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【日本初の高性能フルサイズ電動バイク】「ZecOO(ゼクー)」が888万円で市販化!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
「zecOO(ゼクー)」とデザイナーの根津氏

3月25日に日本初となる市販フルサイズ電動モーターサイクル「zecOO(ゼクー)」のプレス発表会が都内で開催された。数年前からマスコミやニュース等でも度々取り上げられるなど注目を集めてきたが、今回満を持して市販モデルとして発売されることとなった。

ゼクーは「日本人がデザインし、日本人が手作りで製作し、日本のモノづくりを世界に示していくためのプロジェクト」として2011年に始動。元トヨタのデザイナーだった根津氏(ツナグデザイン)が中心となって全体のプランニングとデザインを行い、その志に賛同した仲間が集まった。実際の車体設計と製造をオリジナルの2輪や3輪の開発で実績のある中村氏(オートスタッフ末広)が担当。電動バイクの心臓部であるモーター制御システムを日本でエンジニアとして活躍するエリック・ウー氏が手掛けた。これ以外にもカーボンファイバー製外装やアルミ切削加工によるフレームなどゼクーを構成するほとんどのコンポーネンツを日本で製造、すべて手作りで組み上げた逸品である。

「今までにない乗り物を作ろうと思った」と根津氏は、かつて2005年の愛知万博で話題を呼んだトヨタの未来型パーソナルモビリティ「i-unit」を手掛けるなど、奇抜とも思える独創的なデザインで周りに刺激を与えてきた人だ。元々バイク好きで昔は2ストロークのレーサーレプリカなどを乗り回していた時代もあったが、今はゼクー開発の資金とするためバイクはすべて手放したそうだ。「何事もネットの時代だが、人と人のリアルなつながりに勝るモノはない。乗り物は人に会うための手段でもあり、それだけにまた乗りたくなる魅力も必要」というのが氏の持論。ゼクーを見ているとスッと腑に落ちるものがある。

一方、プロダクトの責任者である中村氏が「誰が見てもひと目でEVと分かるカタチを目指した」と語るとおり、従来のいわゆる“電動スクーター”とは一線を画すと車体構成であることは明らかだ。たしかに今でこそEVは珍しくはないが、こと大型スポーツモデルに限ると車体やフレームは既存のガソリン車を流用または模倣する手法が目立っている。これに対しゼクーは、まったくゼロからの出発ですべてをオリジナルで作り上げている。たとえばハブセンターステアリングという操舵システム。機構が複雑であるため今まで実用化された例は世界でも数えるほどしかないが、ゼクーではバッテリー重量による姿勢変化を抑えるため敢えて一般的なテレスコピックではなくダブルスイングアーム方式を採用している。もちろんそのパーツもアルミ材を溶接して磨いた手作り。これぞクラフトマンシップの面目躍如だろう。

気になるスペックだが、モーター最大出力は50kw(約67ps)で最高速度は160km/hと動力性能は600cc~750ccのガソリン車程度。車格としてはホイールベース1830mmで重量280kgというと軽めの大型クルーザーといったところ。リチウムイオンバッテリーを搭載し8時間充電で約160kmの走行が可能となっている。注目すべきは144Nmの最大トルク。いきなり100%のトルクが取り出せる電動モーターならではの出力特性により、出足の加速はスーパースポーツを上回るという。なお、日本の法制上では軽二輪(250cc以下)の扱いとなり車検制度の対象外となるため、電気代も含めてランニングコストが安いことも利点だ。

なお価格は888万円(税抜)、受注生産のみの49台の限定販売とのことだが、国内外も含めて既に数件のオーダーが入っている模様である。今後はゼクーの製造と販売に注力しつつ新たなプロジェクトについても構想している段階だ。

コンセプトはずはり「未来」と根津氏。ゼクーの高性能モーターが奏でる濁りのない金属的なサウンドは、まさしく未来を予感させるものだった。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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