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ヤマハ「SR」新型 変わらない姿で期待に応える

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA SR400 ※画像出典:Webikeバイクニュース

SRらしさはそのままに新排ガス規制に対応

ヤマハ希代の名車、SR400の新型が11月22日より発売される。

多くのファンが嘆いた2017年の生産終了から1年、時を待たずの再販だけでも嬉しい上に、従来のSRの個性と持ち味はそのまま継承されての復活という、まさにヤマハから我々ユーザーへのとっておきのプレゼントと言ってもいいだろう。

新型における最大のポイントは、SR他の多くのモデルを生産終了へと向かわせた「二輪車平成28年排出ガス規制」に適合させたこと。また、発売40周年を記念した「SR400 40th Anniversary Edition」も数量限定500台で同日発売されるのもトピックだ。

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▲SR400(カラー:ヤマハブラック)

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▲SR400 40th Anniversary Edition

環境性能とともにサウンドもより魅力的に

新型SRの主な改良点は以下の3つである。

1)優れた環境性能と燃費性を実現するO2フィードバック制御の精度向上

2)蒸発ガソリンの外気への排出を低減するキャニスターの採用

3)音響解析技術を駆使し、低音と歯切れの良さを向上させた新マフラー

など。

つまり、新型では環境性能を高めつつ、サウンドをより魅力的にしたということだ。

最小限の変更でプライスもほぼ据え置き

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また、1978年に登場して以来のSRのアイデンティティだった、空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブというエンジンの基本レイアウトやキックスターター、デコンプレバーなどの装備は従来モデルから継続されているということで、「SRのままでいてほしい」と願った多くのファンの期待に見事に応えた形となった。

細かい部分ではシートを新作とし、前後フラッシャーランプの薄型化、低荷重設計のクラッチレバーなどが採用された他、FIセッティングの最適化やECUも新タイプが投入されている。

なお、最高出力は2ps減の24ps/6,500rpmで、車重は逆に1kg増の175kgに。価格は2万円アップの57万2,400円(SR400 40th Anniversary Editionは69万1,200円)となっている。新型SRのデビューに向けては生産終了前から入念な準備をしてきたということだが、本体価格で53万円というプライスタグは、そこに投入されている匠の技を鑑みても非常に価値あるものと思える。

匠による楽器作りのノウハウを投入

そこで是非チェックしてもらいたいのが、「YAMAHA SR400 2018 ~ヤマハ魂の伝承~」という一遍のプロモーション動画だ。そこには、新生SRの開発に携わった人々の生の言葉が収められている。

SRは初代以来からのコンセプトである日常の速度域での楽しさ、官能的な部分での作り込みを重視し、「ヤマハの魂の伝承」を合言葉として開発を進めてきたこと。SRらしい音色の開発にこだわり、音量と低音、特に歯切れの部分で単気筒らしさを表現するために、ヤマハが長年培ってきた音響解析の技術を駆使することで、感性に訴えるサウンドを作り込んだこと。

そしてアニバーサリーモデルに関しては、これまでもSRに採用されてきたサンバーストの技法を極めることで、元々そのルーツであるギターとのつながりを再表現したエピソードなどが語られている。

元々は楽器メーカーとして創業したバックグラウンドを持ち、今もその強みを生かした二輪製品を作り続けているヤマハならではの発想と、SRに込める思いを知ることができる秀作に仕上がっている。

YAMAHA SR400 2018 ~ヤマハ魂の伝承~

“変らないこと”へのこだわり

国内外のメーカーを見回してみても、ひとつのモデルを40年間も変えずに作り続けてきた例は非常に稀である。同じモデル名であってもエンジンの排気量が増えたり、空冷が水冷になったり、デザインが大幅に変わってしまう例がほとんどだろう。

その中で、連綿と“変わらないこと”にこだわってきたSRは日本のモーターサイクル史上に残る名機と言っていい。それはメーカーの努力と情熱はもちろんのこと、SRを愛する多くのユーザーの強い想いに支えられてきたからに違いない。

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▲SR400(2017)

永遠のスタンダードとして

ここまで書いてきて、いま無性にSRに乗りたくなってきた。これまでのバイク人生において自分で所有したことはないのだが、その時代々々で何度か乗る機会はあった。そのときいつも感じたのはSRに宿る“繊細さ”だった。慎ましくも上品な、ある意味で女性的とも言える華奢なスタイルもさることながら、デコンプの使い方やエンジンをキックするタイミング、アクセルの開け方ひとつで従順になったり気難しくなったり。空気が乾燥した晴れた日は良く走るし、軽妙で歯切れのいい単コロの音がよく響いて聞こえたものだった。

特にキャブレターの時代はその繊細さ故の手間のかかり方が愛おしく、まさに人と対話できる血の通った機械のようで、そこがまたマニアックなエンスーを惹きつけて止まなかったと思う。時代は変わってFI化されECUも賢くなり、各部の熟成も進んで扱いやすくなるなど、SRも良い齢のとり方をしたと思うが、その魂はいつまでも不変のものであってほしい。SRこそは日本車における永遠のスタンダードなのだから。

なお、SRの歴史や新型投入にいたる背景についてより詳しく知りたい方は、以前に書いた下記コラムも参照していただけたら幸いだ。

【ケニー佐川コラム】

'''◆SRであることにこだわり続けた40年 SR400生産終了、気になる次期モデルは!?'''

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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