新型コロナウイルス関連及びワクチン予約には様々なシステムが開発されています。これらは正確な感染状況の把握やスムーズなワクチン接種のために立て続けに開発されましたが、一方で、システムの乱立が問題視されています。実際に稼働上の問題も発生しています。

ワクチン接種「システムハラスメント」と現場から悲鳴 河野大臣VS厚労省の縦割り弊害〈AERA dot.〉

コロナ情報共有 システム乱立 ジーミス・ネシッド・ハーシス・ココア(読売新聞 読者会員限定)

「全然つながらない」東京都の医療従事者向けワクチン予約サイトにアクセス殺到、不安定に(ITmedia NEWS)

新型コロナウイルス関連のシステムの全体像はどうなっているのでしょうか?厚生労働省や政府CIOポータルに関連する資料が公表されているので、まとめてみました。

新型コロナ関連システムの全体像

複数のシステムが乱立している。
複数のシステムが乱立している。

▼ワクチン関係

V-SYS:ワクチン接種円滑化システム

VRS:ワクチン接種記録システム

▼災害時医療情報共有

EMIS:広域災害緊急医療情報システム

G-MIS:新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム

▼感染症の発生状況の把握

HER-SYS:新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム

NESID:感染症発症動向調査

COCOA:新型コロナウイルス接触確認アプリ

▼検疫

空港検疫業務システム

統合型入国者健康情報等管理システム

▼人材配置

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ワクチンの在庫割り当てと接種情報、連携しない2つのシステム

割り当てのための在庫情報と接種記録情報の2つのシステムがある。
割り当てのための在庫情報と接種記録情報の2つのシステムがある。

ワクチン関連には割り当てを管理するV-SYSと、接種記録を管理するVRSの2つシステムがあります。

ワクチンの入荷量はV-SYS(ワクチン接種円滑化システム)を介して、国、地方自治体、ワクチンメーカーが情報を共有し、各自治体へのワクチン割当量が決められます。

ワクチンを接種するために、各自治体は接種券を市民に配布します。その接種券番号はマイナンバーとともにVRS(ワクチン接種記録システム)に記録されます。ワクチン接種会場では、接種券番号を照会することでその人が何回目の接種か把握できます。たとえば、接種1回目と2回目の間に引っ越したとしても、その情報は自治体をまたがって共有されるのです。

一方で、接種券を発行するシステムは、各自治体が個別に開発をしています。別々のシステムになっているので、VRSとの連携はCSV形式のテキストファイルをアップロードする形で行われます。データの修正もCSVを使って行います。上記の東京都の接種の予約ができなかった件は、まさにこの自治体独自のシステム上で起きた問題です。

ワクチンの消費状況はV-SYSに登録し、新たなワクチンの割り当てを決めるための情報となります。VRSとV-SYSはシステム連携していないので、保健所の方がVRSの集計画面を見ながら、V-SYSに必要な情報を手で入力することになります(※1)。

感染者の情報はHER-SYSというシステムで一元管理されています。このシステムとVRSはシステム連携していません。したがって、ワクチンを打った人のうち、その後、どのぐらいの人が罹患したか(あるいは罹患しなかったか)は、VRS単体ではわかりません(※2)。

感染症の発生状況に関するシステムが2つ存在

感染症の状況の把握にはNESIDとHER-SYSの2つが存在
感染症の状況の把握にはNESIDとHER-SYSの2つが存在

新型コロナウイルス感染症は指定感染症ですので、患者を発見した場合、医師は発生届を出す必要があります(※3)。従来は発生届が出されると保健所でNESIDに入力していました(※4)。しかし、医療機関からの報告がFAXを介していたため、一度に大量の患者が発生するパンデミックにおいては、追いつかない可能性がありました。そこで、発生届を直接システムで提出できるHER-SYSが開発されました(※5)。

しかし、HER-SYSは新型コロナウイルスに特化しているため、それ以外の感染症のためにNESIDが必要です。また、新型コロナウイルスについても病原体サーベイランスのためにNESIDに情報を入力する必要があります(※6)。そのため、項目によっては二重で入力するなどの運用がされています。

医療資源の情報収集・提供に関するシステムが2つ存在

医療資源の情報収集・提供にはEMISとG-MISの2つのシステムが存在
医療資源の情報収集・提供にはEMISとG-MISの2つのシステムが存在

新型コロナウイルスの脅威が急速に表面化した2020年2月頃、マスクや防護服が急速に不足する、という異常事態が発生しました。その後も、病院の稼働状況や医療スタッフの状況を迅速かつ正確に把握する必要がありました。そのため、それらの情報を一元して管理するG-MISが作られました。

災害時の医療リソース情報の集約という役割としては、従来からEMISというシステムがありました。しかし、これではマスクやゴーグルの備蓄状況など新型コロナウイルスで必要な情報を共有するのに不都合があったため、G-MISが新たに開発されました(※7)。

一方で、EMISでしか管理できない情報もあるため両者が併用されています。EMISとG-MISでは共通する必須入力項目が数多くあります。そのため、医療機関はEMISとG-MISの両方に同じ情報を入力しています。

誰がどのシステムを使うのか?

複数のシステムを用途によって複雑に使い分けている
複数のシステムを用途によって複雑に使い分けている

自治体や、医療機関・医師にとっては関与するシステムが多く、次々に新しいシステムがリリースされているため習得にも一苦労と思われます。また、これらを管轄している厚生労働省、政府CIO室なども開発・運用の負荷がかかっていると考えられます。

急速に拡大する感染症という脅威に対して、合理的かつ適切に対応するには、最新で正確な情報が求められます。したがって、近い将来、これらのシステムが相互に連携し、全体の把握と、個別の罹患者の回復状況や移動情報、医療機関の状況などが即時に正確に把握できるようになるのが理想といえるでしょう。

脚注

※1 VRSとV-SYSの連携は「現在 V-SYS とのシステム連携はない形」(政府CIOポータル)

※2 全体フローとワクチン接種記録システムのスコープ(政府CIOポータル)

※3 新型コロナウイルスの感染症指定と発生届について(厚生労働省)

※4 NESIDについての概要(厚生労働省)

※5 HER-SYSについて(厚生労働省)

※6 NESIDとの二重運用について(長崎県医師会)

※7 EMIS及びG-MISについて(厚生労働省)