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2018注目のニューモデルを斬る!その4 カワサキ最速マシンの正統的後継者「Ninja H2 SX」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
KAWASAKI Ninja H2 SX SE

「最速」に扱いやすさと快適性をプラス

究極のロードスポーツ「Ninja H2」をベースに、日常域での扱いやすさとツーリング性能を高めたスポーツツアラーとして新設計されたのが、「Ninja H2 SX」である。

エンジンは動弁系や吸排気系の改良の他、圧縮比を高めて過給圧を最適化したバランス型スーパーチャージャーを採用することで、パワーと燃費性能を両立。特に低中速域での出力特性が見直されているのが特徴だ。

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▲Ninja H2 SX

H2譲りのトレリスフレームもタンデムやパニアケース装着に対応した新設計タイプに変更され、ライポジや外装デザインも一新。足まわりも前後サスペンションは全調整式かつ、リヤ側には簡単にプリロード調整が可能なリモート式アジャスターを装備し、タイヤもリヤ側をH2よりワンサイズダウンの190/55として軽快なハンドリングを得ている。

また、スイングアーム長とともにホイールベースも25mm延長することで高速安定性を確保するなど、開発コンセプトに合わせて全面的な改良が加えられている。

電子制御も全部盛り

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▲Ninja H2 SX SE

電子制御の進化も見逃せないポイント。3モードから出力特性を選択できるパワーモードや、3段階にトラクションコントロールの効きを変更できるKTRCの他、ブレーキング中にピッチング動作および旋回中のブレーキ制御を行うKIBSを装備。また、クルーズコントロールを採用することで快適なツーリングを実現。

さらに上級版の「SE」にはフルカラーTFT液晶メーターやLEDコーナリングライト、ステンレスメッシュのブレーキホースや切削加工の鍛造ホイールを採用。シフトアップ&ダウンに有効なクイックシフターや、全開発進が可能なローンチコントロール、大型ウインドスクリーンやプレミアムシートを装備するなど、カワサキを代表するフラッグシップモデルに相応しい高級感と快適性を実現している。

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予想を上回るバランス型の完成度

先日、H2 SX SEに試乗する機会を得たが、特に印象的だったのがバランス型スーパーチャージドエンジンの完成度の高さ。出力特性がH2に比べてより穏やかになり、スーパーチャージャーが作動していることを感じさせないスムーズさが際立っている。

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以前H2に試乗したときは、炸裂するフルブースト時の加速感と引き換えに若干のタイムラグを感じる場面もがあったが、H2 SX SEは右手とエンジンが直結されたような至極自然なフィーリングなのだ。

ディメンションの最適化により、乗り味もどっしりとした超高速ツアラーらしい安定感が増し、フルカウルと大型スクリーンが装備されたことで、アップライトな姿勢のまま快適な超高速クルーズが可能になった。

カワサキ伝統の最速マシンへ

つまり、「Ninja H2 SX」は“世界最速マシン”の称号はそのままに、日常域から長距離ツーリングまでカバーする懐の広さを持った、オールラウンドな超高速ツアラーへと進化したのだ。

H2がソロライド専用で、基本的に荷物の積載を考えていない割り切ったモデルであることを考えると、むしろカワサキ最速マシンの正統的な後継者はH2 SXのほうかもしれない。それは初代Z1以来、GPZ900RからZZR1100を経てZX14Rへと、連綿と受け継いできたDNAでもある。そう考えると、このモデルへの尋常ではない力の注ぎ様が納得できるのである。

※編集部注:記事内の車両画像は海外仕様のものが含まれています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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