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独房の朴槿恵前大統領に取り沙汰される「精神不安定説」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
法廷に出廷する朴槿恵前大統領

朴槿恵前大統領が憲法裁判所で罷免され、失職したのが3月10日。収賄容疑などで検察に身柄を拘束され、収監されたのが3週間後の3月31日。そして、裁判が始まったのが5月23日。現在公判中にあるが、ソウルの拘置所に収監されてからすでに100日が経過した。

一審判決は10月までには出るものと予想されるが、保釈が認められないためどちらにせよ猛暑も拘置所で過ごすことになりそうだ。

朴前大統領は一貫して無罪を主張しているが、朴前大統領に掛けられている容疑は収賄から職権乱用、国家機密漏洩まで全部で13件。共犯の「40年来の友人」である崔順実(チェ・スンシル)被告が娘のユラ容疑者の名門・梨花女子大への不正入学の1件(業務妨害罪)だけで懲役3年(求刑懲役7年)の実刑判決を宣告されたところをみると、どう考えても、有罪を免れることはできそうにない。どんなに軽くても懲役5~8年、仮に収賄罪が適応されれば、最悪の場合、無期懲役も想定される。

(参考資料:朴槿恵前大統領に逮捕状が請求された5つの理由

韓国は日本以上に、経済犯への罪は重い。厳罰に処される。というのも、特別犯罪加重処罰法に基づけば、収賄金額が1億ウォン(約1千万円)を超えた場合、最低で懲役10年、最高で無期懲役刑が宣告される。朴前大統領の収賄容疑は財閥のサムソン絡みだけで430億ウォン(約43億円)に上る。

朴前大統領と崔順実被告への贈賄容疑で朴前大統領よりも一足先に逮捕されたサムソングループの三代目、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の裁判も現在進行中だが、仮に李副会長が有罪となれば朴前大統領はアウトということになる。

朴前大統領は現在、独房に入れられているが、弾劾、罷免、そして逮捕と奈落の底に突き落とされたことによる失意のせいか、また外部との接触が一切断たれたことによる疎外感からくるものか定かではないが、「精神を患っている」との噂が駆け巡っている。

裁判で黒白を付けると気丈にも法廷闘争に打って出た朴前大統領だが、今月10日に予定されていた公判を欠席していた。昨日も出席しなかった。二日続けての欠席だ。

(参考資料:「私はジャンヌダルクになる」? 朴槿恵前大統領の心境を読む

朴前大統領の弁護士は「靴も履けず、夜眠れないほど痛風が酷いため」とその理由を説明しているが、健康不安が原因ではなく「精神に異常をきたしているからではないか」との声が裁判を傍聴している関係者の間では囁かれている。

一部韓国のメディアは看守の証言として「朴前大統領は夜になっても寝ずに壁に向かってぶつぶつ何か独り言を言っている。30分前に食事をしたばかりなのに『ご飯はまだか』と忘れる始末だ」と伝えている。朴前大統領が法廷で突然わけもなく笑いだしたり、弁護人が弁護中にも訳の分からない絵を描いては消している光景を何度も傍聴人に目撃されている。

手錠を掛けられたままさらし者にされ、法廷に引っ張り出されるなどプライドをズタズタにされ、豪華な大統領官邸か僅か10.6平方メートルの狭い独房に入れられればうつ状態になっても不思議ではない。また65歳という高齢からして健康に不安が生じても至極当然の話だ。公判中に立ちくらみで審理が中断したこともあった。

朴前大統領は食事が進まず、ご飯の代わりに乳製品にしているようだ。この点については拘置所側も「拘置所から差し出す食事にはほとんど手を付けず、リンゴや旬の果物、牛乳や豆乳、ヨーグルトなどを拘置所内で購入して食べている。健康上問題ない」と説明している。

法務部も「一部のメディアで提起された朴前大統領関連の報道内容は全く事実でなく、朴前大統領は現在、規則的な食事と就寝で入所時と比べて健康に特に異常がない状態」と明らかにしている。

朴被告は週4回、公判に出廷している。仮に次回も欠席となると、健康悪化による保釈という話も現実味を帯びるかもしれない。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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