文在寅大統領の「対日メッセージ」を韓国メディアはどう伝えたのか?

文在寅大統領(青瓦台のHPから)

 「3.1独立運動」記念式典での文在寅大統領の「いつでも日本政府と向き合って対話する準備ができている」との対日メッセージは日本では評価されなかったというか、相手にされなかった。関係改善に向けて意欲を表明しただけで中身が伴ってなかったからのようだ。では、韓国での評価はどうか

(参考資料:文在寅大統領の対日政策に変化なし!「元徴用工」「元慰安婦」問題も新駐日韓国大使に一任か!?)

 結論から言うと、大きく報道されたものの一部政府系のメディアを除くと、総じて評価は低かった。何よりもそのことは見出しに表れている。

 文在寅政権に批判的な3大保守紙をみると、大手紙「朝鮮日報」の見出しは「慰安婦、徴用の解決策なく『日本と対話する準備ができている』」

 同紙は「任期が残り1年2か月となった文大統領は今年を韓日関係改善最後の機会とみなし、対日融和メッセージを出したものと解釈される」と分析しながらも「徴用判決や慰安婦問題など両国の争点となっている懸案についての言及や新たな提案は示されなかった」と低評価した。

 旧サムスン財閥系の保守紙「中央日報」と伝統的保守紙「東亜日報」の見出しは「東京五輪成功に協力・・・韓日関係改善へのメッセージ」と「東京五輪 韓日―米朝対話の機会・・・日本といつでも会う用意が」と東京五輪絡みである。

 両紙とも文大統領が東京五輪を日韓と米朝関係改善の好機とみなしていると伝えたが、「中央日報」は「和解と協力の方向性ははっきりしているものの『どのように』が見えなかった」と評し、「東亜日報」も「新型コロナウイルス感染余波で今年7月の東京五輪開催が不確実な状況にあることに加え、慰安婦や強制徴用被害者賠償問題を解決するための新たな解決策もなく、対話の意志だけを強調しても日本が応じるかは不透明であるとの指摘がある」と冷やかだった

(参考資料:元慰安婦の「ICJ提訴」爆弾発言で吹っ飛んだ文在寅政権の「解決策」)

 一方、文政権に好意的なメディアとして知られる「ハンギョレ新聞」は「日本と対話の準備・・・過去に縛られない」、「京郷新聞」は「日本といつでも向き合う準備ができている」、「オーマイニュース」も「日本といつでも対話の準備ができている」との見出しを掲げ、いずれも文大統領の対話姿勢を評価していた。見方を変えれば、韓国は対話する意志おがあるのに日本が応じないことに関係改善ができない原因があると日本を批判しているようでもあった。

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 では、中立系はどうか?

 「ソウル新聞」は「日本といつでも対話・・・提案が抜けた和解の手」と、提案がないことを問題視していたが、今朝(2日)の社説では「文大統領の3.1節の対話の呼びかけに日本は速やかに応じるべき」と主張し、「韓国日報」もまた今朝の社説で「(文在寅大統領が)過去の問題を分離して対応するという意志を再確認し、日本政府の前向きな対応を促した」として「日本政府は今までの無対応、無視から抜け出し、両国関係の未来について積極的に考える時だ」とこれまた批判の矛先を日本に向けていた。

 同じく中立系の「国民日報」は「慰安婦を外して変わった文の対日メッセージ・・・意志は明らかだが、対策は曖昧」との見出しを掲げ、文大統領が慰安婦や過去史について直接の批判を控えたことや慰安婦とか徴用工と言う表現を使わず、単に「被害者」と言う表現に留めたこと、「協力や対話などの表現を使い、友好的な新たな関係などの表現を用いていた」ことなどを取り上げて対話への積極性を評価したもののそれでも「対策が不十分」と指摘していた。

 経済誌では「マネーツデイ」が「日本は重要な我々の隣国・・・過去に縛られるわけにはいかない」との見出しを掲げ、「和解と協力の方向性ははっきりしているものの『どのように』が見えなかった」と不備を指摘。「毎日経済」も「慰安婦・強制徴用に言及せず、日本といつでも対話の準備が」と「これまでの3.1演説とは基調が異なり、融和的である」と評価しながらも「新たな提案がなく、日本政府の供応を導き出すことは不透明である」と批評していた。

 「ファイナンシャルニュース」は「慰安婦、徴用工が抜けた和解のメッセージ・・・日本を動かすには動力不足」との見出しで「日本を説得し、動かすには動力が不足している」との韓国及び日本の専門家の声を紹介していた。専門家の中には「未来志向的な関係への希望を込めた提言に留まり、実質的な関係回復に導くことのできないレトリックに終わる可能性が高い」との厳しい見方もあった。「ソウル経済」に至っては「克日→未来志向関係に転換した」文大統領に「チョ・テヨン『だから精神分裂』と批判が」と、保守のチョ・テヨン議員のコメントを見出しに掲げていた。

 元外交部第一次官のチョ議員は「文大統領は対日強硬論から対日融和論に180度変わったが、その理由について何の説明もない。だから『精神分裂的』という批判を受けるのだ」と酷評し、「最悪の韓日関係で韓国の対日外交は卑屈になっており、政府与党は(日本に対して)低姿勢になっている」と文大統領の対日発言を批判していた。

 一方、TVでは「KBS」(「強制徴用、慰安婦具体的に言及せず和解の手を・・・日本『具体的な内容がない』」)は「日本に向けた今日の大統領のメッセージはこれまでとは変わっていた。歴代記念辞の中でも最も融和的なメッセージと評価されているが、日本は過去史に対する具体的な解決策を示せと既存の立場を繰り返している」と、日本の冷やかな反応を伝えていた。

 「MBC」(「日本と対話の準備ができている・・・過去史、未来を分けて解決しよう」)は「大統領は過去と未来について強調していたが、重点は未来協力に置かれていた」として、その証左として「過去に縛られるわけにはいかない」と発言したことと「協力」と言う言葉が19回も登場していたことを挙げていた。

 ニュース専門TVの「YTN」(「過去史に縛られるわけにはいかない 日本に手を差し出した文大統領」)と「JTBC」(「文大統領『いつでも日本と対話する準備ができている』」)は文大統領の関係改善に向けた意思表明を客観的に伝えていた

(参考資料:ICJ提訴への布石? 国連人権理事会での日韓の「慰安婦バトル」)

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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