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ケニー佐川が勝手に決める「2017モーターサイクル トップ10」その(3)国産車編 6位~10位

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
「2017モーターサイクル トップ10」国産車編 6位~10位

今年もいろいろなトピックスがあったバイク業界ですが、いよいよ年の瀬が近づいてきました。ということで、2017年を締めくくる意味で本年度に発売されたニューモデルについて、Webikeニュース編集長のケニー佐川が独断で勝手にランキングしてみました。

話題性や注目度、社会に与えたインパクトやユーザビリティなどを総合的に評価したものですが、あくまでも感覚的なものですので、楽しみながらご参考にしていただければ幸いです。今回は国産車編6位~10位までをご紹介しましょう。

第6位「YAMAHA TRICITY155」

「転ぶ恐怖」からの解放という功績

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トリシティ155は数年前に発売された125に続くLMWの第二弾である。通常のバイクと同じように車体を傾けて曲がっていくが、違うのはフロント2輪であること。バイクに乗ったことがある人なら分かると思うが、クルマと決定的に異なるのは「いつか転ぶかもしれない」という不安があることだ。

トリシティに実際に乗ってみると、そうしたバイクに特有の「転倒恐怖症」をかなり軽減できると感じる。やはり特筆すべきはコーナリングでの安心感だろう。フロント2輪で踏ん張ってくれるため、まず破綻する気がしない。カチッとした剛性感を伴ったその圧倒的な接地感は、どんなハイグリップタイヤと高性能サスペンションを持ったモーターサイクルをも凌駕するものだ。

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そして、155になって排気量が増えたことで高速道路を利用して一気に距離を稼げるようになった。世の中にはバイクに乗ってみたいけれど、ちょっと怖い感じがしてなかなか一歩を踏み出せない人たちが多くいるはずだ。その意味で、多くの潜在的ユーザーをバイクから遠ざけていた”転ぶ恐怖”をだいぶ取り去ったことが、トリシティの最大の功績ではないかと思う。

第7位「SUZUKI V-Strom 250」

お手軽な冒険バイクという新たな価値観

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2017年は250アドベンチャーモデルの当たり年だった。その中でもセールス、注目度ともに好評だったのがV-Strom兄弟の末弟として登場したV-Strom250だ。

アウトドアテイストの大径ヘッドライトと大型スクリーン、パリダカマシン「DR800S」のDNAを継承したビーク(クチバシ)を備え、フルタンクで500kmを走破できる17リットルタンクにフルパニア仕様にできる純正ケースも用意されるなど、上級モデルにも負けない本格的なアドベンチャー装備が魅力となっている。

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そして、感心するのは、同じく今年発売されたフルカウルスポーツモデルのGSX250Rの車体と並列2気筒エンジンなどを共有化しつつ、これだけ異なる独自の個性を打ち出している点。最近は4輪だけでなく2輪の世界でもプラットフォームの共有化が進んでいるが、V-Strom250はその成功例と言えるだろう。

これまでアドベンチャーモデルというと非日常的な巨大マシンが中心だったが、50万円台のリーズナブルな価格も含めて「お手軽な冒険バイク」という新たな価値観を示した意義は大きい。

第8位「HONDA REBEL250/500」

「ちょうどいい」を狙った若者向けクルーザー

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▲REBEL 250

レブルは主に北米において「ジェネレーションY」世代に向けて開発した新型クルーザーモデルである。「Y」は米国において80年代~90年代に生まれたエコブーマーとも呼ばれる若い世代のことで、彼らが求めるクールなスタイリングと気軽に楽しめるサイズ感で「ちょうどいい」を目指したという。

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▲REBEL 250

また、グローバルモデルとして世界各地のニーズに対応できるよう、共通のプラットフォームに異なる排気量のエンジンを用意。国内では単気筒250cc並列2気筒500ccの2つのラインがリリースされた。

デザインコンセプトは「SIMPLE」&「RAW」(未加工の素材)とし、自由な発想でカスタムして楽しめるスタイルが完成した。

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▲REBEL 500

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▲REBEL 500

米国ではハーレーの独壇場と思いきや、ストップ&ゴーの多い混雑した都市部ではむしろ軽快なレブルのようなモデルが好まれるそうだ。そうした潮流も見越した31年ぶりのフルモデルチェンジにも時代の変化を感じる。

手軽に乗り回せる250とロングツーリングも視野に入れた500という、排気量によるキャラの作り分けも見事な戦略だ。

第9位「YAMAHA MT-10/SP」

意のままに操れるストリート最強性能

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▲MT-10 SP

「MT-10」はスーパースポーツ「YZF-R1」をベースに開発されたスポーツネイキッドモデルである。開発コンセプトは”意のままに操れるストリート最強のスポーツ性能”として、サーキット性能を追い求めたR1に対し、普段使うことの多い常用域に合わせてチューニングされているのが特徴だ。

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▲MT-10 SP

電子制御もフル投入されトラコンやクルーズコントロール、エンジンモード選択、クイックシフターなどを標準装備。デザインコンセプトに掲げた”The King of MT”にふさわしい迫力ある独自のスタイリングとMTシリーズの最高峰としてのハイグレードな装備が与えられている。ちなみに上級版のSPにオーリンズ製電子制御サスとフルカラーTFTメーターも装備される。

厳つい雰囲気からは意外なほど穏やかで、前後サスもソフトで乗り心地も良いなど上質な走りが印象的だ。

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▲MT-10

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▲MT-10 SP

MT-10は大まかなジャンルとしてはストリートファイターに属するモデルである。今までそこは輸入車の独壇場だったが、ようやくBMWやドゥカティと互角以上に張り合える国産ストファイが登場した。しかも抜群に扱いやすいという点で乗り手を選ばない。ヤマハの繊細な調律が光る一台と言えるだろう。

第10位「HONDA X-ADV」

都会と冒険、オンとオフを自在に行き来する

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「X-ADV」はアドベンチャーの力強さとコミューターの利便性を高次元で融合させたスタイリングが特徴で、「平日は都会をスマートに移動し、休日は日常を離れて冒険へ」という遊び心のあるモーターサイクルライフを提案している。

エンジンはNCリーズで実績のある水冷並列2気筒745ccにホンダ十八番のDCT(有段式自動変速機構)の組み合わせ。ユニークなのは足まわりで、フロントに倒立フォークとリヤには軽量アルミ製スイングアームと作動性に優れたプロリンクサスを採用。また、前後スポークホイールとフロントに17インチ、リヤに15インチのブロックタイヤを採用するなど、雰囲気だけでなく実際の走破性もなかなかのものだ。

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さらにフルフェイス1個を収納可能なラゲッジスペースをシート下に設けるなどコミューターとしての利便性も高められている。普段着のまま気楽に冒険旅行に出かけて、オンとオフの生活リズムを軽やかに切り換える。そんなライト感覚が時代の空気にもフィットした、新ジャンルのモデルとして期待が膨らむ。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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