Yahoo!ニュース

サリバン米大統領補佐官は北朝鮮の7度目の核実験を毎度憂慮しているが、「いつか」がわからない!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮の豊渓里にある核実験場(「ノース38」から筆者キャプチャー)

 昨日(16日)、ジェイク・サリバン大統領補佐官は米CBSテレビのニュース番組に出演し、「しばしば我々は北朝鮮による7度目の核実験を憂慮してきたが、今でも依然として憂慮している」と述べたうえで「現在までいかなる兆候も見られないが、北朝鮮がICBMの力量開発のため追加の試験をしたとしても驚かない」と答えていた。

 韓国の「聯合ニュース」や「SBS」など一部メディアは「米安保補佐官が『北の7回目の核実験を憂慮‥いつあっても驚かない』」との見出しを掲げて、「サリバン発言」を速報で伝えていたが、それ以外の主要メディアはスルーしていた。オオカミ少年ではないが、「ある、ある」又は「今度こそは」と言われても実際には起きていないからである。

 サリバン大統領補佐官のこの種の発言は昨年から継続して行われている。

 昨年春には「バイデン大統領の日韓歴訪(5月20―24日)時に行うかもしれない」と「予告」していた。

 当時、大統領補佐官の発言を根拠に北朝鮮の7度目の核実験を予言していた米戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ副所長ら日米韓の多くの専門家はこれが外れると、今度は「米国のメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日、5月30日)の連休中に核実験を強行する可能性が高い」と、核実験の時期の予測の軌道修正を図ったが、的外れに終わった。

 韓国の情報機関「国家国情院」(国情院)も同様で、再三にわたって「予言」しているが、どれもこれも不発に終わっている。

 例えば、韓国の聯合通信は昨年3月27日に「韓国情報当局が4月中旬にも7回目となる核実験が可能と判断していることがわかった」と伝えていた。「4月有力説」の根拠は北朝鮮が15日に金日成(キム・イルソン)主席生誕110周年、25日に人民革命軍創建90周年を迎えるからだった。

 国情院はこの年の9月28日にも非公開で開かれた国会情報委員会で「中国共産党大会の終了(10月25日)後に行う可能性がある」と予測し、その時期が過ぎると、今度は「米中間選挙日の11月8日までに行われる可能性がある」(10月26日)と修正したものの結果として何度も予想しては外していた。

 筆者も正直、昨年と今年、何度か時期を予測したが、どれもこれも見当違いに終わった。昨日も某テレビ番組に「米国が今月末に42年ぶりに核兵器搭載の戦略核潜水艦(SSBN)を韓国に派遣し、また来月8月に恒例の米韓合同軍事演習を大規模に実施すれば、北朝鮮は対抗措置として7度目の核実験に踏み切るかもしれない」とコメントを寄せたが、今度も外れるかもしれない。

 筆者を含む専門家の予測は米韓の当局者もしくは米CIAやNSPの分析に基づいているケースが多いからだ。それだけに世界最高の情報収集能力を誇示する米国や敵国である北朝鮮を間近で常時偵察、監視している韓国の情報がいい加減だと、正直返す言葉がない。

 北朝鮮は2017年9月3日を最後に6年近くにわたって核実験を実施していない。北朝鮮は2006年10月9日の初の核実験からこれまで計6回核実験を実施しているが、1回目から2回目(2009年5月25日)までは2年7か月、2回目から3回目(2013年2月12日)までは3年9か月、3回目から4回目(2016年1月6日)までは2年11か月を要していた。また、5回目は8か月後の2016年9月9日に、また6回目は1年後の2017年9月3日に行っている。

 空白期間は最長でも3年9か月であるのに6年近く経っても7度目の核実験に踏み切らないのは北朝鮮が2018年4月に2か月後の史上初の米朝首脳会談を前に労働党中央委員会第7期第3次総会を開き、「我々にはいかなる核実験、中・長距離ミサイル、ICBM発射も必要なくなった。北部核実験場も使命を終えた」と宣言し、1か月後の5月に核実験場を爆破したことが一つの要因となっている。

 しかし、2019年2月にハノイで開かれた2度目の米朝首脳会談が決裂し、加えてこの年の10月にストックホルムで行われた3度目の米朝首脳会談開催に向けての最後の米朝実務協議も成果なく終わると、状況が一変した。

 金正恩総書記は2019年12月に党中央委員会第7期第5次総会を開き、「核兵器とICBM実験発射中断など我々が取っていた非核化措置をもはや継続する理由がなくなった」と、核開発の再開を宣言し、2年後の2021年1月に開催された労働党第8回党大会で北朝鮮は「国防科学発展及び兵器システム開発5か年計画」を発表し、核兵器の小型化と中大型核弾頭の生産に踏み切ることを宣言した。

 核開発の再開宣言から3年7か月、核兵器の小型化と中大型核弾頭の生産を含む兵器システム開発5か年計画が提示されてからすでに2年6か月が経過している。一旦は爆破された咸鏡北道吉州郡豊渓里の核実験場も昨年春には修復工事が終わっているので北朝鮮がその気になれば、いつでも核実験を実施できる状況にあることは疑いの余地もない。

 問題はその時期だ。

 こればかりは第3者には予測できない。大気中の放射性物質を採取する特殊偵察機「WC135」や電子偵察機「RC135」(「コブラボール」)を頻繁に飛ばしている米国もお手上げの状態である。当の北朝鮮以外のどの国も確実に言い当てることができないのが実情である。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事