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「北朝鮮の潜水艦を追え!」 日米韓が5年ぶりに「対潜水艦合同訓練」 北朝鮮の「対抗措置」はあるのか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
韓国の駆逐艦「文武大王艦」(韓国海軍HPから)

 米韓両国は4月26日から29日まで米原子力空母「ロナルド・レーガン」を動員し、海上合同演習を実施したのに続き、今日(30日)は日本も加わった日米韓3か国による合同対潜水艦戦演習を日本海で実施する。

 この演習は米朝一触即発の状況にあった2017年4月に初めて実施されたが、2018年に米朝が対話ムードに入ったことで中断していた。従って、実に5年ぶりの対潜水艦訓練の実施となる。

 韓国国防部は昨日(29日)、演習は北朝鮮の核戦力法制化や相次ぐ弾道ミサイルの発射など核・ミサイルの脅威が高まっていることから「潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)への対応能力を強化することに目的がある」と説明していた。

 演習には韓国から4400トン級の韓国型駆逐艦「文武大王艦」が、米国からは10万3000トン級の原子力空母「ロナルド・レーガン」と9460トン級の巡洋艦「チャンセラーズビル」を含め駆逐艦、潜水艦など5隻が動員される。日本からは5100トン級の護衛艦「あさひ」が参加する。

 演習の指揮はマイケル・ドネリー第5空母強襲団長(准将)が執り、米原子力潜水艦をSLBMを搭載した北朝鮮の潜水艦と仮定し、3か国が共同で探索、識別、追跡しながら関連情報を相互交換することにしている。

 韓国は3カ国の対潜水艦作戦能力が向上すれば、「北朝鮮のいかなる挑発をも圧倒的、かつ決定的に対応し、無力化することができる」(国防部)と国民に説明している。

 北朝鮮が反発するのは必至だ。

 北朝鮮は米韓海上合同演習が始まる前日(25日)に平安北道・泰川から短距離弾道ミサイルを1発、演習期間中の28日にも平壌市・順安から2発、そして演習最終日の29日も平安南道・順川から発発射し、いずれも北朝鮮の内陸を横断し、日本海に着弾していた。

 北朝鮮が米韓合同軍事演習中にミサイルを発射するのは異例で、まして原子力空母が韓国沖に入港し、演習を展開している最中に発射されたのは初めてのことである。それも29日のミサイルはいずれも夜9時頃に発射されていた。

 北朝鮮のミサイルは通常、早朝もしくは午前中に発射される。午後に発射される場合もあるが、夜7時以降の発射となると、2014年7月27日午後9時40分に黄海南道・長山串から発射された弾道ミサイルと2016年4月30日午後7時26分に発射された中距離弾道ミサイル「ムスダン」、そして2017年5月21日午後11時41分に慈江道・舞坪里から発射された準ICBM「火星14」の3件しかない。

 北朝鮮が25日に発射したミサイル(高度60km、飛距離650km)は方向を変えれば、「ロナルド・レーガン」が入港している釜山港を打撃することができる能力を見せつけたことになる。

 南北の海軍力は艦艇の数や装備の面では韓国海軍が圧倒的に優勢である。そのことは海の軍事境界線と称されるNLL(北方限界線)付近の黄海で繰り広げられた過去3回の海戦(1999年6月、2002年6月、2009年11月)で北朝鮮の被害の方がいずれも甚大だったことからも立証済だ。

 しかし、こと潜水艦に限っては北朝鮮の戦力が韓国のそれを上回っている。北朝鮮の潜水艦・潜水艇保有数は78隻で、数の上では世界的レベルにある。

 韓国海軍は北朝鮮の潜水艦について「性能は我々の潜水艦のほうが良い。潜水艦に備えられた各種武器体系も上だ。何よりもソーダー(SODAR)の性能が違う。我々の潜水艦はほとんど音を出さない。北朝鮮のロメオ級潜水艦はディーゼルの旧式で、一日一回は水面に浮上し、バッテリーを充電しなければならない。潜水艦が水面に出てくれば、P-3Cのような対潜哨戒機で直ぐに捕捉し、魚雷攻撃できる」と豪語しているが、2010年3月に韓国海軍の哨戒艦「天安」(1220トン=乗員104名)が北朝鮮の潜水艦による魚雷攻撃で撃沈されたことは周知の事実である。接近されていることも、狙われていることも気付かず一発で海底に沈められた。

 北朝鮮の潜水艦侵入を探知できなかった典型的なケースとして古くは1996年に起きた北朝鮮の潜水艦浸透事件がある。

 この事件は筆者も当時、現地で取材したことから鮮明に覚えているが、北朝鮮のサメ級潜水艦が東海岸からNLLを越え韓国の江原道・江陵に浸透したのが9月14日。折しも9月16日~18日まで韓国海軍の海上機動訓練が行われ、駆逐艦、戦闘機、哨戒艦の他、潜水艦の探知を主な任務とするP3C哨戒機とリンクスヘリ(LYNX)も動員され、対潜水艦訓練が行われていた。ところが、韓国領海に浸透してから4日目の18日に北朝鮮の潜水艦は座礁したが、発見したのは韓国軍の最先端探知機ではなく、海岸沿いを走行していたドライバーだった。

 水際で防げなかったため韓国軍は上陸した工作員を含む26人を捜索・掃討するため潜水艦が発見された9月18日から11月7日までの50日間にわたって大規模掃討作戦(11人自決、13人射殺、1人生け捕り、1人逃亡)を山中で展開せざるを得なかった。この作戦に動員された韓国軍兵力はなんと陸海空合わせて6万人に及んだ。

 記憶に新しいのは、非武装地帯で地雷事件が起き、南北が一触即発の状態だった2015年8月に北朝鮮の潜水艦約50隻がほぼ同時に密かに出港、潜航したことである。また、軍事的緊張が高まっていた2017年8月も7~8隻が新浦の東海基地から同時に消え、韓国海軍が振り回されたことがあった。

 北朝鮮が米韓の合同海上演習を意に介さず、25日、28日、29日とミサイルを連射していることから今回の日米韓の「対潜水艦合同訓練」を座視することはなさそうだ。北朝鮮の動向に要注意だ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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