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文在寅大統領が画策する日韓首脳会談 6月の英国「G7サミット」か、7月の東京五輪か!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
菅義偉首相と文在寅大統領(筆者キャプチャー)

 日米韓情報機関長会議に出席するため11日に来日した韓国の朴智元(パク・チウォン)国家情報院長はアブリル・ヘインズ米国家情報局(DNI)局長及び瀧沢裕昭内閣情報官との会議を前後して菅義偉首相と短時間ながら会談したと報道されていたが、韓国のメディアは面談日を12日と特定していた。

 官邸日誌をみると、この日、菅義偉首相と朴院長との面談の記述はない。官邸のスポークスマンでもある加藤勝信官房長官は13日、「情報部門の活動という性格上、具体的な活動内容に関してコメントは差し控える」と会談の有無を明らかにしなかった。当事者の菅首相自身も「昨日お会いしたかどうかも含めて控えたい」と言及を避けていた。しかし、その後に「海外情報機関とは様々なレベルで意見交換など協力をしている」と述べ、間接的な表現ながらも会ったことを暗に認めていた。

 朴智元院長は韓国ではリップサービス旺盛な政治家として知られている。昨年11月に文在寅大統領の特使として来日した時は日韓の懸案である徴用工問題から12月に韓国で予定されていた日中韓首脳会談に至るまで話し合ったとペラペラ話していたのに今回は口を閉じたままだ。帰国後の言動も全く伝わってこない。青瓦台を訪れ、文大統領に会って、報告したとの話も聞こえてこない。

 「菅・朴面談」に関してこれまで明らかにされた情報は以下4点である。

 ▲朴院長は席上、菅首相に日韓関係の正常化を求める文在寅大統領のメッセージを口頭で伝えた。

 ▲朴院長は菅首相に「韓日関係が今のままではダメだ」との趣旨の発言を行った。

 ▲菅首相は朴院長に「過去にとらわれずにうまくやってみよう」との趣旨の発言を行った。

 ▲会談の雰囲気は全般的に和やかだった。

 この他にも朴院長が元慰安婦問題や元徴用工問題で冷却化した日韓関係を正常化する必要性を説いたとか、菅首相が米国の対北朝鮮政策や北朝鮮非核化問題などにおいて日韓関係改善と日米韓3カ国共助が重要である旨を明らかにしたとか、その種の話が韓国の一部メディアで報じられているが、事実だとしてもどれもこれも外交儀礼的なやりとりで核心を突いたものではない。

 思い起こせば、朴院長は昨年11月8日にも来日し、菅首相と会談していたが、この時は文大統領のプランとして今年7月の東京五輪に金正恩総書記を招き、東京で日朝、米朝、さらには南北と日米による4者会談を提案していた。

(韓国情報機関トップの訪日は成功? 注目すべきは北朝鮮の反応!)

 文大統領は2018年2月に平昌冬季五輪開会式に金総書記の妹、与正党副部長を招き、それをきっかけに4月に南北首脳会談を、6月には米朝首脳会談を実現させていたことから柳の下に二匹目のドジョウではないが、韓国と同様の手法を取るよう日本に働きかけていた。

 北朝鮮が「コロナ」を理由に東京五輪不参加を表明した現状では北朝鮮絡みのプランは実現不可能となったが、それでも文大統領は韓国の一部で福島原発処理水の海洋放流問題で東京五輪ボイコットの動きがあろうが、東京五輪の開会式に出席する考えに変わりがないどころか、意欲を示している。

 朴院長は今回、「義兄弟」の間柄とされる二階自民党幹事長と約30分にわたって電話会談をした際、改めて東京五輪への支持を表明したと伝えられているが、「コロナ」の問題で内外から反対の声が上がり、開催が危惧されている最中の隣国の支援は菅政権にとっては心強い筈だ。

 日本も、韓国も下半期、即ちオリンピックとパラリンピックが終われば、選挙モードに入る。

 日本は都議選に自民党総裁選、そして総選挙が待ち受けている。韓国も9月から次期大統領候補の予備選に突入する。両政権とも国内問題に追われ、外交に専念できないばかりか、政権を支えている進歩・保守支持層を意識して柔軟な対応ができなくなる。

 こうした両国の事情から文在寅大統領が6月11~13日に英国で開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)の場か、もしくは7月23日からの東京五輪の場で日韓首脳会談を菅首相に働きかけているとしても不思議ではない。

 韓国はすでに元慰安婦や元徴用工の補償問題では韓国政府が負担し、日本の要求に応じる方針を内々に固めている。後は、元慰安婦ら被害者が再三にわたって日本政府に求めている「真心の謝罪」の確約を取り付けるだけである。

(韓国国会に再提出された「徴用工問題解決案」とその世論調査結果)

 朴院長は昨年も元慰安婦や元徴用工の解決のため1998年の小渕恵三・金大中宣言(日韓パートナシップ宣言)のような宣言を菅総理と文大統領との間で交わすことを提案していた。首脳会談を行った際に発表される日韓共同宣言に「真心の謝罪」を盛り込んでもらいたいというのが韓国側の願望である。

 「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ宣言」とも呼ばれている小渕―金大中両首脳による11項目から成る共同宣言の2項目目に「小渕元首相は今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。金大中大統領は、かかる小渕総理大臣の歴史認識の表明を真摯に受けとめ、これを評価すると同時に、両国が過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させるためにお互いに努力することが時代の要請である旨表明した」と記されている。

 外交儀礼上は、返書が慣例だが、菅首相から文大統領宛ての口頭メッセージがあったかどうかは明らかにされていない。

(韓国のメディアは日韓外相会談の結果をどう伝えたのか?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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