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入梅近し。雨天時の走り方(2)ウェット路面を安全に走るためには!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
(ペイレスイメージズ/アフロ)

今週末からいよいよ本格的な梅雨に突入しそうだ。我々ライダーにとって雨は大敵。全身ズブ濡れで視界は悪いし、路面も滑りやすいなど辛いことばかりだ。

でも、嫌々バイクに乗っていても楽しくないし、そういうネガティブな気分がリスクを呼び寄せることも多い。そこで、前回に続いて雨天走行のポイントについて考えてみたいと思う。

まずは速度を控えること

前回は雨天を少しでも快適に過ごすためのウエアリングについて書いたが、今回はズバリ安全確実に走るためのスキルについてだ。といっても何もスーパーテクニックなどではない。大事なのはまずメンタルだ。集中力を失わず、当たり前のことを平常心で粛々とこなすことが最も重要なポイントだ。

その上で、「先読み」がますます大切になる。何故なら、雨の日はクルマもバイクもなかなか止まれないからだ。雨の日は視界が悪く、危険に対する認知・判断が遅れがちなことに加え、誰でも知っているようにウェット路面ではドライ路面より停止距離が伸びる。特に摩耗したタイヤだと2倍程度まで停止距離が伸びることもあるらしい。

特に2輪は雨の日に弱い乗り物で、ブレーキがロックしたら転倒リスクが一気に高まってしまう。そうならないためのポイントは速度を控えること。それに尽きる。

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「急」のつく操作をしない

それだけでは話が終わってしまうので、もう少し具体的な操作について。自分がいつも心掛けているのは「急」のつく操作をしないこと。つまり、「急加速」「急ブレーキ」「急な倒し込み」などだ。

グリップの悪い濡れた路面で急加速すれば、当然リヤタイヤが滑りやすくなる。特にパワーのある大排気量マシンなどはなおさらだ。自分の知人にも、信号待ちから発進しようとアクセルを開けた途端、工事用の鉄板で滑って転んで足の骨を折る大ケガをした人がいる。

急ブレーキは前輪や後輪がロックする可能性が高くなりさらに危険。「後輪ロックぐらい大丈夫だよ」と舐めているライダーもいるが、摩擦係数が低い路面ではそれだけバランスを崩すのも急なので、ドライで慣れていてもウェットで痛い目にあうことが多い。そして前輪ロックしてしまった場合は、ほぼ転倒が待っているだろう。

コーナーなどで急に倒し込むのはドライ路面でも危険だが、ウェットではなおさら滑りやすくなるし、交差点などではライン上にマンホールや白線のペイントなど滑りやすい路面が現れることも多い。さらに悪いことに、ウェット路面で転倒すると車両も人も滑走するので反対車線に出てしまい二次災害へ、とさらにリスクが高まっていく。

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巧い人ほど「じんわり」やる

脅かすつもりはないが、そうならないためにも雨の日は特に「じんわり」と「丁寧」な操作を心掛けるべきだ。参考までにサーキット走行などでも、ウェット路面ではすべての操作をじんわりとやるのがポイントだったりする。

ウェット路面でも丁寧にブレーキをかけてフロントタイヤを路面に押し付けてやれば、かなり奥までブレーキレバーを握っていけるし、コーナーでも車体をじんわりと倒し込むことで徐々にタイヤに荷重をかけていけば、けっこうなバンク角まで寝かせることもできたりする。逆に言うと、タイヤのグリップを失わせるのは「急」な操作なのだ。

考えてみれば、これはドライ路面でも言えること。つまり、スムーズで丁寧な操作が、安全で上手い走りの基本というわけだ。

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電子デバイスを活用する

こうした危険をテクノロジーの力で解決しようと開発されたのがABSやトラクションコントロールなどの電子デバイスだ。4輪に遅れること云十年、2輪の世界にもようやくこうした文明の利器が入り始めてきた。

ABSやトラコンは危険な状況において、人間ができないような早さと正確さでライダーをサポートしてくれる有難いシステムだ。こうした電子デバイスは大いに活用すべきだが、ただ、それでも物理的な限界はあるので油断は禁物である。あくまでも基本は守りつつ、万が一の時の保険と思っていて丁度いい。

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空気圧は下げずサスは固めず

参考までにタイヤの空気圧だが、ウェット路面では下げないほうがいい。ドライ路面のように荷重をかけられないし、接地面は広がっても面圧が低くなり逆に滑りやすくなるからだ。標準空気圧でしっかり面圧を上げながら、タイヤの溝を広げて排水性を高めたほうがメリットは大きい。

また、サスペンションも固めずに、特にダンパーは弱めてサスを動かしたほうが路面追従性は高まり、結果的にタイヤのグリップも安定する。これは最近のアドベンチャーモデルなどに搭載されているライディングモードを見れば明らかで、スポーツ、レイン、オフロードなどの各モードによって最適化される電子制御サスペンションのセッティング方向性を見れば理解できる。

つまり簡単に言えば、公道では雨の日だからといってタイヤやサスペンションのセッティングを変える必要はない、ということ。メーカー指定空気圧と標準セッティングでオーケーだ。

等々、とりとめのない話になってしまったが、ともかく雨の日は平常心でいつも以上に慎重な運転を心掛けるようにしたいものだ。そして梅雨明けを楽しみにしよう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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