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韓国で「粛清説」が流れていた3人の党幹部の健在が確認!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
左から朴正天元帥、金才龍党政治局員兼書記、崔輝元政治局員

 お盆休みの間、北朝鮮が公開した朝鮮戦争「戦勝(休戦)70周年」記念軍事パレードの映像と70周年記念報告大会の映像及び一連の報道を詳細にチェックしてみた。

 韓国で「失脚した」とか「粛清された」とか、あるいは「処刑された」と報道されていた党幹部や軍幹部を確認するためである。

 直近では昨年まで軍No.1の地位にあった朴正天(パク・ジョンチョン)元帥の消息が最大の関心事であった。

 朴元帥は昨年12月末に開催された労働党中央委員会第8期第6次総会で党最高幹部のポストである党政治局常務委員、党軍事委員会副委員長、党書記の地位をすべて解かれたことにより韓国では「失脚、粛清されたのでは」との情報が駆け巡った。

 「失脚・粛清説」の根拠とされたのが昨年12月26日の無人機(ドローン)による韓国領空侵入・偵察作戦で韓国の反撃(韓国の無人機3機が北朝鮮領空に侵入)を許してしまったことへの「責任を取らされたのでは」と、韓国のメディアは推測していた。

 いずれにせよ、解任される約2週間前の12月17日の金正日(キム・ジョンイル)前総書記の命日には政治局常務委員の金徳訓(キム・ドクフン)首相や李炳哲(リ・ビョンチョル)党軍事委員会副委員長(元帥)らと共に錦繍山太陽宮殿を参拝していただけに病気が原因でないのは明らかだった。

 しかし、朴元帥は8月3日から5日に行われた金正恩(キム・ジョンウン)総書記の軍需工場視察に同行し、その「健在」が確認された。但し、趙甬元(チョ・ヨンウォン)政治局常務委員や趙春龍(チョ・チュンヨン)政治局員候補(党軍需工業部長)、金与正(キム・ヨジョン)党副部長を含む5人の同行者では最後に名前が呼ばれていたことからこの時点では地位が降格していたのは明らかだ。

 ちなみに2021年6月の党政治局拡大会議で当時軍No.1だった李炳哲元帥が金総書記から「責任幹部たちが党の重要決定の執行を怠け、国家と人民の安全に大きな危機をもたらす重大事件を発生させた」と叱責され、政治局常務委員の地位を一時的に剥奪された際には当時軍NO.2だった朴元帥(当時軍総参謀総長)も次帥に格下げされる処分を受けていた。

 表舞台に再登場した朴正天氏は8月9日に党本部庁舎で開かれた党中央軍事委員会第8期第7次拡大会議では当初20人が着席していたテーブルの最後方の末席に軍事委員としてではなく、オブザーバーとして座っていたが、途中で軍総参謀長に起用された李永吉(リ・ヨンギル)党軍事委員会副委員長の隣に席を移動していたことから議決権を有する軍事委員に再選出されたようだ。ちなみに李軍総参謀長の隣に座っていた軍事委員でもある党序列NO.3の趙甬元政治局常務委員は途中で姿を消していたことから朴氏と入れ替わったものと推測される。

 朴氏は台風6号の被害を受けた江原道安辺郡梧渓里一帯の視察(8月13日)にも金徳訓、趙甬元政治局員らと共に金総書記に随行していたが、党農業部長の李哲萬(リ・チョルマン)、副総理兼農業相の朱哲圭(チュ・チョルギュ)ら政治局員候補よりも先に名前が呼ばれていたことから政治局員、もしくは政治局常務委員にカムバックした可能性も考えられる。

 党序列7位の金才龍(キム・ジェリョン)政治局員兼書記も6月中旬に開かれた党中央委員会第8期第8次総会に姿を見せていなかったことから韓国のメディアで「失脚」を取り沙汰された一人である。

 総会の主席壇には金総書記を真ん中に向かって左から李炳哲、趙甬元、金徳訓、崔龍海(チェ・リョンヘ)の4人の政治局常務委員が座り、上段には政治局員らが着席していたが、金才龍政治局委員の姿は見えなかった。

 金政治局員は党員の規律を担当する党書記でもあり、党中央検査委員会委員長を兼務している。

 この日の総会では党の規律を強化するための重要政策が5番目の議題に挙がっていたことや中央裁判所所長の崔根英(チェ・グンヨン)氏が新たに党中央検査委員に選出されたことでもしかすると、金氏は職務怠慢を理由に解任されたのでは、と韓国では取り沙汰されていた。

 当時、韓国の北朝鮮担当部署である統一部の担当者はこの件について「金才龍党規律書記は総会で識別できなかったが、動静については現在確認中である」と韓国メディアの問い合わせに答えていた。

 ところが、金才龍氏も7月27日の「戦勝記念70周年」関連行事には出席しており、金正恩総書記の軍需工場視察にも同行していた

 最後にもう一人、その存在が確認された人物がいる。崔輝(チェ・フィ)元政治局員兼党部長(文化担当)である。

 崔氏は韓国では2018年の韓国・平昌五輪の開会式に出席した金与正副部長の随行者として知られているが、2020年1月に開催された党第8回大会で政治局員を解任されて以来姿を消していた。

 当時、韓国の政府当局者は「崔氏は前年の9月に咸鏡道で発生した水害被害の際に組織された第1首都党員師団を率いて2か月間、復旧に取り組んだが、成果が上がらなかったことから責任を取らされ、処刑されたとの噂もあるが、現在確認中である」とコメントしていた。

 一部の韓国のメディアは金与正副部長に睨まれ、朴泰成(パク・テソン)政治局員兼党書記(宣伝担当)同様に追い落とされ、「処刑された」と報道していたが、朴泰成政治局員はその後、健在が確認され、現在も政治局員として表舞台に姿を現している。

 崔氏もまた処刑されてはおらず、7月27日に開かれた70周年記念報告大会の映像を見ると、白髪の金永南(キム・ヨンナム)元政治局常務委員(最高人民会議常任委員長)ら元老らが座っている一般席の最前列に引退した崔富一(チェ・ブイル)元人民保安相の隣に座っていた。

 北朝鮮の主要幹部は一般の人事異動であれ、病気であれ、定年退職であれ、何であれ、公式の場に長期間姿を現していなければ、「粛清された」「処刑された」との観測、憶測記事が韓国から発信されるのが常だ。

 情報閉鎖国の宿命と言えば、それまでだが、北朝鮮情報のスクープ合戦を演じている韓国メディアにとって何よりも求められるのは真偽の確認である。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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