北朝鮮攻撃までの猶予は3か月――平昌五輪前か、後か!

「究極のチキンレース」を続けるトランプ大統領と金正恩委員長

 「リトルロケットマン」「老いぼれ狂人」と罵りあうトランプ大統領と金正恩委員長のチキンレースはブレーキが効かないまま正面衝突に向かっている。

 トランプ大統領は昨日(18日)、トランプ政権の新安保戦略構想を発表したが、北朝鮮問題での対応では北朝鮮の非核化、核放棄が目標であることを再確認したうえで北朝鮮の核・ミサイル開発について「射程距離の拡大に加えその数と形態、日増しに強化されるミサイルが米国を相手に核兵器を使用する最も有力な手段となる」とその脅威を強調していた。

 そのうえでトランプ大統領は「北朝鮮の核拡散と大量破壊兵器高度化の脅威を無視すればするほどそうした脅威はより深刻となり、我々の防御オプションも限られてくる」として「核兵器で数百万の米国人の殺害を追求するのは許さない。圧倒的な力で北朝鮮の侵略に対応する準備ができている」と述べていた。

 一方の金正恩委員長もまた、核・ミサイルを製造する軍需工業部門の大会(11-12日)に出席し「我が共和国を世界最強の核強国、軍事強国へとさらに前進飛躍させなければならない」とし「核武力を質量的に強化し、我々式の最先端武装装備をもっと多く作れ」と核戦力の強化に向け拍車を掛けるよう号令していた。

 一昨日の17日には錦繍山太陽宮殿を珍しく一人で参拝し、祖父(金日成主席)と父(金正日総書記)の遺体の前で「我が国を強大な国、自主・自立・自衛の城塞へと固めていくため、将軍様の革命戦士らしく一層強く戦っていく」と誓っていた。

 トランプ大統領も金正恩委員長も一歩も引く気はなく、どちらともチキンレースから降りる気はなさそうだ。交渉や妥協ではなく、相手を屈服、降伏させるまで戦いを挑み続ける構えのようだ。

 北朝鮮の核問題に限って言うなら「攻めの米国」に対して「守りの北朝鮮」という構図になっている。核とミサイルの鎧を脱がそうとする米国に対して何が何でも死守しようするのが北朝鮮である。

 トランプ大統領は北朝鮮の核・ミサイル開発を結果として8年にわたって放置してきたオバマ前政権の「戦略的忍耐政策」は「過ちである」として北朝鮮の核問題は「早期に処理する」との考えを持っており、北朝鮮とのチキンレースを、綱引きをいつまでも続けることを考えてない。そこで、注目されているのがトランプ大統領の忍耐のタイムリミットである。

 ジョージ・ブッシュ政権下で国連大使を務め、現在トランプ大統領の外交安保アドバイザーでもあるジョン・ボルトン氏が今月初旬英国を訪れた際、英国議員らとの会合で米CIAのポンペオ長官が「北朝鮮のICBMを阻止できる時間は3か月しか残されてない」とトランプ大統領に報告していた事実を明らかにしていたことが英紙「ガーディアン」で報道され、大きな関心を呼んだが、その渦中のボルトン氏が16日にノースカロライナ州で行われた共和党の行事に出席し、北朝鮮問題について次のような発言を行っていたことがわかった。

 米紙「USAツデー」(17日付)に掲載されたボルトン氏の発言を要約すると;

―北朝鮮は2018年までに米国を打撃できる能力を備えることになる。

―北朝鮮が今、何を持っているかに関係なくイランも明日にでも大金をはたいてそれらを手にしようとするだろう。

―北朝鮮との交渉は北朝鮮を止めることができない。中国も北朝鮮の核兵器による米都市打撃進捗を止められない。

―韓国が被る被害を考えると誰も北朝鮮に対する武力行使を望まない。しかし、ある時点で先制攻撃によるリスクと北朝鮮が実際に米国を攻撃するリスクのどちらが大きいかを選択せざるを得ないだろう

―北朝鮮のような非理性的な政権の核開発を抑止できると考えるのは神話の話だ。米国は北朝鮮に対して軍事攻撃の選択以外ない時が必ず来る。

 「戦争が勃発すれば数時間内に韓国で数十万の死亡者が発生する」との危惧に対して「米大統領の最初の任務は何よりも米国人を保護することにある」とボルトン氏は語っているが、トランプ大統領が8月3日に「戦争になればあっちで死に、こっちではない」の発言していたのは周知の事実である。

(参考資料:北朝鮮は有事時、4個軍団で総攻撃――ソウル半分は緒戦で壊滅

 外交を担当するティラーソン国務長官は12日に一度は「北朝鮮とは前提条件を付けず対話をする用意がある」と発言し、対話に前向きな姿勢を見せたが、ホワイトハウスの反発もあって15日の国連安保理閣僚会議では一転「対話に入るには地域を脅威にさらす北朝鮮の行いが停止されなければならない」と条件を付けた。これにより米朝は再び、対話から対決に回帰してしまった感が否めない。

 トランプ大統領は今年10月にティラーソン長官が北朝鮮と対話する意向を示した際、ツイッターで「時間の無駄」と直接批判していた。そして、今回、新安保戦略構想を発表した場で北朝鮮問題について「必ず処理する。選択の余地はない」と豪語していた。

 トランプ大統領の盟友である米共和党のリンゼイ・グラハム上院議員は13日、「アトランティック」誌とのインタビューで「トランプ大統領が軍事力を行使する可能性は30%だが、北朝鮮が7度目の核実験をやれば、その確率は70%になるだろう」と予測していた。

(参考資料:「米朝軍事衝突の可能性は40~50%」ー米国の国防・外交専門家らの予測

 予想された17日の父親の命日前のミサイル発射などはなかったが、米国独立記念日の7月4日にICBM級の「火星14型」を発射した際に金正恩委員長が「これからも(トランプ大統領に)大小の贈物を届けろ」と命じていたこともあって、一難去ってまた一難で、クリスマスイブの24日は要注意だ。

 仮に、今年北朝鮮が自制したとしても来年1月は金正恩委員長の誕生日(1月8日)を迎え、2月は朝鮮人民軍正規軍創設70周年(8日)、北朝鮮核保有宣言日(10日)、金正日総書記誕生日(16日)などの記念日が控えている。

 この期間に北朝鮮が核実験であれ、新型潜水艦弾道ミサイル「北極星3型」の発射であれ、あるいは長距離弾道ミサイル「テポドン」とみなしている人工衛星「光明星」の発射であれ、北朝鮮が米国にとっては重大な挑発となる核・ミサイルの実験をやれば、軍事力の行使は避けられないだろう。

 米国が事を起こすのは、後は平昌冬季五輪の前か、後かという時間の問題だけのようだ。

(参考資料:トランプ大統領は米議会の同意なく北朝鮮を攻撃できるか

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動開始。98年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー 。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会会員、日本ペンクラブ会員。著書に「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」(飛鳥新社)「世界が一目置く日本人、残念な日本人」(三笠書房)「大統領を殺す国 韓国」(角川)「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「北朝鮮100の新常識」(マサダ)「韓国人と上手につきあう法」(ジャパンミックス)など20数冊

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