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普通二輪免許で乗れて価格も250cc並み BMW「G310R」は新たな層を獲得するか!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

BMWの「G310R」が6月1日より、国内デリバリーが開始されることになった。

G310RはBMW初の本格的スモールスポーツモデルとして2015年末に発表され、その後、各地のモーターサイクルショーなどに出展されて話題を呼んでいたが、いよいよプロダクトとして導入されることになった。

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走りを予感させるハイグレードな作り

エンジンは新開発の水冷単気筒DOHC4バルブ313ccで、ボア・ストロークは80mm×62.1mmの設定。最高出力は25Kw(34馬力)/9,500rpm、最大トルク28Nm(2.9kg-m)/7500rpmというスペックは当初から変更されていない。

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フレームはスチール製の鋼管タイプで、これにφ41mmのKYB製の倒立式テレスコピックフォークと同じモノショックの組み合わせ。

前後ブレーキはBybre製(ブレンボの普及ブランド)でフロントに4ピストンキャリパー+φ300mmディスク、リヤに2ピストンキャリパー+φ240mmディスクをABS標準装備でセットするなど、ハイグレードな足まわりを誇る。

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スイングアームもアルミ製でカットアウト加工により軽量化と強度を向上。リヤタイヤに150サイズのワイドタイヤを装備するなど、走りのポテンシャルへのこだわりが見て取れる。

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後傾シリンダー採用でハンドリングを向上

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一番の特徴はなんといっても後傾シリンダーの採用だろう。一般的なモデルではエンジンのシリンダー部分がやや前傾しているものだが、G310Rの場合は逆に後ろに傾いている。

加えてシリンダーヘッドを前後180°回転させることで後方排気とし、スペース効率を稼ぎつつ重心位置をより低く、フロントホイール寄りに移動している点が新しい。

これにより、スイングアーム長を稼ぎつつ、1374mmというショートホイールベースを実現。単気筒ならではのスリムな車体と158.5kgのライトウエイトを武器に、俊敏さと扱いやすさを兼ね備えたモデルとして仕上げられている。

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BMWは今までにもRシリーズで水平対向2気筒エンジンとテレレバーやパラレバー式サスペンション、Kシリーズでは縦置き3気筒・4気筒や並列6気筒エンジン、デュオレバーなど、常に新たな技術的テーマに挑戦してきたメーカーとして知られる。今回の後傾シリンダーの採用についても、独自性にこだわるチャレンジングな姿勢が光っていると思う。

S1000R譲りのダイナミックなスタイリング

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デザインもスポーツネイキッド「S1000R」の遺伝子を受け継ぐもので、洗練されたダイナミックな造形美や高級感あふれるディテールの作り込みは、さすがBMWの面目躍如と言える。

スモールモデルであっても手抜きをしないモノ作りの姿勢は4輪に通じるものがある。

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普通二輪免許で乗れて価格も250cc並み

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そして注目すべきは、日本では普通自動二輪免許で運転できるカテゴリーであること。

もちろんBMWとしては唯一のモデルであり、価格的にも58万円(消費税込み)と国産250ccクラス並みに抑えられていることも含めて、購入へのハードルを大幅に下げていることは間違いない。

そして、2輪のみならずプレステージな4輪メーカーとして確固たる地位を築いてきたBMWのブランドバリューは大きな魅力だ。いろいろな意味で敷居が下がったことで、今までバイクに興味のなかった層をも新たに引き込む可能性がある。

同クラスの単気筒スポーツネイキッドとしては、ホンダCB250F(海外ではCB300F)やカワサキZ250SL、KTM250&390デュークあたりがライバルになりそうだ。国内におけるユーザーの反響も含め、今後の動向が楽しみな一台である。

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出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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