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韓国与野党大統領候補が竹島に上陸する可能性は!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
与党の李在明候補と野党の尹錫悦候補(李氏と尹氏のHPから筆者キャプチャー)

 来年3月9日が投票日の韓国大統領選挙は与党「共に民主党」候補の李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事と最大野党「国民の力」候補の尹錫悦(ユン・ソッキョル)前検察総長の2強対決の構図となっているが、世論調査での両者の支持率は拮抗している。

 選挙戦はまだ序盤だが、双方とも相手を引き離すだけの決め手を欠いているので一進一退のまま最終盤までもつれ込むようだ。それでも前例からすれば、投票日約3週間前、即ち選挙戦公示日の2月16日にはある程度形勢は見えてくるが、その場合、形勢不利な候補が起死回生の策を講じるかもしれない。もしかすると、「竹島(韓国名:独島)上陸」という「奥の手」を使う可能性も排除できない。というのも韓国の政治家にとって竹島上陸は支持率回復のカンフル剤になるからだ。

 直近の2人の大統領のケースをみると、朴槿恵(パク・クネ)前大統領は盧武鉉政権下の2005年10月5日に野党「ハンナラ党」代表として韓国軍のヘリコプターで竹島に上陸し、翌年5月の統一地方選挙で「ハンナラ党」を地滑り的勝利に導き、2007年大統領選の有力候補としての足場を築いていた。党の予備選でライバルの李明博(イ・ミョンパク)前ソウル市長に敗れはしたものの5年後の2012年に再度挑戦し、大統領の座を射止めている。

野党党首時代に竹島に上陸した朴槿恵前大統領(当時「ハンナラ党」HPから)
野党党首時代に竹島に上陸した朴槿恵前大統領(当時「ハンナラ党」HPから)

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2016年7月25日に竹島を電撃訪問し、その3か月後に大統領選への出馬を宣言し、翌年5月に行われた大統領選で当選している。

 文大統領は時の朴槿恵政権に制止されるのを警戒し、直前まで訪問を伏せていた。文大統領は上陸決行の理由について「以前から韓日歴史問題の象徴である独島の訪問を考えていた。『8.15(解放記念日)』を前に領土主権の重要性を強調したかった」と語っていた。

大統領になる前の年に竹島に上陸した文在寅大統領(独島警備隊提供)
大統領になる前の年に竹島に上陸した文在寅大統領(独島警備隊提供)

 李候補と尹候補のうち、竹島上陸の可能性があるのは客観的にみると、日本に厳しいスタンスを取っている李候補の方かもしれない。

 李候補は昨日、独島警備隊員らとオンラインで通話し、金昌龍(キム・チャンリョン)警察庁長官の先月16日の竹島上陸に日本政府が抗議したことについて「過度の内政干渉である」と批判し、「独島は領土守護の象徴なのでしっかり守ってもらいたい」と激励していた。

 但し、上陸については先週(12月5日)全羅北道を遊説した際に「独島訪問については正直悩んでいる。(上陸して)国際社会に我が領土であることを示すことは良いことだが、(日本との)紛争を激化させるだけで損するとの学説もある」と白紙状態であることを明かしていた。竹島上陸の代わりに警護隊員らとオンライン通話したならば、現段階では竹島上陸は考えていないかもしれない。

 李候補の「白紙状態」発言にネットユーザーからは「何か大胆なパフォーマンスが必要だ。独島訪問はグッドなイベントとなる。若者を一気に引き付けるだろう」「我々が実行支配している独島は国際紛争の対象ではない。独島問題は政治的外交的手段として使うのは稚拙で短見である。選挙戦略として独島に上陸するのは良くない」と様々な声が寄せられているが、興味深いのは「尹候補が訪問した場合、日本はどう反応するのだろう?」と、尹候補の竹島上陸を想定した書き込み等もあったことだ。

 尹候補は文政権を「韓日関係悪化の原因は文政権が反日を政治的に悪用してきたことにある」と批判している手前、竹島上陸の可能性は李候補に比べてかなり低いが、決してゼロとは言い切れない。

 韓日議員連盟朝鮮通信使委員会訪日団を引率して来日していた尹候補陣営の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)国会副議長が金警察庁長官の竹島上陸を批判したことが「日本寄りである」と世論の批判を浴びたことや日本が反対している朝鮮半島休戦宣言を尹候補も「時期尚早」と反対していることを与党が「親日」「売国」と攻撃していることから形勢不利となれば「親日」のレッテルを剥がすため、あるいは李候補の「反日」のお株を奪って竹島に電撃上陸するシナリオもあり得なくもない。

 大統領出馬宣言を抗日独立運動の象徴でもある「尹奉吉(ユン・ボンギル)義士記念館」で行っていることや「領土問題では堂々とした立場を堅持する」と言っていることからも「もしかしたら」との疑念は拭いきれない。

 竹島上陸は支持率が上がることはあっても決して下がることはない。また、保守派からも進歩派からも称賛されることはあっても批判されることはない。ちなみに李明博元大統領は慰安問題で善処しなかった野田政権への反発から在任中の2012年8月に竹島に奇襲上陸したが、これにより低迷していた支持率を10~15%も上昇させていた。

現職大統領として竹島に上陸した李明博元大統領(青瓦台写真記者団提供)
現職大統領として竹島に上陸した李明博元大統領(青瓦台写真記者団提供)

 韓国警察庁長官の竹島上陸に自民党は韓国に対する制裁措置など対抗措置を検討する作業チームを新たに設置したようだが、来年2月22日の「竹島の日」を機に日韓の間で領土問題が再燃すれば、苦戦を強いられている候補が大統領選投票日の2週間前となるこの日を選んで竹島上陸を決行するかもしれない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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