日本はベルリンの慰安婦像を撤去できるか?

フライブルク市での建立を推進していた韓国・水原市の市民団体(主催団体のHPから)

 日韓関係の悪化は歴史認識をめぐる確執が決定的な要因の一つとなっている。中でも元徴用工への日本企業の保障問題と並んでソウルの日本大使館、釜山領事館前に設置されている「平和の少女像」と称される旧日本軍従軍慰安婦像が確執の象徴となっている。そうした最中、ドイツのベルリンに9月25日、慰安婦像が新たに設置された。ドイツ国内に設置された「慰安婦像」はこれで3体目である。

(参考資料:日韓の火種は「安倍首相謝罪像」から釜山総領事館前の「慰安婦像」に拡大!

 欧州初の1体目は3年前の2017年にドイツ南部のバイエルン州ヴィーゼントのネパール・ヒマラヤパビリオン公園に設置されている。2体目は今年3月にフランクフルトのラインマインにある韓国人教会前に設置されている。

 これまでは私有地に設置されていたが、今回は初めてブランデンブルク門やベルリン中央駅などがあるミッテ区の公共の場に設置されている。飲食店やコーヒーショップが多くあり、人通りが賑やかなビルケン通りとブレーマー通りが交差する地点にあり、日本大使館からは直線で2.8km、自動車で10分しか離れてない場所にある。

 像の設置を呼びかけ、推進したのはドイツ在住の韓国人団体「コリア協議会」で、李明博保守政権下の2008年から本国から慰安婦らを呼び、講演などを主催して慰安婦問題を喚起していた。

 ベルリンでは歴史に関する造形物を公共の場に設置する際の基準は非常に厳格と言われている。そのため同協議会は「旧日本軍慰安婦被害者問題は日韓の国家間の問題ではなく、世界の被害女性及び女性の普遍的な人権に関わる代表的な事例である」と強調することで第二次世界大戦の犠牲者の問題に関心を払っているドイツの研究者や性的暴行の被害者問題に取り組んでいる女性団体、さらには芸術団体からの支援を取り付け、設置推進運動を展開していた。

 その結果、ベルリンの像は今年初めにベルリン都市空間文化委員会など関係当局の審査を通過し、7月に最終的な許可を得ていた。同協議会はすでに慰安婦問題と女性性暴力克服をテーマにした展示館を事務所の隣で運営しているが、像が設置されたことで相乗効果を期待しているようだ。像の設置を機に今後、地元の高校生らを対象に戦争被害女性と関連した教育を行っていく方針のようだ。

 慰安婦像のベルリン市内の設置について加藤官房長官が「極めて遺憾である」と述べ、「撤去に向けて多様な関係者と接触して日本の立場を説明するなど引き続き努力する」とコメントしていたが、日本政府は果たしてこの像を撤去させることができるだろうか?

(参考資料:「慰安婦決議案を阻止せよ!」 米国での日本のロビー活動の実態(上)

 ドイツでの過去のケースを見ると、設置の阻止あるいは撤去に成功した例がある。4年前にフライブルク市に建立を計画していた慰安婦像は在ドイツ日本大使館やフライブルク市と姉妹都市を結んでいる愛媛県の松山市の働きかけなどが功を奏して、設置を阻止したことがあった。

 このフライブルク市での建立には韓国の京畿道・水原市と45の市民団体が「ドイツ・フライブルク平和少女像建立推進委員会」を立ち上げ、募金運動まで展開していたが、日本に軍配が上がった。

 また、昨年もベルリン北部のブランデンブルクのナチ強制収容所記念館(Ravensbruck Memorial)に展示されていた10cmそこそこの小さな慰安婦像が日本の抗議によって撤去されている。このミニチュアは「コリア協議会」の会長が寄贈したものだが、日本大使館がブランデンブルク州当局と記念館に抗議して、撤去させていた。

 慰安婦像はドイツの他にアメリカ、カナダ、オーストラリアなどに設置されているが、欧州では今後、ドイツを足場にヒトラー時代のドイツに占領された国々で韓国人居住民らによる連鎖反応が予想されることから日本政府は2015年の「日韓慰安婦合意」を盾に阻止する構えである。

 日韓合意では▲韓国政府は海外での像の設置を支援しない▲性奴隷という表現も使わない▲韓国の支援団体を説得し、駐日本大使館前にある少女像の問題の解決に努力することなどが謳われていた。

 実際に韓国の尹炳世外相(当時)は「大使館の前の慰安婦像を撤去してもらいたい」との岸田文雄外相(当時)の要請に対して「日本政府が日本大使館前の少女像に対して公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知しており、韓国政府としても可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する」と約束していた。

(参考資料:慰安婦決議案を阻止せよ!」米国での日本のロビー活動の実態(下)

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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