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【KTM 「125/250/390DUKE」試乗レポート】同じ車体の3兄弟、その走りの違いとは!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

先日開催されたKTMの新型DUKEシリーズのメディア向けサーキット試乗会から、モーターサイクルジャーナリストでWebikeニュース編集長、ケニー佐川のインプレッションを動画付きでレポートする。

試乗コースは千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイ。今回は特に新型となった2017年モデルの125DUKE/250DUKE/390DUKEにフォーカスして、マシン解説とともにその乗り味の違いなどについてお伝えしたい。

デザインを一新しシャープな外観に

KTMのネイキッドレンジの中でも125、250、390はスモールDUKE(デューク)シリーズと呼ばれ、軽量コンパクトな車体と扱いやすい出力特性などから、日本でも人気のシリーズとなっている。今回紹介する2017年モデルは3兄弟がすべて新型となって登場した。

エンジンは同じ水冷単気筒DOHC4バルブだがそれぞれ異なる排気量を持ち、共通のフレームに搭載されているのは従来どおりである。大きく変わったのはデザインだ。

3モデルともシュラウドが大型化され、ヘッドライトからタンク、シート、テールカウルへとつながるエッジの効いたシルエットに進化。

マフラーも車体下のセンター出しから、本格的なサイレンサーを装備した右後方1本出しとなり迫力も増している。

125/390はLEDライトとTFTメーターを装備

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特に125と390は最上級モデルの1290スーパーデュークRとイメージが共通化され、スラントした大型LEDヘッドライトとTFTフルカラーディスプレイが装備されるなど高級感が一段とアップ。

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▲390DUKEに装備された新型LEDヘッドライト

一方、250のライトは通常のバルブタイプの周囲にLEDランニングライトを施し、メーターは従来のLCDタイプを踏襲している。

何故250だけ装備が異なるのか、と不思議に思うかもしれないが、KTMの話では250は日本では免許制度的な意味でも特別な存在であり、成長著しいアジア市場においても主力モデルになると見られている。

そこで、250はあえて装備をシンプルにして手頃な価格に抑えることで、幅広いユーザーにも手が届きやすい設定としたようだ。

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▲250DUKEのメーターは従来型

出力特性を向上し剛性バランスを最適化

エンジンと車体については従来モデルを踏襲しつつも各部が熟成され、3モデル共通のフレームとしながら出力に合わせて剛性バランスが最適化されている。

ちなみに125のエンジンは200のボアダウン版であり、250は同様に390のボアダウン版という位置付け。

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▲125DUKEのエンジン

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▲250DUKEのエンジン

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▲390DUKEのエンジン

よく見ると、250と390のエンジンは見た目が同じで、125と比べるとエンジン自体のサイズもひとまわり大きくなっているのが分かるはずだ。

スペック的には表に出てこないが出力特性もそれぞれに向上し、125はパワーバンドを拡張、390については低回転域で5.7%のトルクアップを果たしている。

新設計の前後サスをモデルに合わせて専用化

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▲写真は390DUKE用

また、車重やとパワーに合わせてWP製の前後サスペンションの設定もそれぞれ専用となり、よりスポーティなハンドリングを目指してフロントフォークのストローク量が減らされている(150mm→142mm)点にも注目。リヤショックも新設計となり、プリロード調整機構が装備された。

そして、ブレンボのサブブランドであるBYBRE製ブレーキも全車にボッシュ製ABSが標準装備となった。ライポジも従来シリーズよりハンドル位置が若干下がりシートは高く設定(800mm→830mm)されるなど、より前傾を強めたアグレッシブな設定になっているのが特徴だ。

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390はライド・バイ・ワイヤを採用

他に3モデルの違いを挙げるとすれば、250と390にはスリッパ―クラッチが採用され、さらに390だけがスロットルがライド・バイ・ワイヤ方式となり、ブレーキもフロントにφ320mmディスクを装備(125/250は300mm)。

ABSにもリヤスライドに対応したスーパーモトモードが搭載されるなどハイスペックな設定である。

以上のことからも、新型スモールDUKEシリーズはライポジやデザイン、出力特性から足まわりに至るまで、フルチェンジと言えるほどの大幅な改良を受けているのが分かるはずだ。

■125/250/390DUKE 試乗インプレッション

よりスポーティかつスムーズになった走り

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三つ子の兄弟とも言える125、250、390デューク。見た目もそっくりでシュラウドに表記されたネームロゴを見ないとなかなか判別が難しいぐらいだ。従来型と比べるとボディラインが一段とシェイプされ、デザイン的な完成度も高まっている。

