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政府は「友好ムード」演出も国民は冷やか! 中韓国交樹立30周年を前に「チャイナタウン建設計画」が頓挫

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
経済・人文社会研究会と中韓国交樹立30周年業務協約を交わした鄭外相(外交部HP)

 韓国と中国は来年8月に国交樹立30周年を迎える。

 両国は昨年11月に王毅外相が訪韓した際に康京和外相(当時)と会談を行い、関係発展のため両国の民間専門家が参加する「中韓関係未来委員会」の発足で合意している。委員会の設立は国交樹立30周年を機に今後30年の間に政治、経済、科学、文化、スポーツなどすべての分野で人的交流を深め、中韓関係を一段とグレードアップさせるのが狙いである。

 中国にとって韓国は中国の膨張を牽制する日米の中国包囲網を切り崩すうえで戦略的にも地政学的にも重要である。一方、韓国にとっても経済発展や北朝鮮との関係上、中国とは関係を密にしたい。同床異夢ではあるが、関係強化の必要性では両国の利害関係は一致している。

 現政権の思惑通り、中韓関係が今後30年の間に蜜月の関係に発展するかは定かではないが、国民レベルでは相思相愛とは程遠い状態にある。韓国の国民感情は必ずしも中国に好意的ではない。また、中国人も韓国人に対して良い感情を抱いているとは思えない。

 米国の世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」が昨年6月から8月に掛けて韓国を含むカナダ、フランス、ドイツ、豪州など14か国で実施した中国に対する意識調査によると、韓国人の4人のうち3人までが「中国は嫌い」と答えていた。韓国人の75%が中国に否定的な考えを持っていることがわかった。2015年の時の調査では37%だったわけだから、韓国人の「反中感情」は2倍も増えたことになる。特に30代から40代では「中国嫌い」はなんと82%に上っていた。

 また、今年4月に米国の民間研究機関「シカゴ国際問題協議会(CCGA)」が韓国人1千人を対象に行った世論調査では10人中8人が中国を「安保上の脅威」とみなしていた。「中国を安保上のパートナー」と答えたのは12%に過ぎなかった。

 高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)の配備で経済制裁を掛けられたことや高句麗や白頭山の帰属問題、離於島の領土問題、さらには韓国人の伝統民族衣装・チマチョゴリからキムチなどの食文化の起源を巡る対立などによる国民感情の悪化が背景にあるが、政治、外交、経済で関係が深まれば深まるほど、比例して国民感情が離れていく現象は江原道の「チャイナタウン建設」計画が県民の猛反発にあって中止に追い込まれたことにも表れている。

(参考資料:韓国が領土と歴史認識でもめているのは日本とだけではない。中国とも論争中!)

 平昌(ピョンチャン)で2018年2月に冬季五輪を成功させた江原道は中国からの資本投資と中国人観光客を誘致するため道内の春川にチャイナタウンを建設する計画を進めていた。この計画は中国が600億円を投資し、春川の120万平方メートルの土地に中国の伝統街、少林寺テーマパーク,民俗博物館、中国料理店が立ち並ぶ民俗村を建設するというもの。仁川にもチャイナタウンがあるが、規模はその10倍にあたる。

 与党「共に民主党」出身の崔文洵(チェ・ムンス)知事は土地賃貸料を含め多大な経済的効果が期待できると県民に理解を求めたが、道民らは反対の声を挙げ、3月29日には青瓦台(大統領府)のホームページにある国民請願プラットフォームには政府に撤回を求める請願まで載った。請願の趣旨を要約すると;

 「なぜ、韓国に小さな中国をつくるのか?ここは大韓民国である。国民になぜ我が領土で中国の文化体験をさせる必要があるのか?中国に韓国の土地を与えるべきではない。中国人観光客のためのホテル建設にも反対する。春川の中島先史遺跡は物凄い遺物が出土される世界最大規模の遺跡地である。こうした価値のある場所を外国人のために失うのはとても理解できない。我が歴史がそのまま埋もれてしまう結果を招きかねない」

 「国民は日増しに深まっている中国の東北工程(中国が推進している東北側の辺境地域の歴史と減少に関する研究プロジェクト)により自国の文化が失われると不安に思っている。最近も中国人作家の誤った発言が韓国の歴史を歪曲したことで(国民の)剥奪観と怒りを買ったばかりだ。キムチ、韓服など韓国の固有文化を略奪しようとする中国にこれからは立ち向かうべきだ。どのような状況であれ自国の安全と平和ほど重要なものはない。真に自分の国のことを思うならば、(政府は)国民に耳を傾けてもらいたい。国民は反対の声を挙げている」

 青瓦台への嘆願は1か月の間に20万件に達すれば、政府は回答しなければならないが、このチャイナタウン建設反対請願は4月28日迄の1か月間で3倍を超える670,780人に達した。日本政府の原発処理水海洋放出で4月19日から始まった請願(「政府は日本福島原発の放射能汚染水放流決定を強力に糾弾し、放流を阻止してもらいたい」)が12,971人しかならなかったことをみると、中国に対する国民の反感がいかに大きいかがわかる。

(参考資料:韓国、中国、北朝鮮が「慰安婦問題」で対日非難合唱!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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