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3輪大型スポーツモデル「NIKEN」発売 ”転ばないバイク”が目指す新たな地平とは

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA NIKEN (画像出典:Webikeニュース)

ヤマハ初の大型LMWとして登場

ヤマハから3輪で走る新たなスポーツモビリティ「NIKEN」(ナイケン)がついに発売される(2018年9月13日 予約開始)。

既に市販化されている3輪スクーターの「トリシティ」シリーズ同様、リーン(傾斜)して曲がるのが特徴の大型LMW(リーニング・マルチ・ホイール)である。

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エンジンはMT-09に搭載される水冷直列3気筒845ccをベースに専用チューンを施し、最高出力116psを発揮。トリシティシリーズで培ったLMWテクノロジーをさらに進化させた”新ステアリング機構”を採用することで、持ち前の安定感に加えスポーティで滑らかな旋回性や自然な操舵性を実現。また、最新の制御技術などにより長距離ツーリングでもリラックスして快適に走れるモデルに仕上がっているという。

独自の2軸ステアリング機構を採用

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一番の特徴はやはり独特のステアリング機構だろう。フロントフォークは片側に前後2本の倒立フォークを備えた片持ちタイプで、今回新たに2軸ステアリング機構「LMWアッカーマン・ジオメトリ」を採用することで、コーナリング時に発生する内外輪差を最適化しつつ45度のバンク角と自然なハンドリングを実現している。前後重量配分も約50:50と理想的なものとなった。

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また、電子制御も充実。過度なエンジンブレーキを緩和するアシスト&スリッパークラッチや、後輪の滑りを制御するトラクションコントロール、ABSなどの安全装備の他、クイックシフターや3種類のエンジンモード、クルーズコントロールなど上質で快適な走りをサポートする各種デバイスを装備している。

LMWのメリットをさらに強化

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ヤマハによると、LMWでは実験によって5つのメリットが実証されているという。それは「強いブレーキでも安定して止まれる」「段差乗り越え時にふらつきにくい」「安定したコーナリング」「前輪スリップによる転倒リスクの低減」「強い横風でも安定している」などである。

そして今回、NIKENでは新たに2つのメリットとして「旋回進入時に車両がふらつきにくく狙ったラインをトレースできる」「コーナリング中のやむを得ない制動でも車体が起き上がりにくく挙動がコントロールしやすい」が実証されたのだとか。もちろん、一方では複雑な機構故の重量増や製造コストの上昇などのデメリットもあって当然だ。

目指しているのは「新しい価値の創造」

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ヤマハが取り組むLMWのスローガンは「めざせ、ころばないバイク」。もちろん、これはヤマハが掲げる理想の高さを伝える言葉であり、LMWが絶対に転ばないという意味ではない。乗り手のスキルを最新技術がサポートすることで、2輪モーターサイクルのような自由な気軽さと、転びにくさの両立を目指したモビリティということだ。

そして今回、NIKENが挑んだのはそこに「スポーツマインド」を加えること。従来の2輪においては経験を積んだベテランでないと難しい高度なコーナリングシーンでも、LWMはその仕組みによってライダーを支えることで、より安全に多くの人々が2輪のような楽しさや爽快感を体験できるという。

つまり、これまではモーターサイクルだけの特権だった「傾けて曲がる」感動を、幅広い層に広げていける可能性があるということだ。そして最初の入口は3輪でも、いずれ2輪にも興味を持つ人が増えていけば、ひいては”傾ける族”全体の活性化にもつながるかもしれない。

ついつい我々は「2輪や4輪に比べて云々…」という近視眼的な物の見方にとらわれやすいが、それでは本質を見誤ることも。「新しい価値の創造」こそがNIKENの真の狙いなのである。

【参考】NIKEN走行動画(LMWテクノロジー実証)

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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