同じ骨格を持つ3モデルの乗り味は基本的によく似ている。共通して言えるのは、従来モデルよりスポーティで出力特性もスムーズになったこと。

エンジンに関してはマップ変更と吸排気系の見直しなどによりワイドトルク化が図られパフォーマンスが向上。特に390に関しては低中速域でのトルクアップに加え、スリッパ―クラッチとライド・バイ・ワイヤの導入などにより戦闘力が高められている。

コーナリングの安定感が一段とアップ

ハンドリングも洗練された。これは前後サスがリファインされたことが大きいと思う。フロントは減衰力を高めつつストローク量を切り詰めることでブレーキング時のピッチングモーションが穏やかになり、コーナー進入での車体姿勢をコントロールしやすくなった。

リヤショックもプリロード調整付きの新作となり、さらに排気量別にバネレートも含めた最適化を行うことでコーナリング時の安定感も高められている。

125DUKE

どこでも全開にできる扱いやすさ

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▲125DUKE

違うのはパワーだ。125はとにかく軽くて扱いやすく、今回のサーキットではどこでもスロットル全開。ブレーキはまったく使わないと言ってもいいほどだ。

コーナー立ち上がりの加速などではややアンダーパワーな感じは否めないが、その分、常に開け開けの走りを楽しめる。車格には余裕があるが、走り方はミニモト的と言っていだろう。

250DUKE

パワーと車体がベストマッチ

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▲250DUKE

250はパワーと車体と足まわりが丁度いい感じで個人的にはベストバランス。全開加速でも怖くない程度にスピード感が楽しめるし、250でも袖ケ浦ではヘアピン手前で軽くフロントブレーキを当てる程度でオーケー。

ほぼ進入速度を落とすことなくコーナーに飛び込んでいける。マシンの性能を出し切って気持ち良く走れるという意味でも、幅広いライダー

におすすめできそうだ。

390DUKE

玄人好みのパワフルな走り

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▲390DUKE

一方、390は排気音も一段と野太くパルシングで、空吹かしするだけでエンジンの迫力を感じる。

走りも断トツに速いが、馬力が出ている分難しいところがあり、たとえば250では全開でいけるコーナーでも少しスロットル絞っていく必要があったり、トップスピードも出る分しっかり止めていく必要があるなど、ややビッグバイク的な走り方求められる部分もある。それだけに操る醍醐味も濃いと言えるが。

ストレートで差がつくパワーの違い

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▲390DUKE

ちなみに最高出力は125の15psを基準にすると、250が2倍の30ps、390が3倍の44psとなっていて、最大トルクもほぼ同様。それでいて車重はそれぞれ137kg、147kg、149kgとそれほど変わらない。以上のスペックからも390のアグレッシブさが想像できるはずだ。

参考までに袖ケ浦のメインストレートでの最高速は、メーター読みで125が110km/h、250が127km/h、390が147km/hだった。

そして、高速コーナーでのコーナリング速度は3モデルとも100km/h前後ということで、差がつくのはやはりストレート。

ただし390は速度が伸びる分だけブレーキングポイントも手前になり、減速度合いも大きくなるため速度コントロールの技術が必要となるといった具合だ。

ロードスポーツ色を強めたライポジ

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ライポジは従来モデルと比べるとシート高が若干高くなり、ハンドル位置が低くなった分やや前傾が強くなった。

従来がモタードっぽく上体も起きたライポジだったこともあり、よりロードスポーツ的な自然なライポジになったと思う。

また、スペック上は同じシート高でも前後サスの設定が異なるため、足着き性もそれぞれ僅かに差が出た。

実際に跨ってみると、125はソフトで初期の沈み込みも大きく足着きの良さも抜群。390はバネレートも高くダンパーもしっかりしているためシートも高め。250はその中間といったところだ。

三者三様の個性があり楽しみ方がある

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まとめると、125は扱いやすいのでサーキットビギナー向けだし、コーナリング速度を高める練習用マシンとしてベテランにもおすすめ。街中ではコミューター的な使い方もできるだろう。

390は本格的なサーキットでも楽しめる玄人向けの設定で、腕さえあれば軽量&ハイパワーを生かしてビッグバイクにも迫る走りも可能。

250は“ちょうどいい感じ”で街乗りからワインディング、ショートサーキットまで幅広く楽しめる万人向けのマシンと言えるだろう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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