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開城での「感染騒動」の最中に平壌ではマスク着用せず「老兵大会」! 

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
金正恩委員長が参加した5千人規模のノーマスクの「老兵大会」(労働新聞から)

 北朝鮮は南北軍事境界線に近い開城市で「新型コロナウイルス感染の疑いのある事例が発生した」として24日午後には開城の完全封鎖に踏み切った。

 翌25日には金正恩委員長の出席の下、最高権力機関の労働党政治局による非常拡大会議が開かれ、開城市に非常事態を宣言し、これまでの国家非常防疫体系を最大非常体制に格上げし、特別警報まで発令した。

 まだ感染が確定されていない、疑わしい事例1件でここまで大騒ぎするのはおそらく北朝鮮ぐらいであろう。それもこれも新型コロナウイルスが流入すれば、「致命的で破壊的な災難を招きかねない」(金正恩委員長)からであろう。

 金委員長は中国で発生した新型コロナウイルスが日本、韓国など周辺国に拡大し始めた2月下旬に開いた政治局拡大会議で「このウイルスが我が国に流入すれば、その影響は深刻である」として「国家的な超特級防疫措置」を取るよう命じていた。

 北朝鮮の医療制度は予防医学である。病気にかからないように予防することが基本で、国民に奨励されている。裏を返すと、医療機器の不備など医療システムが脆弱なだけに一旦病気にかかってしまうと、治療の施しようがないからだ。

 従って、仮に北朝鮮が公言しているとおり、これまで感染者が一人もいなかったのが事実ならば、「疑わしい段階」であっても大騒ぎになるのは無理もない。これを機に「全党、全社会的に非常防疫指揮部の指揮の下、一つになって絶対服従し、秩序を維持する」ことを政治局拡大会議で再確認したことも頷ける。

 北朝鮮の非常防疫指揮部は国民にマスクの着用を義務付けている。マスクをしてない乗客のバスや地下鉄の利用を禁じているほどである。日本、韓国同様にソーシャルディスタンスも行っており、世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっていた5月までは幼稚園、学校も閉校する措置も取っていた。感染者ゼロだったにもかかわらず、日本や韓国に劣らず、強力な防疫措置を講じていた。

 北朝鮮は今回、開城で降ってわいた「感染騒動」を機に全国民に対してこれまで以上に感染防止のための規律を徹底的に守るよう労働新聞などメディアを通じて大々的なキャンペーンを展開している。

 そうした最中に昨日(27日)何と、北朝鮮は平壌で朝鮮戦争に参戦した兵士らを全国から招集し、「老兵大会」を開催していた。開城での事態を金正恩政権が深刻に捉えているならば、予告していたとはいえ、老兵大会の開催を急遽、中止するかもしれないとの見方は見当外れだった。

 朝鮮戦争(1950-53年)に参戦した兵士となれば、80代~90代で、感染すれば重症化どころか命が危ぶまれる世代である。まして、開城市での感染騒ぎはまだ収束していない。

 配信された写真を見ると、会場には見渡したところ、5千人以上の老兵が集結していた。驚いたことに誰ひとり、マスクをしてなかった。金委員長を含めひな壇に陣取っている幹部らもマスクを着用しなかった。

 映像でチェックしないと何とも言えないが、これまでの慣例からすると、おそらく金委員長の演説の節々で会場から拍手、歓喜の声が沸き起こっていたに違いない。

 演説の全文をみると、金委員長は演説の最後に「偉大な戦勝7.27(北朝鮮は7月27日を朝鮮戦争勝利記念日として祝っている)万歳!」を叫んでいたが、おそらく会場から「万歳」の合唱があったことは想像に難くない。

 感染拡大阻止の必須条件である「3密」回避の時勢にまるで逆行するような集会を開催できるほど「開城の感染状況」を、「コロナの感染拡大」を気にはしていないということなのだろうか? 

 開城と平壌は距離にして160kmしか離れてない。このギャップをどう理解すればよいのだろうか?

(参考資料:「感染者はゼロ」の北朝鮮が感染事実を初めて内外に明らかにした理由は?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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