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ライダーを悩ませる「足着き性」 その解決方法とは!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真出典:Webikeバイクニュース(写真はイメージです)

バイクを選ぶとき、真っ先に気になるのが足着き性という人も多いのでは。2輪専門誌やウェブの試乗記事、個人のブログなどネット空間でも足着き性に関する情報はよく目にします。

実際のところ、「乗りたいバイクがあるけれど足が着くか不安」というのは切実な悩みだと思います。見た目もカッコよくて走り出してしまえば扱いやすいのに、足着きの問題だけで乗りたいバイクを諦めてしまうのは勿体ないですよね。

ということで、足着きのノウハウについて考えたいと思います。

停止時が危うい

自分は身長179cmと比較的大柄なほうなので、普段いろいろなバイクに試乗するときもそれほど足着き性は気にならないのですが、それでもオフロード系やアドベンチャーモデルに乗るときは少し緊張します。

走り出すときは意識しているのでまだいいのですが、危ういのは停止するとき。赤信号で止まろうとして足を着こうとしたら地面がなかった!というやつです。停止線の近くは4輪がブレーキをかけるのでワダチが深くなりがちです。車線のセンターにいると、ちょうどワダチに足を着くことになり、おっとと、となるわけです。

30cm先に足を着く

これを避けるためには、路面状況などを見極めつつ、どこに足を着くかを考えながら停止するのがコツ。自分は車高の高いアドベンチャー系などに乗るときは、意図的にワダチに車輪を落として盛り上がったセンター部分に足を着くか、歩道の縁石などに左足を着くようにしています。

足が後方に流れると不安定になるので、停止する直前に30cmぐらい先に足を出すとちょうど真下に着地して具合がいいです。停止時にニュートラルに入れるのが面倒な場合は、ローギヤのままクラッチを握っていることも多いです。

また、右足を着いて左足はステップに乗せたままの場合もあります。この辺の判断は路面や交通を見ながら臨機応変ですね。それと路肩付近は砂利が浮いていることも多いので避けましょう。

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腰をずらして骨盤を傾ける

また、実践している人も多いと思いますが、予め足を着こうとする側に腰をずらして足のリーチを稼ぐようにしています。ただずらすだけでなく、骨盤を左右に傾けて腰を落とす感じにするとさらに足が伸びます。これだけでもだいぶ楽になりますね。

また、ちょっとマニアックな方法ですが、足を着こうとする反対側に一瞬少しだけハンドルを切ると「逆操舵」の効果により車体が傾いて足を着きやすくなります。慣れてくると無意識にやっているものですが、バイクの特性を知るために試してみても損はないと思います。

サスセッティングでも変わる

サスセッティングでも足着き性はだいぶ変わります。一番効くのがリヤサスのプリロード(バネにかける初期荷重)。試してみればすぐ分かりますが、プリロードアジャスターを最弱にするだけでリヤサスの沈み込み量が増えて2cmぐらいは車高が下がります。同時に乗り心地もソフトになってバイクが扱いやすく感じるはずなので是非試してみてください。

調整には工具が必要な場合もあるので、分からない人はベテランライダーに聞くか、ショップで相談してみるといいでしょう。

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レインウエアは要注意

用品で補う方法もあります。まずは履物。ライディング専用のブーツやシューズは踵がやや高く作られていて足首のホールドもしっかりしているので、スニーカーなどに比べて足を着いたときに安定感があります。ここで1cm確保。

履いているズボンによっても足着きは変わるので要注意。股の部分にケブラーニットなどの切り換えが入っているライディング用パンツは可動域が広がりますが、逆にレインウエアなどは素材的に伸びないので、突っ張って足が出なかったり、冬用のオーバーパンツなどもしっかり引っ張り上げて履かないと股が開かず、あわわ、となったりします。

ローシートやローダウン化もあり

次にシート。昔からアンコ抜きといってシートの中身のスポンジを削る方法もありますが、下手にやるとシートが角張ってしまい、逆に足着きが悪くなることがあるので要注意です。最近はメーカー純正のローシート仕様を設定している場合も増えてきたので活用しない手はないでしょう。ここで2~4cm確保。

そして、奥の手はローダウンキット。車高そのものを下げるためのキットがモデルごとにアフターメーカーから出ています。これもリヤサスの長さやリンクから変更してしまうものなどいろいろなタイプがあり効果は絶大です。さらに数cm確保。

ただ、極端にバイクの姿勢を変えてしまうとハンドリングに悪影響が出る場合もあります。車両メーカーが膨大な時間とお金をかけて開発したバイクはある意味「最適化」されているので、それをいじることは良い面と悪い面があることは覚悟しておくべきです。

シート高だけでは分からない

足着き性はスペック表にあるシート高だけでは分からないものです。シート形状や車体のスリムさ、ハンドルやステップ位置などのライポジ、サスペンションのストローク量などによってもだいぶ変わってくるからです。

ということで、足着きを正確に知るためには実際にそのバイクに跨ってみて、できれば試乗してみることです。見た目は大きくて手強そうだけど、実際に乗ってみたらすごく扱いやすくて足着きなど気にならなくなっていた、ということもよくあります。

そういう出会いがあればこそ、テクニックを磨いて乗りこなしてやろうという情熱も沸いてくるかも。無理はよくないですが、ぜひ創意工夫しながら“足着き”を楽しんでみてください。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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