽快感がある。

画像
画像
画像
画像

FXDRは走りの良さが注目される新型ソフテイルの中でもとりわけスポーティな走りの性能が与えられている。

いざ乗ってみるとステップ位置が高めでマフラーもトライオーバル型でバンク角を稼げる設定になっているし、加えてフロントに倒立フォークとダブルディスクブレーキが装備された足回りなども含め、スポーティな車体構成になっていることが分かる。また、アルミや樹脂素材を多用することで、ソフテイルとしては最軽量レベルの車重303kgを実現。

一般的に見れば重量級だが巨漢揃いのハーレーの中では十分軽いのだ。

爆発的な加速と骨太な鼓動感

伝統の空冷Vツインの排気量は1886ccとクルマ並み。この巨大なVツインが吐き出す分厚いトルクと爆発的な加速力がFXDRの真骨頂。

そして、アスファルトを砕く削岩機のようなソリッドな鼓動感はハーレーならではだ。それでいて、新型ソフテイルシリーズにはデュアルバランサーが内蔵されているため振動は巧みに打ち消されている。高速道路でも6速巡行からアクセルを開けると、ズドンと弾けるようなサウンドとともに射出される感じが気持ちいい。

画像

エンジンはリジッドマウントなので鼓動感はくっきり鮮明に伝わってくるのだが、その割に振動が少なくロングライドでも疲れにくいというのもメリットだ。さすがはクルーザーひと筋にやってきたブランドである。

ちなみにFXDRに搭載されるミルウォーキーエイト・エンジンには107ci(1,745cc)と114ci(1,868cc)の異なる排気量が用意されているが、FXDR 114に採用されるのは上級グレード用の114だけ。そのことからもパフォーマンスに割り切ったモデルということができる。

アメリカ的筋肉マッチョスタイル

画像

また巨大なエンジンブロックはそれ自体が造形美を誇っていて、そこから突き出たエアクリーナーや240サイズの超ワイドリヤタイヤなどが見る者を圧倒するビジュアル的なパワーを持っている。

クルマで言えば、シボレーV8など古き良き時代のアメリカンマッスルカーを彷彿させる、「力こそ正義」的なマッチョなスタイルがまた魅力なのだ。

コーナリングは重厚にして豪快

ハンドリングは軽快というよりは重厚。ハーレー最大級の1700mmを超すロングホイールベースと車重による安定感もさるものながら、コーナーへ向けての倒し込みでは18インチの大径超ワイド扁平リヤタイヤがゴロっと転がるように路面をトレースしていく独特の感覚を味わえる。

画像

見た目からすると「直線番長」的な感じもするが、車体を寝かし込めばちゃんと曲がっていくし、巨大マシンを操っている優越感とともに豪快なコーナリングを楽しめる。

ライポジはカスタムしたいかも

ステップが前寄りに設定された、いわゆるフォワードコントロールなのにハンドルはセパハンという一見ちぐはぐな組み合わせにより、両手両足を前に突き出したような独特のライポジになるのだが、慣れてくればステップワークと逆操舵を使って思いどおりに操れる素直さもある。

画像

とはいえライポジはやはり欧米人向けに大柄に作られているのも事実。もう少しシート位置を前寄りにしてハンドルグリップを後ろ側に引いてくれると日本人には馴染みやすいかと思う。純正カスタムパーツも豊富に出ているようなので自分流にアレンジしたい部分だ。

アメリカ的スポーツマインドが楽しい

画像

まあ、こうしたアクの強さも個性として受け入れられる度量がなければハーレー乗りにはなれないかも。「デカいことは良いこと」「力こそ正義」といったアメリカ的マインドを分かりやすい形でスポーツモデルとして体現したのがFXDRだ。

最近の軽くて扱いやすい巷のスポーツモデルにはない、苛烈なパワーと重厚な乗り味。そのスパイシーさが大人の趣味の乗り物としては最高に楽しい部分でもあるのだ。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

佐川健太郎の最近の記事