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2年9か月ぶりの「日韓首脳会談」を韓国メディアはどのように速報したのか!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
岸田文雄首相と尹錫悦大統領(岸田首相と尹大統領のHPから筆者キャプチャー)

 韓国大統領室がまだ正式に決まっていないのに「韓日両国は首脳会談で合意した」と、15日にいち早く発表したことに日本が反発していたことから一時は開催が危ぶまれていた国連を舞台にした岸田文雄首相と尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の首脳会談が実現した。日韓首脳会談は文在寅(ムン・ジェイン)大統領と安倍晋三首相が会談した2019年12月以来となる。

 会談そのものについて大統領室は「目に見える成果を出すための第一歩を踏み出した」と評価し、「韓日間には様々な対立があるが、両首脳が会って、解決に向けた第一歩を踏み出したことに大きな意味がある」と自画自賛していた。

 日本政府も日韓両首脳が徴用工問題の懸案解決に向け、外交当局の間で協議を加速化させることで合意したことや拉致問題や核問題を巡る北朝鮮への対応で連携を確認したことなどをどうやら「一定の成果」としているようだ。

 では、韓国のメディアは2年9か月ぶりの日韓首脳会談を一体、どう報じたのだろうか?

 尹大統領が日韓関係修復に意欲を示していたこともあってテレビも新聞の電子版もニューヨークでの首脳会談を速報で伝えたが、会談が直前まで伏せられていたこと、会談が日本が指定した場所で行われたこと、韓国随行記者団が遠ざけられていたこと、さらに会談形式に関する双方の発表が一致しなかったことなどを主に取り上げていた。

 首脳会談は日本の国連代表部が入っている建物で現地時間21日12時23分(日本時間22日深夜1時23分)から30分間、行われたが、韓国側は会談直前までノーコメントを通していた。

 会談は最後まで公式発表されず、完全に非公開で行われ、従って冒頭発言も公開されることはなかった。そのため韓国取材団は撮影も、写真も取ることができず、会談終了後のメディアへの発表も韓国よりも日本のほうが早かった。会談に関する韓国大統領室のブリーフィングでは元徴用工問題については全く触れられてなかった。

 テレビ媒体では「YTN」が「尹―岸田、30分略式会談・・・『可視的成果の第一歩』」「KBS」が「韓日首脳会談開催・・・『懸案を解決し、関係改善で共感』」「聯合ニュースTV」が「陣痛の末、ニューヨークで韓日会談・・・『関係改善で共感』」との見出しを掲げ、速報を流していたが、「KBS」は「具体的な合意はなかったが、大統領室側は両首脳が会い、解決に向け一歩歩んだと説明していた」と、客観報道に徹していた。

 この他にも「MBC」が「再び向かい合って座った韓日・・・『関係改善で共感』」「NBM」が「2年9か月ぶりに韓日首脳会談開催盛事・・・『葛藤解決のための第一歩』」のヘッディングを掲げ、現地から特派員のレポートを伝えていたが、「MBC」は「当初、我が政府の性急な会談開催発表に日本側が不快感を示したことや過去史問題に関する解決負担などで大統領室は会談に関する言及に慎重だった。従って、尹大統領が岸田首相のいる建物に入る姿も、会談を終えて出てくる姿も日本の記者だけが取材できる状況となった」と、韓国政府の過剰な対応について報じていた。「チャンネルA」にいたっては「韓日首脳 30分略式会談・・・尹が岸田行事ビルに赴いて」のタイトルを掲げ、会談の舞台裏を伝えていた。

 新聞媒体では中立系の「国民日報」が「同床異夢・・・韓国『略式首脳会談』、日本『会談ではなく懇談』」の表題を掲げ、「会談形式をめぐる両政府の対応は異なっていた。日本政府は『懇談』と規定したが、韓国政府は『略式会談』という立場を明らかにしていた」と書き、「韓国日報」も同様に「韓日首脳会談を日本は『懇談』と表現し、韓国は『略式会談』」と、会談形式を巡る日韓の発表の食い違いを見出しに使っていた。

 政権寄りの「朝鮮日報」は「尹・岸田30分会談…『両国関係改善の必要性で共感、今後も疎通を』」の政権に好意的な見出しを掲げ、「この日の首脳会談は陣痛の末、電撃的に実現した。会談情報も始まってから2分後に大統領室の公示で知らされた」と、会談実現までの尹政権の「苦労」を報じていた。

 朝鮮日報と並ぶ大手保守紙「東亜日報」は「尹―岸田首脳会談・・・『韓日関係改善で共感』」というタイトルで「会談直前まで両国が神経戦を演じ、会談開催そのものが不透明だった状況が示しているように強制徴用問題の具体的解決策に関する双方の意見の相違は相変わらずだ。首脳会談を行ったからといっても実質的に解決するまでには越えなければならない難関が多いという分析が支配的だ」と伝え、尹政権に批判的な「京郷新聞」は「陣痛の末、韓日30分『略式首脳会談』・・・何の成果なく終わった」との見出しに表れているように「核心的争点となっている元徴用王問題など懸案に関しては可視的な成果はなかった」と報じていた。

 経済紙では「ソウル経済」(「岸田行事ビルを訪れた尹・・・交渉直前までかん口『30分会談』」)の見出しの記事が印象的で、同紙は「会談は尹大統領が岸田総理が出席していた包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズの行事が行われている場所で行われた。この建物は尹大統領の宿舎から徒歩11分の距離にある。大統領室関係者は『尹大統領が岸田総理のいる場所を訪れ、会談したということか』との質問に『国連総会開催中はニューヨークではいろいろな行事が行われている。両首脳が共に行ける場所としてそのうちの一つを選択したということで岸田首相がいる場所に尹大統領が訪れたということではない』と説明していた」と報じていた。

(参考資料:日韓首脳会談は開催?それとも見送り? 「合意した」の韓国に「合意していない」の日本!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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