部活動は教員の仕事か? 中教審「中間まとめ」に期待すること

公立中学校における「所定労働時間」と「部活動」との関係(筆者が作図)

■「部活動」の位置づけ 重大局面に

 学校教育における「部活動」の位置づけに関する議論が、山場を迎えている。

 先月28日、文部科学省の中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」は、審議の「中間まとめ(案)」を発表した。登下校の安全確保や、校内の清掃、部活動の運営などの各種事項を、教員の仕事とみなすべきかどうか、特別部会の見解が示されている。

 そのなかでも注目すべきは「部活動」の扱いである。

 ここ数年、教員における部活動指導の過重負担が、「ブラック部活動」という言葉とともに語られ、すでにその問題点や矛盾点の大部分が明らかにされてきた。機は熟した。はたして国の審議会は、教員にとっての部活動をどのように性格づけようとしているのか。

■「『命令』ではなく、『お願い』」?

 部活動は教員の仕事なのか?――これは、部活動改革を推進する多くの先生たちがくり返し問いかけてきた難題である。

 部活動の指導について、ある学校では、校長は「『命令』ではなくて、『お願い』」と言い、別の学校では、「校務分掌(校内の役割分担)に含まれる」と言う。有無を言わさずに顧問就任を強制されるケースもあれば、「顧問に就きたくない」と主張してみたところ意外にすんなりと認められたケースもある。

 そもそも国の学習指導要領においても、部活動は「学校教育の一環」と明記されている一方で、「教育課程外」(教育課程:各学校が定める教育計画)という表記もある。これもまた、部活動の位置づけを混乱させてきた。

 いま必要なのは、上記のような曖昧さを回避し、できるだけ明確な言葉で、部活動の位置づけを語ることである。

■「時間外に及ぶ部活動」は命令できない

公立中学校における「所定労働時間」と「部活動」との関係(筆者が作図)
公立中学校における「所定労働時間」と「部活動」との関係(筆者が作図)

 それではここで、「校長は教員に部活動指導を命じることができるか」という視点から、部活動の性格を明らかにしたい。

 この問いには、公立校教員に適用される「給特法」(「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」)にもとづいて、明確に答えることができる。

 端的に言うと「給特法」は、公立校の教員に対して、時間外労働を命じないことならびに時間外労働の手当を支払わないことを定めている。この法律がある限り、校長は教員に対して、所定労働時間を超えた仕事(部活動を含む)を命じることはできない【上図の緑枠】。

 部活動の時間帯は一般に、教員の所定労働時間を大幅に超える【上図の青枠】[注1]。したがって、「所定労働時間外に及ぶ部活動は命令できない」ということになる[注2]。

■部活動指導を命令できる唯一の条件

イメージ(提供:写真AC)
イメージ(提供:写真AC)

 所定労働時間外に及ぶ命令ができないということは、裏を返すと、所定労働時間内であれば、部活動の指導は命令してもよいということである。

 ところが、ここで重大な問題が浮上する。

 現実には、多くの教員は、部活動の指導後に仕事をこなしている。今年4月に発表された文部科学省「教員勤務実態調査」(速報値)では、公立中学校教員の労働時間は、平均11時間32分である。部活動の後には、授業準備、成績処理、学校行事の準備、各種校務など、さまざまな作業が待ち受けている。

 このとき、一定の時間内に仕事を収めるには、仕事に優先順位をつけることが求められる。なおこれは、仮に給特法が今後改正されて、時間外労働が命令されうる状況に移行したとしても、同じである。圧倒的な仕事量を前にして、限られた時間枠のなかで、優先してこなすべき作業を見極めなければならないのだ。

 教員にとってもっとも重要な仕事である「授業」の準備には、最優先で時間が割かれるべきである。また授業をとおして生徒を評価するための成績処理も、大切な仕事である。

 それらに比べれば、「教育課程外」の部活動指導は、優先度が低くなる。つまり、授業準備や成績処理を終えてもなお時間に余裕がある条件下において、校長ははじめて部活動の指導を教員に命じることができると考えるべきである。(現実的には、教員に部活動指導を命じるのはきわめて難しいということだ。)

