Yahoo!ニュース

2018シーズン注目のニューモデルを斬る!その(7)史上最強の3気筒「スピードトリプルRS」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
TRIUMPH SPEED TRIPLE RS

2018オンシーズンということで各メーカーから新型モデルが目白押しだが、その中で個人的に注目しているモデルについて紹介していきたいと思う。今回はトライアンフ史上最強の称号が与えられた「スピードトリプルRS」である。

今でこそメジャーになった“ストリートファイター” というジャンルをメーカーメイドとして確立したのが、1994年にデビューしたスピードトリプルである。その最新版となる「スピードトリプルRS」は、シリーズ7代目にして初の「RS」の称号が与えられた最上級モデルだ。

画像

▲The original hooligan 1994

シリーズ最強150psを得て電制も進化

2016年にリニューアルした従来モデルがベースで、精悍な2灯ヘッドライトや2本出しアップマフラーなどを含むストリートファイター風フォルムは踏襲しつつも、全面改良が加えられている。

画像

▲Speed Triple S & R 2016

画像

▲Speed Triple RS

伝統の水冷並列3気筒DOHC4バルブ1050ccエンジンは、全体に計105ヶ所に新型パーツを投入することで最高出力も10psアップの150psを実現し、最大トルクも4%向上。

足まわりも「RS」独自の装備として、前後サスペンションにオーリンズ製φ43mm NIX30倒立フォークとTTX36リンク式モノシッョクを装備。ブレンボ製ラジアルモノブロックキャリパーも制動力を強化するとともに、ホイールも10本スポークタイプに刷新されている。

画像

電子制御も最新式となり、旋回中でもブレーキをかけられるコーナリングABSや、進化型IMUによる高精度なトラコンの採用などにより、スポーツライディングでの安心感もさらに高められた。

また、コックピットも大画面TFTディスプレイが新採用され、5種類のライディングモードを含む各種電子デバイスの操作も左手元のジョイスティックで直感的に行えるようになっている。

画像
画像

標準装備のクイックシフターやクルーズコントロール、USB電源などのユーティリティも充実。その他、オプション装備としてダウンシフターやグリップヒーターも装備されるなど、スポーツ走行からツーリングまで幅広いシチュエーションで楽しめる、安全で快適なハイテクロードスターに仕上げられている。

分厚いトルクが弾けるバルキーな乗り味

今春、スペイン・アルメリアサーキットで開催された国際試乗会に参加したとき、ある英国人ジャーナリストはスピードトリプルRSを「バルキー」と表現していた。バルキーとは「量感があって分厚い」、あるいは「筋肉ムキムキの」というような意味らしい。まさにその通りだと思った。バルクアップされたのは外観だけでなく、乗り味そのものでもある。

画像

▲最新型のスピードトリプルRSに試乗する筆者

トライアンフの3気筒は昔から分厚い中速トルクが持ち味だった。試乗会ではシャーシダイナモで計測したトルクカーブを見せてもらったが、まるで絵に描いたように綺麗な“台形”を描いていた。全域で弾けるスーパーフラットトルク。それがトリプルの真骨頂だ。

トム・クルーズが乗り一躍有名に

時代を遡ると、90年代に登場した丸目1灯の初代スピードトリプルはまだカフェレーサー的な雰囲気で、エンジンや外観デザイン的にも発展途上のモデルという感じがしたが、丸目2灯を採用した現行モデルにつながる2代目では、スーパースポーツT595デイトナがベースとなりフレーム構造も一新。一気にバルキーな乗り味になった。

画像

▲T309 Speed Triple 94-97 v2

画像

▲T509 Speed Triple 97-98

画像

▲955i Speed Triple 99-05

映画「ミッション:インポッシブル2」でトム・クルーズが乗り一躍有名になったアレだ。自分も箱根のワインディングで初試乗したのを覚えているが、アクセルひとつでポンポンとフロントが浮き上がってくる力量感に酔いしれた記憶がある。

3気筒の魅力を最も鮮明に味わえる

そこから世代を重ねて熟成されたスピードトリプルは、粗削りなファイターから強さを秘めた大人の紳士へと成長した。最新型にして最強のRSはそれを体現したモデルだ。黎明期に比べたら遥かにパワフルになってはいるが、電子制御の恩恵によってそのメリットを安心して引き出せる。時代は変わったと思う。

シャープで俊敏な吹け上がりのデイトナ675系と、その発展型であり2019年からMoto2に供給される新型ストリートトリプル765系エンジンに対し、スピードトリプル1050系は同じ3気筒ではあるがだいぶフィーリングは異なる。

画像

▲Speed Triple 1050 05-10

画像

▲Speed Triple 1050・R (Mk2) 11-16

回転数をムリして上げなくても、細かくシフトチェンジしなくても、図太いトルクでぐんぐん加速していく。愁いを含んだハスキーヴォイスもトライアンフ3気筒ならではだ。金切り声を上げながらヒステリックに加速していく4気筒との違いを、より鮮明に体感できるのもたぶん1050系だと思う。

長年にわたって進化熟成を重ねてきた「キング・オブ・トリプル」の奥深さに触れ、「3気筒と言えばトライアンフ」とまで言われる所以を知りたいのであれば、スピードトリプルをお奨めしたい。その意味でも、やはり注目したいモデルなのだ。

画像

▲Speed Triple RS

※編集部注:記事内の車両画像は海外仕様のものが含まれている場合があります。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

佐川健太郎の最近の記事