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時代を変える! CBR1000RR SPにも採用された「電子制御サスペンション」の素晴らしさとは

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

最近の最新鋭モデルの進化には目を見張るものがあります。

特に凄いことになっているのが電子制御テクノロジーなのですが、その中でも自分が注目しているのは電子制御サスペンションです。

エンジンやシャーシの技術も日進月歩ではありますが、サスペンションの電子化は約20年前に起こったキャブレターからのFI化に続く、大きな技術的転換点になるのではと思います。

ようやく2輪でも一般化

電子制御サスペンションは、コンピューター制御によって走行状況に応じてサスペンションの状態を最適に調整するシステムです。4輪や鉄道などではだいぶ以前から導入されていますが、最近になってようやく2輪でも一般化してきましたね。

先日試乗した新型CBR1000RR SPにもオーリンズ製の電子制御サスペンション「スマートEC」(フロント:NIX30 /リア:TTX36)が採用されていましたが、これは現在の主流となっている減衰力可変式ショックアブソーバーというタイプです。

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▲CBR1000RR SPに採用されている「スマートEC」

セミアクティブサスとも呼ばれるもので、従来のサスペンションの基本的な構造は変えずにダンパー調整機構のみを自動化して、バネの初期荷重を決めるプリロードの調整については従来どおりマニュアル式となっています。

ちなみにドゥカティ・1299パニガーレSや、BMW・S1000RR、ヤマハ・YZF-R1Mなどもほぼ同じタイプを採用しています。

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仕組みとしては、ライディングモード(メーカーによって呼称は異なる)と連動することで、「サーキット」、「スポーツ」、「ストリート」、「レイン」などの選択に応じて、予め最適化されたダンパー設定にプリセットされる方式です。

加えて、従来のサスペンション同様、ユーザーが自分の好みに合わせて細かくセッティングを変えることも可能です。アドベンチャーモデルの中にはプリロードまで自動的にセッティングしてくれるタイプもありますね。

電子制御サスペンションは、マシンの姿勢変化や加速度を正確かつ素早くセンシングしてSCU(サスペンション・コントロール・ユニット)に伝える、IMU(慣性計測装置)との連動があってはじめて実現したシステムと言えます。

自動的に最適なセッティングを用意、乗り味の違いに感動

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電子制御サスペンションの素晴らしい点を自分なりに挙げるとすると、大きく3つあると思います。

1.工具を使わずに調整できる

今まではフルアジャスタブルタイプであっても、これを調整するための工具が必需品でした。中には専用工具が必要な場合もあり、工具を揃えるだけでも大変。

伸圧両方のダンパーとプリロードを全ていじろうとしたらけっこうな労力で、時間と根気も求められました。それが電制だと手を汚す必要もなく、一瞬でセッティングできるわけです。

2.モードによって自動的に最適なセッティングを用意

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料理でいうとセットメニューのようなもので、今日は手軽に快適に乗りたいと思ったら「ストリート」モードで乗り心地重視にできるし、ガッツリ攻めたいと思ったら「サーキット」モードで足を固めて車体のキレも出していける。

ベテランライダーだけが知っている、こうしたサスセッティングのノウハウも含めてパッケージで提供してくれるわけです。

3.アクティブサスの由来であるリアルタイムでの調整機能

車体の姿勢や加速度、路面の変化などに応じて即座に減衰力を調整し、マシンの挙動をコントロールしてくれます。

これにより、荒れた路面やウェット路面での追従性を高めたり、ピッチングモーションを最適化してコーナー進入速度を高めたり、旋回中のフロントからリアへの荷重の受け渡しをスムーズにし、立ち上がりで効率的な加速を実現してくれます。

つまり、安心感と速さを同時に手に入れることができます。

そして、これらの効果がフィードバックされることで、ライダーは「気持ち良さ」や「グレード感」を感じるわけです。

ライディングがもっと楽しく

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サスペンションというと、とかく難解で素人には手を出しづらいものと考えられがちですが、電子制御サスペンションが普及することで誰もが簡単・手軽にセッティングを変えられるようになれば、ライディングの楽しさもますます深まると思います。

そして、サスペンションによる乗り味の違いに感動することでしょう。

素晴らしいシステムなので、機会があればぜひ皆さんも試乗会などで体験してみてください。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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