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【死亡事故はツーリング先で起きる!?】夏休み目前、今一度考える「右直事故」の危険

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

楽しい夏休み。今週末から夏季休暇に入る会社も多いことでしょう。バイクでロングツーリングに出かける予定を立てている方もいらっしゃると思います。

そんなレジャー気分に水を差すようなバイクの事故が先週も多く発生しました。

夏休みを前に今一度、いつ自分の身に降りかかるか分からない交通事故の恐ろしさについて考えてみてほしいと思います。

右直事故で2名が犠牲に

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8月6日、北海道内で死亡交通事故が相次ぎ、石狩市では国道で乗用車とバイクが衝突し、2人が死亡するなど、合わせて4人が亡くなっています。

同日午前8時半ごろ、石狩市生振の国道231号線の交差点にて、直進していたバイクと反対方向から右折してきた乗用車が衝突。

バイクを運転していた札幌市の男性(48歳)と、乗用車の助手席に乗っていた女性(34歳)が体を強く打って死亡しています。乗用車を運転していた男性はケガをしましたが命に別状はなく、警察が詳しい原因を調べているそうです。

凄まじい衝突の衝撃

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ニュースの映像を見る限り、現場は信号で制御された見通しの良い交差点で、比較的交通量も多いようです。

衝突したバイクは大型スポーツバイクの絶版車で、フロントまわりが潰れ、見るも無残な状態。

一方の乗用車も左側の助手席のドアがひしゃげて内側にめり込み、ルーフまで大きく変形するなど、衝突時の衝撃の凄まじさを物語っています。

おそらくは乗用車が右折してきたところ、その左側面にバイクが突っ込んだのでしょう。車両の損壊状態から見て、バイクも相当な速度で衝突したことがうかがえます。

過失割合では片づけられない

今回の事故は直進するバイクと対向する右折車とが交差点で衝突する、典型的な右直事故になっています。

事故当時の信号のタイミングがどうであったか、バイクがどれぐらい速度を出していたかなど詳しい情報がないのでなんとも言えませんが、通常ではこの場合はバイクに優先権があり、右折車の注意義務が問題になるはずです。

当然、過失割合も乗用車が圧倒的に大きくなるはずですが、それは事故処理での書類上の話であって、亡くなったライダーと助手席の女性が戻ってくるわけではありません。

バイクは小さく右折車は油断しやすい

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「交通事故総合分析センター」の資料によると、右折車が対向車を見落とす原因として、「右折待機により油断が生じる」、「自分の先行車や対向車により視界が遮られる」、「二輪車の小ささゆえの見えにくさ」などを挙げています。

交通渋滞時や沿道施設への右折時には、特に直進してくる二輪車との右直事故が多いそうです。

都市部では、右折車に先を譲ってもらったときに生じる油断から起きる、いわゆる「サンキュー事故」にも注意が必要です。

死亡事故の多くはツーリング先で起きる

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ちなみに警察庁発表の「平成28年における交通死亡事故について」によると、「事死亡事故当事者車両別の通行目的比較」では自動二輪車は観光娯楽ドライブが38%と最も多く、そ割合は乗用車や原付などを大きく上回っています。

つまり、バイクはツーリング先での死亡事故が非常に多いということ。

また、その中で「類型別死亡事故件数」を見てみると、単独事故と車両相互がだいたい半々の割合で、車両が絡む事故では「右左折時」が14%でトップになっています。

バイクの場合、ツーリング先では単独事故に加え、“右左折での死亡事故が多い”ことがデータからも読み取れます。

もしもの場合でも回避できる余裕を持つ

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風光明媚な景色に触れ、気分が高揚して思わずアクセルが開いてしまう気持は分かります。

でも、事故を起こしてしまっては楽しいツーリングが台無しになるどころか、人生までも失ってしまいかねません。

スピードの出し過ぎに注意することはもちろん、交差点では十分速度を落とし、いつでも減速できるよう前後ブレーキの準備をしつつ、たとえ青信号で自分が優先であっても気を抜かず、右折車がいればドライバーが自分に気づいているか、その目線まで確認するぐらいの周到さをもって慎重なライディングを心掛けていただければと思います。

常に気持ちに余裕をもっておくことが大事ですね。

それでは皆さん、バイクとともに楽しく幸せな夏休みをお過ごしください!

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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