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朝鮮半島有事に備えた在韓米国人の国外脱出訓練が始まった!!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮に特殊部隊を送り込む訓練をする米軍ヘリ

駐韓米軍は現在、韓国に居住している米国人を国外に退避させる訓練を実施していることをフェイスブック通じて明らかにした。訓練は今月5日から始まり9日まで実施される。

駐韓米第8軍によると、訓練は朝鮮半島有事の際「旅券など書類を持ってソウルの龍山基地など韓国全土に散在している集結場所や退避統制所に集まる非戦闘員(米軍兵士の家族など民間人)らを航空機や鉄道、船舶で安全に日本に退避させる」ことを目的としている。

各集結所では先月(5月17日)から有事時の行動マニュアルや行政手続きを説明する「非戦闘員救出作戦(NEO)訓練」に関するブリーフィングが行われている。

訓練への参加対象者は何と、1万7千人以上。韓国に居住している米国人は約20万人だが、およそ、十数人のうち一人が参加する計算となる。このうち、約100人以上が実際に航空機に搭乗して、国外に出る訓練を受ける。

駐韓米軍は毎年春と秋に朝鮮半島有事に備え韓国在住の米市民を安全な地域に輸送する「NEO訓練」を行っているが、昨年秋の訓練までは国外への脱出訓練はなかった。ところが、昨年10月から11月にかけて密かに行われた訓練がソウル駐在の米軍家族らを在韓米軍基地から在日米軍基地に輸送する訓練であった。国外脱出訓練は2009年以来、7年ぶりの「出来事」であった。当時、避難訓練を取材した米CNNが伝えたところでは、この訓練には約60人が参加していた。

国外避難訓練は退避命令から荷造り、登録、ソウルから南方への移動、そして国境越えと段階的に行われていた。米国務省は米市民と外交官及び米軍家族らを対象に「非戦闘要員疎開命令」を出し、対象者は避難の際に一人当たり最大で27キログラムの所持品の持参が許されていた。

ソウル市龍山区にある米軍基地で身元確認の腕輪を渡され、保安検索の手続きが行われ、生物・化学兵器による攻撃を12時間防止することのできるマスクの着用方法に関する訓練も受けていた。 

一行は、大型輸送ヘリで南方の京畿度・平澤に移動した後、大邱にある米軍基地で一泊して翌日C―130輸送機で釜山にある金海空軍基地から日本の沖縄に向けて飛び立った。

訓練担当者である非戦闘要員退避企画官のジャスティーン・ストーン氏は「最悪のシナリオは北朝鮮が国境を越えて来ることであり、我々は人々を危険な場所から移動させる必要がある」と訓練の目的を語っていた。

CNNの同行取材で米人の国外避難訓練の事実が明るみに出るや、ソウルの証券市場や為替市場では金利やレートに影響を及ぼす恐れがあるとの危惧の声が上がった。外国投資家らに不安が広がる恐れがあったからだ。それもこれも、これまでの訓練とは異なり、2009年以来7年ぶりの韓国からの脱出訓練だったからに他ならない。

今年の退避訓練対象者は昨年よりもはるかに人数が多い。トランプ政権が北朝鮮の核とミサイル開発を阻止するため軍事オプションも辞さないと、公言していることと無縁ではない。

仮に北朝鮮が6度目の核実験に踏み切れば、あるいは米国の心臓部であるワシントンを標準に定めた大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試射すれば、「レッドライン(越えてはならない線)」を越したとして、米国が軍事行動を開始する可能性も高い。

米国は軍事攻撃を開始する前には自国民の被害を最小限にするため前もって紛争地域から疎開させる。実は、クリントン政権下の1994年6月に北朝鮮への核施設への先制攻撃を決断した際にも米政府は駐韓米大使を通じて米国人の国外避難指示を出していた。このことは、当時、金泳三政権下で大統領秘書室長の職にあった朴寛用氏が国会議長となった2003年に「月刊朝鮮」(2月号)で詳細に語っていた。

「当時、鄭鍾旭青瓦台(大統領府)外交安保首席補佐官がどこからか『駐韓米大使館が数日以内に米軍家族らに退去命令を出す準備をしている』との情報を聞き出してきた。確か1994年6月のことと記憶している」

「駐韓米大使を呼び、事実関係を確認した後、金泳三大統領はクリントン大統領に電話をして『戦争は絶対にダメだ』と強く抗議した。クリントン大統領が国家安全保障会議を招集し、戦争に備えた兵力増強を論議していることを我々は全く知らされてなかった」

軍事攻撃を成功させるには、先制、奇襲攻撃が必須である。それがゆえに、当時、米国は韓国政府に事前協議も、事前通告もしなかった。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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