北朝鮮の核実験は「カダフィの末路」からの教訓

(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮の国営放送の「朝鮮中央通信」は北朝鮮が4度目の核実験を強行した2日後の1月8日、「正義の水爆は我々の誇りである」とする論評を配信し、その中で国際社会の圧力で核開発を放棄したイラクのフセイン政権とリビアのカダフィ政権について「制度転覆を企図する米国と西側の圧力に屈し、あちこち引きずられ核開発の土台を完全に潰され、自ら核を放棄したため破滅の運命を避けることができなかった」と言及していた。

そして、論評は最後に、米国の「敵視政策」がなくならない以上、北朝鮮に核放棄を望むのは「天が崩れろと言うような愚かな行動」であると結んでいた。

思えば、反政府軍に追われたリビアのカダフィ大佐が2011年10月に拘束、殺害され、42年間続いたカダフィ政権が終焉した時、リビアとは「反米同志」の関係にあった北朝鮮の金正日・正恩親子はカダフィ大佐の哀れな最期を伝えた映像を一体どのような心境で見ていたのだろうか?

民主化をせず、独裁体制を続ければ、最後はこのような悲惨な末路が待っているとの教訓を得たのか、それとも西側に譲歩し、核開発計画の放棄など武装解除すれば命取りになると判断したのかどちらかだったが、北朝鮮の結論は後者だった。

北朝鮮は国連安保理が反政府勢力を鎮圧するリビア政権に「軍事制裁」の決議を採択し、英仏を中心に7か国が連合して政府軍を攻撃したことがカダフィ政権の崩壊を招いたと総括した結果、体制をさらに硬直化させ、核開発に拍車を掛けることになった。カダフィ一族の滅亡は2か月後の2011年12月に発足した金正恩後継体制に先軍政治の路線を一層強化させることとなった。その後のテポドン発射や2013年2月の3度目の核実験がそのことを証明している。

リビアへの軍事制裁の決議が採択された当時、北朝鮮外務省報道官は次のような談話を発表していた。

「リビア核放棄方式とは、安全保証と関係改善という甘い言葉で相手を武装解除させた後、軍事的に襲う侵略方式だということが明らかになった。地球上に強い権力と横暴な振る舞いが存在する限り、力があってこそ平和を守護できるという真理が改めて確証された」

カダフィ政権が核を放棄するまでは北朝鮮とリビアは反米兄弟国であった。北朝鮮のミサイル供与も含め軍事交流も盛んであった。

今から5年前の2011年5月に国際原子力機構(IAEA)のオリ・ハノイネン事務次長が明らかにしたところでは、2004年にリビアで発見された核物質は北朝鮮が輸出したものではないかとみられていた。

ハノイネン元事務次長は当時、VOA(ボイス・オブ・アメリカ)とのインタビューで「リビアでウラン濃縮に使用されるUF6(六フッ化ウラン)が発見されたが、この時の機械装備と北朝鮮の核開発用の部品購買の形態、さらにパキスタンが提供した情報などを総合すると、北朝鮮が製造したUF6の可能性が相当に高いと思っている」と語っていた。IAEAではシリアに続き、リビアにも北朝鮮が核協力をしていた可能性が指摘されていた。

ところが、そのリビアが2003年、米英両国の武器専門家とIAEA査察団の主要疑惑施設への訪問を含め検証対象に含まれる全ての施設の関連文書を提供したほか、サンプル採取、写真撮影などで合意し、2004年にIAEAの第一次査察活動を受けた後,直ちに大量破壊兵器関連施設の廃棄に着手した。

さらに、核兵器開発の全面破棄と査察の即時受け入れを表明したカダフィ大佐は反米同志の金正日総書記に対して「査察に開放的であるべきだ。自らの国民に悲劇が降りかかるのを防ぐためにも北朝鮮は我々を見習うべきだ」と進言していた。

このカダフィ大佐の発言に金総書記は当時、労働新聞を通じて「帝国主義者の威嚇・恐喝に負けて、戦う前にそれまで築いてきた国防力を自分の手で破壊し、放棄する国がある。恥知らずにも、他の国に対して『模範』に見習えと、勧告までしている」と不快感を露わにしていた。この応酬後、北朝鮮とリビアの関係はおかしくなり、両国の関係は半ば絶縁状態にあった。

金総書記は血まみれのカダフィ大佐の最期をみて「だから言っただろう。帝国主義者らを簡単に信頼するなと」とテレビに向かって一人つぶやいていたのかもしれない。

北朝鮮にとってのリビアの教訓とは「核とミサイルを手にしている限り攻撃されない。どんな条件が提示されても、先に手放すわけにはいかない」ということかもしれない。ならば、仮に中国がこだわる6か国協議であれ、朴槿恵大統領が提唱している北朝鮮を除く5か国協議であれ、どのような多国間協議が再開されたとしても、国際社会が望む核問題の進展は期待できそうにもない。

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動開始。98年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー 。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会会員、日本ペンクラブ会員。著書に「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」(飛鳥新社)「世界が一目置く日本人、残念な日本人」(三笠書房)「大統領を殺す国 韓国」(角川)「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「北朝鮮100の新常識」(マサダ)「韓国人と上手につきあう法」(ジャパンミックス)など20数冊

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