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再度の偵察衛星発射失敗で金正恩総書記の権威失墜!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
前回に続き打ち上げに失敗した北朝鮮の軍事偵察衛星(労働新聞から)

 今朝発射された北朝鮮の軍事偵察衛星はまたもや失敗に終わった。

 北朝鮮の国営通信「朝鮮中央通信」の6時15分の報道によると、北朝鮮は今朝午前3時50分頃、平安北道鉄山郡の東倉里にある西海衛星発射場から軍事偵察衛星「万里鏡―1号」を新型衛星キャリア・ロケット「千里馬―1」に搭載して第2次打ち上げを断行したが、「3段の飛行中、非常爆発システムに誤りが発生して失敗した」とのことだ。

 北朝鮮は失敗の原因を早期に解明し、「10月に再度挑戦する」とのことだが、これで前回(5月31日)に続き、連続失敗したことになる。

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記は前回の失敗について6月中旬に開いた労働党中央委員会総会で「最も重大な欠点は宇宙開発部門で重大な戦略的事業である軍事偵察衛星の打ち上げに失敗したことである」と述べ、失敗の原因について「衛星打ち上げの準備を、責任を持って推進した活動家らの無責任にある」と国家宇宙開発局幹部らを叱責していた。

 そのうえで、「当該部門の活動家と科学者が重大な使命感を肝に銘じて今回の打ち上げの失敗の原因と教訓を徹底的に分析し、早期に軍事偵察衛星を成功裏に打ち上げることで、人民軍の偵察情報能力を向上させ、宇宙開発分野でさらなる飛躍的発展を遂げるための近道をもたらせ」と、「今度こそ成功させろ」とハッパを掛けていた。それだけに、金総書記の落胆と失望は想像するに余りある。再度の失敗で威信が失墜したからだ。

 また、このタイミングで発射したのは来月9日の建国75周年に向けての国威発揚と、21日から始まった米韓合同軍事演習への対抗という政治・軍事的な狙いがあったはずだ。その目論見が外れてしまっただけにこれまた面目丸つぶれで、格好がつかなくなってしまった。

 台風被害により堤防が決壊し、水田が冠水したとの報告を受け、激怒し、党序列NO.2の金徳訓(キム・ドククン)総理を叱責したばかりの金総書記はフラストレーションが溜まる一方だ。

 そもそも5月31日の失敗から約3か月(85日目)で再チャレンジすること自体所詮、無理があったものとみられる。ちなみに2012年4月に通信衛星「光明星3号」の発射に失敗した時は再発射まで8カ月間を要していた。その結果、この年の12月12日に再発射し、成功させていた。

 国家宇宙開発局は「当該事故の原因が段階別エンジンの信頼性とシステム上の大きな問題ではない」と説明し、「原因を徹底的に究明して対策を立てた後、来る10月に第3次偵察衛星の打ち上げを断行する」と表明していたが、そのとおりならば、今度は約2か月で3度目の挑戦ということになる。

 それもこれも、金総書記が5月16日に偵察衛星発射準備委員会を訪れた際「軍事偵察衛星を成功裏に打ち上げるのは現在の国家の安全環境から出発した差し迫った要求である」と、党の方針を打ち出していることにある。それが担当者らには相当なプレッシャーになっていることは言うまでもない。

 それにしても、午前3時台の発射には意表を突かれた。

 北朝鮮の弾道ミサイルが深夜から早朝にかけて発射されたケースは過去に何度もあった。

 例えば、直近では今年1月1日の短距離弾道ミサイルは午前2時50分に発射されているし、先月18日に発射された戦術誘導ミサイルは午前4時頃に発射されている。しかし、「衛星」となると、深夜の発射は過去に例がない。

 過去7回のうち、1998年8月31日に発射された1回目だけが、午後に発射されているが、それ以外は午前中、それも9時台が多く、前回の6時27分がこれまで最も速い発射時間帯だった。それだけにJアラートで叩き起こされた沖縄県民はさぞかし驚いたことであろう。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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