北朝鮮が5月12日に労働党政治局会議を開き、「ステルスオミクロン」と呼ばれる「BA.2」系の感染者を確認して以来、新型コロナウイルスの感染症状とみられる「原因不明の発熱者」が爆発的に急増している。

 北朝鮮の国家非常防疫司令部の発表によると、全国一日の「発熱者」は12日の1万8000人から17万4440人(13日)→29万6180人(14日)→39万2920人(15日)→26万910人(16日)と推移し、累積で148万306人に達している。北朝鮮の人口(約2500万人)の16人に1人が4月末からまだ1か月もしない間に感染したことになる。

 意外なのは死亡者が極めて少ないことだ。北朝鮮の公式統計では6人(12日)→21人(13日)→15人(14日)→8人(15日)→6人(16日)と、合計でまだ56人しか確認されていない。

 日本の一日の過去最多感染者は2月4日の10万2333人であるが、この時の死亡者は117人である。また、韓国の一日の最多は3月15日の40万694人だが、164人の死者が確認されている。日本よりも医療システムが脆弱で、世界食糧計画など国連の人道機関の統計では全人口の約4割は栄養失調、即ち免疫力が落ちている状況下で日韓よりも死亡者がはるかに少ないというのは俄かに信じ難い。

 政治局会議を主宰した金正恩(キム・ジョンウン)総書記が「2020年2月から今日に至る2年3カ月にわたってしっかり守ってきた我々の非常防疫戦線に破裂口が生じる国家最重大非常事件が発生した」と危機感を露わにした北朝鮮の感染状況への対応は徹底した隔離と封鎖が基本のようだ。また、治療法はどうやら解熱剤と漢方薬が主のようだ。現状では国際社会にワクチンを要請することはなさそうだ。

 韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は北朝鮮に医療支援を申し出ているが、台風被害の時も北に融和的な文在寅(ムン・ジェイン)進歩政権からさえ人道支援を受け取らなかった北朝鮮が北に強硬な保守政権から支援を受け取る可能性は極めて低い。

 仮に受け取れば、金政権は尹政権に頭が上がらなくなるだけでなく、国防5か年計画の目玉であるミサイルの発射も核実験もできなくなるからだ。北朝鮮が今後、仮にワクチン支援を求めるようなことがあれば、おそらく中国にSOSを発信するものとみられる。

 北朝鮮はすでに一昨年7月に軍事境界線を越え、開城市に帰郷した脱北者(越南逃亡者)がウイルス感染の疑いがあったことから開城市を約3週間にわたってロックダウン(封鎖)したが、今回は全国規模で爆発的に感染拡大したことから全国の道・市・郡とそれぞれの地域に封鎖を指示している。

 北朝鮮の感染者がさらに拡大し、これからピークを迎えるのか、それとも15日の39万2920人をピークに下がっていくのか、今週は「建国以来の大動乱」(金総書記)を占う山場となるであろう。

(北朝鮮が核よりも恐れる「コロナウイルス」がついに平壌に流入! 深刻な状況下で核実験はできるのか?)