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国葬儀の検証はなぜ非公開で行うのか?

西田亮介社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

政府、立法府双方で国葬儀の検証が始まった。他方、開催前には世論調査などでも文字通り世論を二分するかたちで関心が向けられた一方で、検証段階の現在ではすっかりその熱は冷めきったかのようだ。

筆者は11月14日の衆議院議院運営委員会国葬儀の検証等に関する各派代表者協議会で川上和久教授、宮間純一教授とともに意見陳述を行った。さすがにあれほど話題になっただけに、知人の記者などから取材連絡が来るのではないかと少々身構えたがこちらが拍子抜けするくらいに反応に乏しい。

検証協議会の議事は非公開とされる一方で、委員長は協議会開催後に記者へのブリーフィングを行い、また慣習的にもいろいろな報道上のアプローチがなされていると想像されるが、個人名と発言内容が部分的に紐付いた報道もなされている。

国葬のルール化困難 衆院検証で有識者指摘(時事通信)

https://news.yahoo.co.jp/articles/296caa05e58f3901a94763f0148fea6f6ee3636c

国葬検証協議会、有識者から聴取 「国会への事前説明不十分」の声も:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASQCG6613QCGUTFK00Z.html

三名の名前と発言の一部抜粋がテレビで報じられる様子https://twitter.com/suzuki_fumie/status/1592279315483611136

共産党の機関紙「しんぶん赤旗」電子版は、かなり詳細に宮間教授の陳述内容のみを伝聞ではなく直接引用で報じている。

「国葬」必要性に疑問/検証協議会 塩川氏に参考人陳述 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-11-17/2022111704_05_0.html

こうした状況において、政府、立法府の検証を非公開で実施する意味はあるだろうか? 一般に「非公開の検証」なるものが素直に受け入れられるとは考え難い。またつまみ食い的に報じられたり、様々な政治的立場から部分的な引用が流通してしまうのならば検証を非公開で実施する意味は乏しいのではないか。

同時期に各地で知事らの公費による国葬儀参列の差止めをもとめた住民監査請求が軒並み棄却されている。棄却の判断はやむをえないと考えるが、国葬や国葬儀に反対する立場の人たちからすれば、ますます検証に対する不信感も増すのではないか。筆者は通例の合同葬と異なった国葬儀にしたことで却って国民感情を刺激し、弔慰を積極的に表明したい人たちの弔慰表明の心理的負担感が増したと考えることから国葬儀開催の判断には反対だが、内閣府設置法に基づいて実施された国葬儀の政策過程は一定程度理解可能と考えている(詳細は下記エントリ参照のこと。なお国葬儀に先行した総理経験者の個人葬への自衛隊法に基づく自衛隊儀仗隊参加は国民の懸念や誤解を増進しかねないため反対)。不必要な社会の分断促進や、行政や政策過程への不信感増進は好ましくない。今後の検証で活かされることを期待したい。

国葬儀に関する所感と評価、課題(西田亮介)

https://news.yahoo.co.jp/byline/ryosukenishida/20221116-00324181

社会学者/日本大学危機管理学部教授、東京工業大学特任教授

博士(政策・メディア)。専門は社会学。慶應義塾大学総合政策学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科助教(有期・研究奨励Ⅱ)、独立行政法人中小企業基盤整備機構経営支援情報センターリサーチャー、立命館大学大学院特別招聘准教授、東京工業大学准教授等を経て2024年日本大学に着任。『メディアと自民党』『情報武装する政治』『コロナ危機の社会学』『ネット選挙』『無業社会』(工藤啓氏と共著)など著書多数。省庁、地方自治体、業界団体等で広報関係の有識者会議等を構成。偽情報対策や放送政策も詳しい。10年以上各種コメンテーターを務める。

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