素人の部活顧問 先生の嘆き 強制的に顧問担当、種目は選べず

新年度、どの部活動を担当することになるか

■素人教員による部活動指導

泳げない水泳部顧問、楽譜が読めない吹奏楽部顧問、受け身のできない柔道部顧問、字がヘタな書道部顧問、囲碁にしか興味がない将棋部顧問…。

この記事を読んでいる皆さんが、「明日から自分がまったく知らないスポーツや芸術活動を、中学生や高校生に教えなさい」と言われたらどう感じるだろう。くれぐれも、「教えてほしい」ではなく、「教えなさい」という強制である。

新年度が始まり、各校の職員会議では、誰がどの部活動を担当するのか、発表がある。自分にはまったく経験も関心もないスポーツや芸術活動を、平日は毎日残業代なしで、そして土日も使って「教えなさい」と言われる。これが、いま新年度を迎える中学校や高校の先生たちが、直面している現状である。

■二重の苦しみ――強制的に顧問担当、種目は選べず

担当の運動部活動における競技経験の有無(日本体育協会による全国調査)
担当の運動部活動における競技経験の有無(日本体育協会による全国調査)

どんなものでも、前向きに取り組める先生ならばそれでよい。問題なのは、そうではない先生たちである。

そもそも部活動は、教員の本務ではない。教員の本務とは、授業である。他方で部活動は、文部科学省が定める学習指導要領では、生徒の自主的な活動と定められている。大雑把に表現するならば、生徒が自主的に取り組もうとするものを、先生が自主的に指導するというのが部活動の原理である[注1]。

だが、現実はそうなっていない。教員は、まず部活動の顧問を強制的に担当させられ(いわゆる「全員顧問制」)、さらにその上で、自分にまったく馴染みのないスポーツや芸術活動を割り当てられる可能性が大いにある。日本体育協会の運動部活動に関する調査では、中学校で52.1%、高校で45.0%の教員が、担当する部活動について競技の「経験なし」と回答している[注2]。教員は校長から、希望の部活動を事前に尋ねられはするものの、どうしてもミスマッチが生じてしまう。

■先生の嘆き

部活動を自動的に担当させられることにくわえて、その具体的な内容も選べない。これがすべて、「自主的」という名のもとに、まかり通っている。

こうした状況下で、いま先生たちの苦しみが、少しずつ声となってウェブ上にあられ始めている[注3]。

中学校教員4年目です。自分が中高生のときは文化部に所属していましたが、いまは、まったく経験も興味もない運動部の顧問です。しかも、その運動部には、私よりもずっと長く指導を続けてきた外部指導者がいるので、顧問である私は、ただ何時間も練習や試合の様子を見ているだけです。関心のないスポーツを眺めるだけで時間が流れていき、授業準備のための時間や、体を休めるための時間は奪われていきます。

生徒にとってはその外部指導者こそが指導者であるため、顧問である私の言うことは聞いてくれません。もはや、なめられているといった感じです。私はもう、部活動のなかでは、自分の存在意義を感じることもできず、本当に悲しいです。なのに、生徒が問題を起こすと、私の責任が問われます。心身の負担が増えていくばかりです。

未経験であるにもかかわらず、運動部の顧問を引き受けたことがあります。顧問が一人だったこともあって、ケガ防止の方法もわからず、心配が絶えませんでした。

部活動そのものは大事な実践だと思います。でも、そうであればこそ、専門の知識を持った指導者が、責任をもって指導するべきだと思います。教科指導こそが、専門職としての活躍の場であり、手を抜きたくないと思うのですが、もはや体力的に無理な段階にきています。

■先生は万能ではない

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まったく自分の馴染みのない競技種目を指導せねばならず、そのことで、生徒からの信頼は得られず、事故防止の方法もわからず、時間だけが過ぎ、授業準備もままならない。

もちろん、そうした困難な状況を乗り越えて成長していく先生もいる。それはそれでよい。くり返すが、本務でもない部活動で追い詰められていく先生がいること、ここに私たちは注目しなければならない。

この新年度が始まる時期、未経験であることがとりわけ深刻な状況をもたらすのは、異動があったときである。前任者がそのスポーツや芸術活動を得意とし、指導経験も豊富であった場合、その後を未経験の教員が引き継ぐというのは、後任者にとってあまりに厳しい。

顧問は異動で替わることがあったとしても、生徒はそのほとんどが3年間、同じ学校、同じ部活動に所属する。4月になってまったくの素人の教員が、指導に就くというのは、生徒にとっても教員にとっても、けっして好ましい状況ではない。

教員は、教科指導の専門家としてはトレーニングを受け、採用試験も突破している。だが、部活動については専門性がなくても、当たり前のように顧問の仕事が割り振られる。それを拒もうものなら、「教師失格」のレッテルが貼られる。

先生は、万能ではない。生徒の教育を改善したいと思うのであれば、私たちはその担い手である教員の負担を同時に考えていかなければならない。

注1

厳密には、生徒が自主的に活動するものに、教員が正規の職務としてかかわるという可能性は残されている。だがその場合には、勤務時間内(たとえば17時ちょうど)に部活動の指導を終えなければならない。なお、教員が残業してもよい事項は「超勤四項目」(生徒の実習/学校行事/職員会議/非常災害や生徒の緊急事態)のみであり、部活動はこれには含まれない。

注2

調査は、2014年1月から2月にかけて実施された。全国から中学校600校および高等学校400校が無作為抽出され、中学校の運動部顧問4,047名(回収率65.9%)、高校の運動部顧問4,542名(回収率73.1%)が回答した。当該競技種目の経験の有無については、年に数回しか行っていない場合や体育の授業でしか経験がない場合は「経験なし」に分類されている。

詳しくは、日本体育協会「学校運動部活動指導者の実態に関する調査報告書」を参照。

注3

ウェブ署名「部活がブラックすぎて倒れそう… 教師に部活の顧問をする・しないの選択権を下さい!」に寄せられた教員のコメントを参照した。コメントはウェブ上に公開されている情報であるものの、本記事に採録するにあたっては、個人の特定を避けるために、文意を損ねないかたちで先生の発言内容を適宜編集した。

本記事の冒頭ならびに本文中の写真は、「写真素材 足成」の画像を利用した。