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一日泥だらけになって上達できる!トライアンフADVトレーニングを初体験

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真:Triumph Motorcycles / 佐川健太郎

先日、英国にあるトライアンフ本社直営のアドベンチャー・トレーニング施設を体験取材してきました。ウェールズ地方の中心都市、スウォンジー郊外に今春オープンしたばかりの「TRIUMPH ADVENTURE EXPERIENCE(トライアンフ・アドベンチャー・エクスペリエンス)」は、アドベンチャー(ADV)モデルをオフロードで安全に乗りこなすためのスキルアップを目的とした施設です。対象は一般ライダー向けで、もちろんトライアンフユーザーでなくても参加できます。今回は日本から参加したディーラーの皆さんと一緒でした。

▲今年オープンしたばかりの施設で建物もまだ新しい
▲今年オープンしたばかりの施設で建物もまだ新しい

マシンと装具はすべてレンタル可能

まず驚いたのは充実した設備の数々。トレーニング車両はすべてレンタルで、ざっと見て50台近くが用意されていました。車種はタイガー800XCと1200XC、そしてストリートスクランブラーも。タイヤもオフロード走行を前提としたガチなブロックタイヤに履き替えられています。さらにヘルメットからウエア上下、グローブにブーツ、ボディプロテクターまでライディングに必要な全ての用品をレンタル可能。まさに身ひとつで参加できるという気軽さです。

▲タイガー800、1200シリーズを中心に車両はすべてレンタル可能
▲タイガー800、1200シリーズを中心に車両はすべてレンタル可能

最初に教室でコース説明やカリキュラム内容、マシン操作に関する簡単なレクチャーを受けて早速ロッカールームで着替えたら、好きなモデルに乗っていざ出発。自分はタイガー800XCにしてみました。インストラクターの説明によると、足着きが心配な人やオフロード初心者にはスクランブラーがおすすめとのことでした。

▲人もマシンも泥だらけ、だが楽しい。ストリートスクランブラーもブロックタイヤを履けば立派なオフローダーに
▲人もマシンも泥だらけ、だが楽しい。ストリートスクランブラーもブロックタイヤを履けば立派なオフローダーに

インストラクターは現在8名いるそうですが、経歴を聞くと皆さんダカールラリーをはじめとする国際ラリーのファイナリストレベルだとか。中には女性イントラもいらして、やはり本場はレベルが違うなぁと。

▲インストラクターはADVライディングのエキスパート揃い。左端は筆者
▲インストラクターはADVライディングのエキスパート揃い。左端は筆者

レベルに応じてムリなく上達できる

トレーニングコースは元々採石場だった場所を利用して作られたのだとか。フラットダートや岩がゴロゴロしたロックセクションやヒルクライム、森林の中を抜けていくウッズなど様々なセクションが設定されていますが、広すぎて全体像を把握することはできませんでした。雨が降って地面がぬかるんでいたこともありますが、そもそも高難度のセクションには辿り着くのは難しかったと思います。

▲採石場跡を利用した専用コースでレベルによって難易度が変わる。広大なトレーニング施設で思い切りADVライディングを満喫
▲採石場跡を利用した専用コースでレベルによって難易度が変わる。広大なトレーニング施設で思い切りADVライディングを満喫

さて、実際のトレーニングですが我々は入門コースを体験させていただきました。ちなみにその上にはレベル1、2、3のコースが用意されていて段階を追って難易度もアップしていく仕組み。また、リターンライダー向けのコースもあるようでした。

入門コースではライディングフォームの確認から始まり、オフロードでの乗降車のコツ、パイロンを使ったターンやスラローム、ブレーキングなどを学びました。方法としてはレクチャーに続いてイントラがデモ走行を行い、続いて参加者が同じように実践するので分かりやすく、英会話に自信がなくてもだいたいは理解できると思いました。

▲オフロードでのライディングフォームや乗降車の方法など基本から教えてくれる
▲オフロードでのライディングフォームや乗降車の方法など基本から教えてくれる

電子デバイスを駆使したテクニックに刮目

目からウロコだったのがブレーキング。トライアンフの最新モデルにはライディングモードが装備されていて当然オフロードモードに切り替えて行うのですが、タイガーの場合フロントはオフロードABSが作動するので「思いっきりかけろ!」と言われるわけです。

▲オフロードモードを駆使したブレーキング練習。ひとりひとりに的確なアドバイスをしてくれる
▲オフロードモードを駆使したブレーキング練習。ひとりひとりに的確なアドバイスをしてくれる

最初は精神的なリミッターが効いてしまいなかなか思い切れなかったのですが、イントラを信じてレバーを鬼握りしてみると、ドロドロ路面にもかかわらず最短距離で止まるではないですか。車体さえ真っすぐに立てておけば大丈夫で、逆に「リヤブレーキは滑るだけなので使わずともよし」だそうです。テクノロジーの進化によってライテクもまた変化することを、身を持って体験できたのでした。

林道コースでADVライディングを満喫

最後は森林地帯を抜けていく広大な林道コースでの実践トレーニング。実際に学んだテクニックを駆使してオフロードを走破していきます。

▲30分以上は連続走行したと思う林道コース。羨ましい環境だ
▲30分以上は連続走行したと思う林道コース。羨ましい環境だ
▲林道コースの途中にある休憩スペースでひと休み
▲林道コースの途中にある休憩スペースでひと休み

途中には雨でぬかるんだ深いワダチやスイカほどの岩が埋まったガレ場などもあり、「これで入門コースなんですか!?」と思わず叫びたくなるシーンも度々ありましたが、なんとか無事全員で生還できました。

 ▲移動中には渡河にもチャレンジしたり、まさにリアルアドベンチャーワールドだ
▲移動中には渡河にもチャレンジしたり、まさにリアルアドベンチャーワールドだ
▲日本から参加したディーラーの皆さん。全員無事完走して喜びが弾けた
▲日本から参加したディーラーの皆さん。全員無事完走して喜びが弾けた

これも経験豊富なイントラの的確なアドバイスとコースディレクションがあってこそ。地味な基礎トレーニングを最初にやってくれたおかげだと思いました。半日という短い時間でしたが、大自然の中でマシンも人もドロドロになりながら存分にアドベンチャー・ライディングを満喫、しかもスキルを磨けるという素晴らしい体験でした。

世界的なブームになっているアドベンチャーモデルですが、その大きなサイズと強力なパワー、最新の電子制御を使いこなして実際にオフロードを走ることは、普通に考えても一般ライダーにとって敷居の高いものです。こうしたトレーニングを通じてより多くのライダーの知見とスキルが向上し、安全に本格的なオフロード走行を楽しめるようになることで、さらにアドベンチャーモデルの価値と魅力が高まると実感できました。

詳細情報は本国ホームーページに掲載されていますので興味がある方はぜひ覗いてみてください。また、日本でもトライアンフモーターサイクルジャパン主催の第1回「Triumph Adventure Experience in Fuji」が11月25日(日)に開催される予定なので要チェック。

TRIUMPH ADVENTURE EXPERIENCE

Triumph Adventure Experience in Fuji

参考:OfficialTriumph | Triumph Adventure Experience

※原文より筆者自身が一部加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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