「原発処理水」海洋放出問題で文在寅政権を突き上げる韓国の保守野党

福島原発(提供:エアフォートサービス/アフロ)

 日本政府の福島第1原発の処理水海洋放出決定に隣国・韓国は国を挙げて反発しているが、中でもソウルと釜山の2大市長選挙に圧勝した勢いもあってか、野党「国民の力」が与党「共に民主党」以上に日本非難のオクターブをあげている。

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 菅政権が東京電力福島第1原発の汚染水を浄化した後の処理水の2年後の海洋放出を閣議決定したのが4月13日。日本政府の方針を予知していた韓国政府はすでにその前日には外務省を通じて「韓国国民の安全と周辺環境に直接・間接的な影響を及ぼし得るという点から(日本の決定を)受け入れ難い」と憂慮を表明していた。

 閣議決定後の翌日には文在寅大統領自らが信任状捧呈のために青瓦台を訪れた相星孝一駐韓日本大使に「このことはどうしても言わざるを得ない」と断ったうえで「韓国側の懸念を本国に伝えて欲しい」とやんわりと申し入れた。大統領スポークスマンは「文大統領が信任状を奉呈する場でこうした発言をすること自体、極めて珍しいこと」とわざわざブリーフィングで強調していた。「言うべきことはちゃんと言っている」との言い訳のように聞こえなくもない。

 文大統領はこれに先駆けて関係部署に対して国際海洋法裁判所に提訴する案を前向きに検討せよと指示していた。文大統領がやったことはこれだけである。これ以上でも、以下でもない。しかし、文政権の対応が生ぬるいと見たのか、野党はこぞって政府の対応を批判している。中でも最大保守野党の「国民の力」の政府批判は辛辣である。

(参考資料:日本に段々と擦り寄る韓国の「徴用工解決策」 保守系野党議員が「屈辱的外交惨事」と批判!)

 「国民の力」の党代表権限代行である朱豪英・院内総務は15日に開かれた同党の非常対策委員会の場では政府批判は避け、以下のように日本批判だけに終始していた。

 「日本の放射能汚染水放流は極めて無礼で、日本は傲慢不遜極まりない態度を取っている。日本は我が国民に拭いきれぬ被害と苦痛を与えた国であるが、未来のため協力しなければならない国でもある。近接している隣国として未来設計を共にやるべきなのに隣国の生命と環境に密接に影響のある問題を一方的に決定しておきながら何の相談もなく強いては『韓国ごとき』と度が過ぎる無礼を働いた。過去を反省しない帝国主義的傲慢な態度である。日本が国際社会でこうした態度を取れば、経済力と関係なく、永遠に2等国家としての謗りを免れないであろう」

 「多くの国民が日本の一方的な放流決定はとても許すことができないと憤慨している。日本にもう一度覚醒を促すが、我々が日本に勝つ道は我が国の国力を伸ばし、日本が我々を無視できないよう我々が圧倒的優位に立つ道しかないことを反芻する」

 しかし、同じ日の裵俊英スポークスマンの談話は文政権批判に重点が置かれていた。同党のホームページに載った談話の見出しには「政府は福島汚染水から国民を守る能力と意志があるのか」と書かれてあった。政府の尻を叩く内容となっていることは読まずしてわかる。敢えてその内容を一つ、二つピックアップしてみると、以下の通りである。

 「国民は政府が恨めしい。(なぜ政府は)コロナ19からも、中国発の微細塵埃からも、そして今度は日本の原発汚染水から国民を守ることができないのか。政府は日本の意志のためどうにもならないと抗弁しているが、実際は我が政府の無能がもたらした惨事である。米国とIAEAまでが事実上、日本の福島汚染水放出決定を支持するまで政府はどのような措置を取ったと言うのか?今頃になって、文大統領は国際海洋裁判所への提訴検討を指示し、仮処分の要請をすると言っているが、貫徹は遼遠だ」

 「政府は昨年10月、政府部署合同TF(タスクフォース)で福島原発汚染水は『科学的に問題がない』と結論付ける報告書を作成していた。この報告書を日本が知っていたかどうかはわからないが、仮に日本政府に知れていたとすれば、日本政府の汚染水放出発表に肯定的なシグナルを与えたことになる。政府の外交、安保ラインは一体何をしていたのか?青瓦台と外交部を含めて政府は覚醒せよ!」

 「日本が放出を決定し、公式発表する時期を調整中だったことを我が政府が知っていたとも言われている。知っていて、適切な措置を取らなかったのならば、国民に対する欺瞞以外のなにものでもない」

 また、同党の重鎮の朴振議員は15日の会議の場で「大統領が出て、国民に懸案を説明し、対策を講じないのはさらに大きな問題だ」と文大統領を名指しで批判し、脱北者出身の太永浩議員も自身のツイートで「今回、日本が我が政府に何の事前報告もなしに、一方的に福島原発汚染水措置を発表したのなら、これは基本的に隣国との間で持つべき外交的格式、礼儀も備えていない傲慢で横柄な行動と言える」と、文政権に対して毅然たる対応を取るよう迫っていた。

 さらに国会農林畜産食品海洋水産委員会と環境労働委員会に所属する同党の議員は集団で出した「日本の自国利己主義に強い懸念と遺憾を表明する」声明書で文在寅政権に対して「汚染水放出決定後に次官会議を招集し、駐韓日本大使を呼んだのがすべて。消極的で安逸な対応である」と批判を浴びせていた。

 ソウル市長選挙で野党第1党と共闘した第2保守野党の「国民の党」も放流決定発表のあった4月13日にはスポークスマンを通じ以下の内容の談話を出していた。

 「日本が原発汚染水の海洋放流を決定した。隣国の大韓民国を含め世界の88か国が憂慮を表明しているにもかかわらず意に介さず決定を強行した。いかに、国際基準以下に希釈し、放流したとしても今後30年にわたって数百万トンの汚染水を人類の公共財である海に投棄する行為は絶対に容認できない。政府は即、日本に対して強力な糾弾声明を出し、国際社会と共助し、今回の決定を必ず撤回させなければならない」と日本に対して強い態度で臨むよう促していた。

 進歩派の地盤である全羅北道地域の7団体などは16日、全羅北道教育庁で記者会見を開き、日本の海洋放出決定は「韓国を含む隣国および世界市民と自然に対する核テロだ」と声を高めていたが、保守派の次期大統領候補の一人と目されている元喜竜・済州道知事も記者会見を開き、「日本政府はいかなる努力もせず、不可欠な手続きを省略し、放出を強行することを決めた。もはや話をする時ではなく、行動する時になった」として釜山市、蔚山市、それに慶尚南道と全羅南道の4つの地方自治体と汚染水阻止対策委員会を構成し、強力かつ効果的な対応を始めるとし、それでも日本政府が一方的に海洋放出を行った場合は「最後の手段として法的対応に入るしかない」と気勢を上げていた。

(参考資料:未解決の「日韓紛争」ランキング「ワースト10」)

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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