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極超音速ミサイルに関する昨年と今年の北朝鮮報道のギャップ

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
昨年9月(左)と今年1月の極超音速ミサイル(労働新聞から)

 北朝鮮が昨日のミサイルの発射を公表した。

 小型弾道ミサイルではなく、昨年9月28日のミサイル同様に極超音速ミサイルだった。

参考資料:猛スピードの北朝鮮のミサイル開発 米中露に続く極超音速ミサイルの開発)

 今朝の労働新聞をみると、関連記事は昨年同様に2面に掲載されていた。扱いは小さかった。分量にすると、12行程度で、前回よりも2行程度短かった。

 昨年と今年の報道を比較してみると、幾つかの違いに気づく。

 例えば、昨年は「国防科学院が新たに開発した極超音速ミサイル『火星―8』型を試験発射」の見出しが掲げられていた。今回は「国防科学院が極超音速ミサイルを試射」となっていた。「火星―8」型という文言は消えていた。もしかすると、北朝鮮は他のミサイルを使って、極超音速ミサイルの性能をテストした可能性も考えられる。ちなみに「火星7」は日本に向けられた中距離弾道ミサイル「ノドン」(全長15.5m、搭載重量700kg、射程距離1千~1千3百km)を指す。

 また、前回は「慈江道龍林郡都陽里から発射された」と発射地点が具体的に明記されていたが、今回は発射場所については明らかにしていなかった

 立会人についても前回は政治局常務委員の朴正天(パク・ジョンチョン)前軍総参謀長が現場にいたが、今回は軍需工業部と国防科学部門の責任幹部だけだった

 さらに、今回は前回とは異なり以下のように飛距離が具体的に明記されていた

 「ミサイルは発射後、分離して極超音速滑空飛行戦闘部の飛行区間で初期発射方位角から目標方位角へ120キロメートルを側面機動して700キロメートルに設定された標的を誤差なく命中した」

 昨年の初の実験では「ミサイルの能動区間の飛行操縦性と安全性が再確認され、分離された極超音速滑空飛行戦闘部の誘導機動性と滑空飛行特性の技術的指標が確証された」とだけ伝えられていた。

 ちなみに昨年の飛距離について北朝鮮は公表しなかったものの日韓の防衛当局は高度30km、飛行距離200km(450kmの説も)、マッハ2~3と推定していた。

 さらに燃料のアンプル化についても前回の試験では「初めて導入されたアンプル化されたミサイル燃料系統とエンジンの安全性が確証された」とされていたが、今回の試験では「冬季の気候条件の下での燃料アンプル化系統に対する信頼性も検証されていた」と燃料アンプル化が一段と進んだことを示唆していた。燃料のアンプル化については昨年、朴正天書記が極超音速ミサイルの実戦配備の戦略的重要性と共にすべてのミサイル燃料系統のアンプル化が持つ軍事的意義について言及していた。

 前回は発射の意義を「党中央の特別な関心の中で最重大事業としてみなしてきたこの武器体系開発は国の自立的な尖端国防科学技術力を大いに高め、我が国の自衛的防衛力を百方強化するうえで戦略的な意義を持つ」と位置付けていたが、今回は「極超音速ミサイル部門での相次ぐ試験の成功は、第8回党大会が示した国家戦略武力の近代化課題を促し、5カ年計画の戦略武器部門の最優先5大課題の中の最も重要な中核課題を完遂するという戦略的意義を持つ」に置き換えていた。

 労働新聞によると、北朝鮮は今回、「試射を通じて多段階滑空跳躍飛行と強い側面機動を結合した極超音速滑空飛行戦闘部の制御性と安全性がはっきり誇示された」として党中央が試射の結果に大きな満足の意を表し、当該の国防科学研究部門に「熱烈な祝賀」を送っている。

 昨年の試験発射では「試験結果は目指していた全ての技術的指標が設計上の要求を満たしていた」と「成果」を誇っていたが、党中央からの「熱烈な祝賀」はなかった。

(参考資料:日本は「敵基地攻撃」が本当にできるのだろうか?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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