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猛スピードの北朝鮮のミサイル開発 米中露に続く極超音速ミサイルの開発

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮が試射した極超音速ミサイル「火星8号」(朝鮮中央テレビ)

 北朝鮮が昨日(9月28日)午前6時40分に中国に接した慈江道から試射したミサイルは極超音速ミサイルであった。

 北朝鮮のミサイルが高度30km、飛行距離200km、マッハ2~3だったことから韓国でも極超音速ミサイルの可能性が指摘されていたが、極超音速ミサイルは超音速エンジン技術と精密制御技術、超高音耐熱素材など先端航空技術が集約された武器体系である。

 マッハ5以上で飛ぶ極超音速ミサイルは亜音速(超音速)巡航ミサイルよりも高い技術を必要としており、コースを変えながら、対空レーダーをかいくぐって猛スピードで落下するためミサイル防衛体系(THAAD)では迎撃しにくいミサイルである。極超音速ミサイルを実験している国は米国、ロシア、中国の3か国だけである。

 試射を行った国防科学院はこのミサイルを「火星8号」と命名していた。ちなみに「火星7号」は日本に向けられた中距離弾道ミサイル「ノドン」(全長15.5m、搭載重量700kg、射程距離1千~1千3百km)を指す。

 また、北朝鮮の発表によって、発射場所が龍林郡無坪里(ムピョンリ)ではなく都陽里(トヤンリ)であったことも明らかとなった。

(参考資料:北朝鮮のミサイル発射地点は中朝国境付近!過去に2度弾道ミサイルが発射され、そのうちの1発はICBM級)

 今朝の朝鮮中央通信の報道によると、「火星8号」の試射は▲能動区間でミサイルの飛行制御性と安定性▲分離された極超音速滑空飛行戦闘部の誘導機動性と滑空飛行特性をはじめとする技術的指標の実証にあった。また、初めて取り入れたアンプル化されたミサイル燃料系統とエンジンの安定性を実証する実験でもあった。

 国防科学部門の指導幹部らと共に極超音速ミサイルの試射に立ち会った朴正天(パク・ジョンチョン)書記(前軍総参謀長)は全てのミサイル燃料系統のアンプル化が持つ軍事的意義について述べていたが、燃料がアンプル化されれば、それだけ液体燃料を注入する時間を短縮することができ、固形燃料と変わらないぐらい、常時迅速に発射が可能となる。

 朴書記は試射の結果「目的の全ての技術的指標が設計上の要求を満たした」として「これにより我が国の自衛的防衛力を全面的に強化する上で大きな戦略的意義を持つ」と強調していた。

 極超音速ミサイルの研究開発は今年1月に開催された労働党第8回大会が示した国防科学発展および兵器システム開発5カ年計画の戦略兵器部門の最優先5大課題の一つである。

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記は5年以内に極超音速ミサイルのほか、射程1万5千kmの長距離弾道ミサイルの命中精度の向上や中長距離巡航ミサイルと固体燃料式長距離弾道ミサイルの開発から無人攻撃兵器、軍事偵察衛星、新型原子力潜水艦の保有などを命じていた。

(参考資料:進水式目前の北朝鮮の新型潜水艦とSLBM(北極星1~5)の全容)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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