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【ダカール・ラリー15連覇 KTMの強さの理由とは!?】

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
「ダカール・ラリー」で15連覇を達成したKTM

南米・アルゼンチンの荒涼たる大地を舞台に、計16日間、9346kmの行程で争われた「第36回ダカール・ラリー2016」。復帰から4年目の今年こそ結果を出さないと後がない、バイク界の巨人ホンダも必勝態勢で臨んだが、終わってみればKTMの15連覇という例年どおりの結果が残った。世界一過酷と言われるラリーで、どうしてKTMは勝ち続けることができるのか。その理由を、自ら現地に赴いたKTMジャパンの野口社長に聞いた。

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ラリーそのものを商売とするKTMの強さ

「今年のダカール・ラリーは前評判どおり、スタートからKTMとホンダの一騎打ちの様相になっていました。ホンダのマシンはたしかに速いんですよ、特にエンジンは凄い。何十億円を投入して開発しただけあってハードウェア的には優れている。でも反面、テクノロジーの力ですべて解決しようとする姿勢が見て取れる。MotoGPなどと同じアプローチですよね。でも、それだけでは勝てないのがダカール・ラリーです。

一方、KTMはラリーそのものが商売になっています。つまり、市販モデルである「KTM450ラリー」を一般のラリーストに買っていただき、それを元手にラリーに参戦している。製品を販売して利益を上げるというごく当たり前の企業活動ですが、ラリーにおいてもそれがビジネスとして成立しているわけです。

ただ簡単ではありませんよ。製品として売っているのだから壊れてはいけない。実験的なプロトタイプではないわけで、逆に言うと、KTMのファクトリーマシンは市販モデルとほとんど変わらないんですよ。現に今回総合2位に入ったステファン・ソヴィツコのマシンは市販モデルですし、今回KTMジャパンから唯一の日本人ライダーとして参戦し完走を果たした、三橋淳のマシンも昨年型の市販モデルです。”READY TO RACE”というスローガンにも、KTMとしてのこうした企業姿勢が投影されています。

南米開催のダカールラリーで日本人初完走を果たした三橋淳選手
南米開催のダカールラリーで日本人初完走を果たした三橋淳選手

ダカール・ラリーだけ(といっても十分に過酷ですが)完走できればいいとは考えていません。世界ラリー選手権などワンシーズンで5から6戦はある中で、致命的なトラブルなしで走り通せるマシンを提供することが我々の使命と思っています。サバイバル性能とでも言いましょうか。ラリーでは何かトラブルがあっても、基本的にユーザーレベルで修理できるものでなくてはなりません。だから、特殊なパーツは使っていない。市販モデルのパーツをそのまま交換して使えるので、戦列への復帰も早い。

KTMファクトリーチームというと、凄い体制でやっていると思われがちですが、実際は「えっ、これだけ!」という程度。今回も3名のライダーに3名のメカニックとWPのエンジニアが1人ぐらいとか、現場ではそんなものです。そして、皆レースを楽しんでいますよね。もちろんレースですから真剣ですが、そこに楽しむことを忘れない。いつもチーム内は楽観的なムードに溢れていますね。そんな余裕も勝利につながった要因かもしれません。」

「誰でも買えるマシンで勝つ」KTMの”モノ作りの哲学

KTMジャパン代表・野口英康氏(左)と三橋淳選手(右)
KTMジャパン代表・野口英康氏(左)と三橋淳選手(右)

KTMジャパンの野口社長へのインタビューを通じて見えてきた、KTMの強さの秘訣とは、すなわち「壊れない性能」と「リカバリーしやすさ」、そして「楽観主義」だった。そこには前提として、ラリーを単なる企業PRの手段とするのではなく、それ自体を元が取れる「ビジネス」として位置づけていることがポイントであるように思われる。“誰でも買えるマシンで勝つ”こと。つまりユーザー視点でのモノ作りである。その哲学こそが、KTMの強さなのだと実感した。

聞き手/Webikeニュース編集長 ケニー佐川

取材協力/KTMジャパン

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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