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北朝鮮 金メダルいまだゼロ

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
「勝てば英雄」扱いの北朝鮮の選手ら

熱戦が繰り広げられているリオ五輪で日本は金7個、銀1個、銅13個と連日のメダルラッシュで沸いており、韓国もまた、金5個、銀2個、銅4個を獲得し、大いに盛り上がっているが、北朝鮮は12日現在、重量挙げの男子56kg級と女子63kg級で銀、射撃50mと女子個人卓球で銅を獲得したものの金メダルは依然ゼロだ。

韓国のメディアは金正恩委員長が北朝鮮選手団の応援のためブラジル入りした党序列5位の崔龍海国家体育指導委員会委員長(党副委員長)に「金5個を取れ」と厳命したと報じているが、北朝鮮は五輪でもアジア大会でも過去に一度も獲得目標数値を挙げた試しがない。経済目標同様に目標を達成できない場合の「反動」を恐れてのことだ。

おそらく、過去9回出場した五輪での北朝鮮の金メダルは1992年のバルセロナ大会と前回のロンドン大会での4個が最大であったことから韓国のメディアが想像たくましく「5個」と、勝手に北朝鮮の目標を挙げたようだ。とは言うものの、今回の出場する選手の顔ぶれや過去の実績からして5個は決して達成不可能な数字ではなかったはずだ。

銀メダルに終わった重量挙げ男子56kg級のオム・ユンチョルは2012年のロンドン大会の金メダリストであったことから金メダルが本命視されていた。また、同じく銀メダルリストの重量挙げ女子63級のチェ・ヒョシムも金メダルが確実視されていた一人である。重量挙げではこの他に男子・69キロ級のキム・ミョンヒョクも金メダルが期待されていたが、記録なしに終わっている。

メダルゼロに終わった柔道でも女子48級に出場したキム・ソルミと、78kg級に出場したソル・ギョンも金メダルが秘かに期待されていた。特にソル・ギョンは2013年の柔道世界選手権大会で金メダル覇者であったことから金メダル有力候補の一人であったが、二人とも枕を並べて初戦で敗退している。

さらに、水泳でも、女子シンクロ高飛び込み(10m)で4位に終わったキム・グクヒャンとキム・ミレのペアは北朝鮮ペアが昨年の世界選手権で銅メダルを獲得したことから金メダルが大いに期待されていたし、特に女子シングル高飛び込み(10m)で優勝したキム・グクヒャンはオリンピック水泳種目で史上初の金メダルを北朝鮮にもたらすのではと注目されていた選手でもある。

また、北朝鮮得意の射撃でも女子25mピストルでチョ・ヨンスクが金メダル候補として注目されていたが、7位入賞に終わっている。

前半戦では誰一人、金メダルに手がかからないが、体操種目別の跳馬で2年前の世界選手権大会(中国・南寧)で男女優勝を果たしたリ・セグァンとホン・ウンジョンらに北朝鮮は望みを託しているようでもある。リ・セグァンもホン・ウンジョンもそれぞれ予選を1位、2位で通過している。

また、重量挙げでは女子・75キロ級に出場するリム・ジョンシムとレスリング男子・フリー57キロ級のヤン・キョンイル、グレコローマン59キロ級のユン・ウォンチョルらにも金メダルの期待がかかるが、仮に誰も取れないとなれば、2004年のアテネ五輪(銀4、銅1)の再現となる。

1972年のミュンヘン五輪に初出場し、射撃で金を獲得した北朝鮮が過去9回の五輪で金メダルを手にできなかったのは西側諸国がボイコットして片肺大会となった1980年のモスクワ大会と、南北が合同入場行進をして話題となった2000年のシドニー大会、そして2004年のアテネ大会の3度しかない。

「スポーツ大国」を国家目標に掲げ、力を入れてきた金正恩政権にとっては金メダルゼロほどの屈辱、恥辱はない。たかがスポーツでは済まされないからである。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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