■「中間まとめ(案)」に欠けているもの

 これでようやく、中教審特別部会の「中間まとめ(案)」を検討する材料が出そろった。

 率直に言うと私は、今回の「中間まとめ(案)」における部活動関連の記述には、けっこう満足している。「学校の業務であるものの、必ずしも教師が担わなければならない業務ではない」(p. 13)、「部活動を学校単位の取組から地域単位の取組にし、学校以外が担うことも積極的に進めるべき」(p. 23)といった文言は、教員の負担軽減に積極的に踏み込んだ記述であり、とてもありがたく感じている。

 しかしながら、いま過重負担で苦しんでいる現職の先生たちにとって「中間まとめ(案)」がどのように作用するのかと考えたときに、私は猛烈な不安に襲われる。

 というのも、校長が教員に対して、時間外に及ぶ部活動を無理に押しつけるための「武器」はあちこちにあるけれども、それに対抗できるような、いま苦しんでいる先生たちが使える「武器」がほとんどないのだ。

■「学校の業務」「学校教育の一環」という大義

中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」による「中間まとめ(案)」
中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」による「中間まとめ(案)」

 たとえば「中間まとめ(案)」には、「部活動については学校の業務と位置付けられ、現状では、教師が担わざるを得ない状況である」(p. 22)との文言がある。「学校の業務」そして「教師が担わざるを得ない」とは何を意味するのか。

 先生たちは、部活動は「学校教育の一環」という曖昧な学習指導要領の文言、ただそれだけで、「職務だ」「校務だ」と言われて、所定労働時間を超える部活動の指導を強制されてきた。「中間まとめ(案)」においても、部活動は「学校の業務」「学校教育の一環」とくり返され、「教師が担わざるを得ない」と記される。

 それらの言葉は曖昧で、それが権力者の手に渡ったとき、「だから、部活動を指導しなさい」という大義に変わってしまうことが危惧される。

■いま苦しんでいる先生たちのために

 他方で、部活動の負担に苦しむ教員が使える「武器」は少ない。

 だが幸いにして、複数の委員がそこに助け船を出してくれている。私は、「中間まとめ(案)」が発表された会場の傍聴席で、心強い言葉をたくさん耳にした。

 妹尾昌俊委員(学校マネジメントコンサルタント)は、「超勤の命令は出せない」にもかかわらず、「勤務時間外に活動することが当然視されています」と、「時間外に及ぶ部活動」の問題性を指摘していた。

 また相原康伸委員(日本労働組合総連合会事務局長)は、「部活動指導が教員の本来業務でないことを明確に」と、現行の「中間まとめ(案)」への加筆を要望していた[注3]。これは、授業準備等の仕事内容と比較したときに、部活動の優先順位はけっして高くないことを意味するものである。

 「時間外に及ぶ部活動の命令はできない」「部活動は本来的業務ではない」――こういった言葉が入っているだけで、救われる先生たちはたくさんいる。そしてそれらの言葉は、過熱した部活動を少しずつ冷ましていき、適度な部活動、持続可能な部活動への転換を生み出してくれるはずである。

 先生たちの苦悩と部活動の未来は、ほんの短いフレーズで左右される。中教審の議論から、目を離してはならない。

  • 注1:スポーツ庁の最新の調査(2017年7月)の結果をもとに、公立中学校の運動部顧問における平日一日あたりの指導時間を算出すると、約2時間14分である。この場合、仮に45分の休憩時間をつぶして部活動を指導したとしても、正規の終業時刻を大幅に超えてしまう。
  • 注2:東京都教育委員会が設置した「部活動基本問題検討委員会」は、2005年度の時点で、その報告書において、「部活動指導は教職員の職務である」と主張している。だが、「勤務時間を越えた部活動指導」は「命令に基づくものではない」とも記している。また、スポーツ庁学校体育室室長もNHKの取材に対して、「基本的には校長先生が職務命令としてお願いできるのは、『部活の顧問をしてください』ということ」であり、「校長先生は、『残業をしてまで部活の顧問をしろ』と命じることはできません」(NHK「金曜イチから」2017年5月12日放送)と述べている。
  • 注3:妹尾委員と相原委員の発言の詳細は、斉藤ひでみ氏のコメント「学校の働き方改革『中間まとめ案』は危険だ」(ウェブサイト「教働コラムズ」)に掲載されている。