【彼らからは絶対に逃げられない】 白バイ全国大会で見た凄さの神髄とは!?
今年も10月初旬に全国白バイ安全運転競技大会が開催されました。
毎年、茨城県のひたちなか市にある安全運転中央研修所で行われるこの大会は、47都道府県から選りすぐりのエリート白バイ隊員たちを集め、日頃の訓練の成果を競う、文字通り「白バイ日本一決定戦」です。
各都道府県から3名が選ばれる白バイ界の「トップガン」
全国には約3000名の白バイ隊員がいるそうですが、所属は様々で普段は所轄の警察署や交通機動隊、高速隊などで勤務しています。
ただ、各都道府県警を代表して大会に出場する隊員は選手として一定期間のトレーニングを積んで、心技体を鍛え抜いた若手隊員たちです。そこから代表として選抜されるのは各県で3名まで。
そうした狭き門をくぐり抜けて代表の座を勝ち取ったエリート隊員が、大会に向けて全国から集結してくるわけです。
まさにベス・オブ・ベスト。彼らは白バイ界の“トップガン”なのです。
公道における安全運転のプロとしてのテクニック
白バイ隊員の主たる任務は円滑な交通の確保と危険運転の指導・取り締まりです。常に危険と隣り合わせの公道の中で、これらの任務をこなしつつ自分の身を守る技術が求められるわけです。
安全運転のプロである白バイ隊員は、ある意味で公道における最強の運転テクニックを持ったスペシャリスト集団と言えます。
その神髄とは何か。
それは「確実性」です。危険に満ちた公道の中にあって、彼らにミスは許されません。どんな状況であっても、常に安全・確実に一般ユーザーの模範となる走りが求められますし、さらには、山道や細い路地裏、雨の泥道でも即応できる操縦技術が必要とされます。
あらゆる路面状況に対応する技術
ある隊員から話を聞いたことがありますが、東日本大震災のときにもまず現地の被害状況を確認するために、白バイが派遣されたそうです。クルマでは行けない被災地にも急行できるバイクの機動力と白バイ隊員の能力に期待が寄せられたのです。
また、別の話としては、交通違反をしたオフロードバイクが公園の階段を上って逃げようとしたところ、白バイも易々とそのまま追走してきて御用になったという逸話も。
昔から「白バイからは絶対に逃げられない」と言われてきましたが、白バイ大会を取材していると、こうしたエピソードにも納得させられる場面が目の前で展開されます。
4種目の総合力が試される究極の競技
大会は2日間にわたって行われますが、初日に「バランス走行」と「トライアル」、二日目に「不整地走行」と「傾斜走行」という4つの競技から成っていて、その総合得点で優勝が決まる仕組みになっています。団体と個人の部があり、ちなみに今年は神奈川県警がその両方を獲得する栄誉に輝きました。
競技種目を見ても明らかなように、平坦なアスファルト上を走るだけではないのです。
種目別に簡単に説明すると、「バランス走行」とは8の字やUターン、低速バランスや回避制動など主に混雑した市街地を想定した競技です。
「トライアル」とは急斜面や階段などの障害物を乗り越えていく走破力を試される競技。「不整地走行」とはモトクロスのことで、滑りやすいダートコースで暴れるバイクをいかに上手にコントロールするかが問われます。
そして、大会の華である最終種目の「傾斜走行」はパイロンで作られたテクニカルなコースをいかにミスなく速く駆け抜けるかを競うもので、低中速域でのコーナリングのスキルが試されます。
バイクを寝かせずに曲げる「白バイ乗り」の妙技
白バイ隊員の走り方は独特で、コーナリングでは上体を大きくイン側に傾けたフォームを取りますが、実はこれにも訳があります。
白バイ大会では車体の一部が接地すると減点対象になってしまうため、隊員たちは車体をなるべく寝かさずに速く曲がるテクニックを駆使します。コーナリングの強烈な遠心力に対抗するために、車体を傾ける代わりに自分自身の体重移動量を増やすことでカバーしているのです。
結果的にスリップしやすい雨天でも彼らはドライ路面とほとんど変わらないタイムで走りますし、しかもそれをウォーミングアップ無しのぶっつけ本番で行います。絶対に失敗が許されない安全運転のプロだからこそのテクニック。
俗に“白バイ乗り”などと表現される職人技は、こうした必然から生まれたのです。
朝夕は肌寒い日も多くなり、本格的な秋の気配を感じる今日この頃。「秋の全国交通安全運動」は終了しましたが、気を緩めることなく、ぜひ安全運転を心掛けていただければと思います。
※記事中の写真は、2016年度大会のものではありません。