大きく変わった医療費控除~領収書提出不要と新たな義務

(写真:アフロ)

 今年もやってきた確定申告シーズン。

 税金の還付を受けるために、一年間分の病院・薬局の領収書をせっせとかき集めている方も少なくないでしょう。

 その集めた領収書、なんと今回の確定申告から税務署に提出する必要がなくなりました。

 これまで領収書でパンパンに膨らんだ申告書を税務署に提出していた方には、朗報かもしれません。

「明細書」が必須に

「税制改正、グッジョブ」と言いたくなるところですが、どっこい、いいことばかりではありません。

 領収書を提出しなくて良くなった代わりに、医療費控除を受けるには、新たに以下の2つのことが義務付けられるからです。

 その2つとは、「明細書」を税務署に提出すること、そして領収書を5年間保存することです。

 まず、明細書について説明しましょう。

 明細書の正式名称は「医療費控除の明細書」。従来あった明細書の様式をマイナーチェンジしたものです。

 従来は、明細書の提出は強制されていませんでした。明細書を記入せずに一年間の医療費の合計額を申告書に直接する記入する方法も、事実上認められていたのです。

 今回の確定申告から、法律により医療費控除の明細書の提出が義務付けられます。

 明細書の具体的な記載内容は、医療を受けた人の氏名(本人や家族など)、支払先(病院・薬局など)、医療費の区分(診療費・医薬品購入等の別)、金額、そして(高額療養費・出産一時金や医療保険・入院給付金などにより)補てんされる金額です。

 医療費一件ずつ明細書に記入していくのは大変ですので、医療を受けた人ごと、かつ、支払先ごとに、1年間にかかった合計額を記入するのがポイントです。

「医療費のお知らせ」で手間を省こう

「明細書なんて面倒だ」というあなたに、おススメの方法をご紹介しましょう。

 毎年2月頃になると、健康保険組合などから「医療費のお知らせ」(以下、「お知らせ」といいます)が皆さんのご自宅に送られてくることと思います。この「お知らせ」ですが、これまではこれといった使い道がなく、ざっと見たらすぐにゴミ箱行きという方も多かったのではないでしょうか。何を隠そう、私もその一人です。

 ところが今回の確定申告から、「お知らせ」(正式には「医療費通知書」)を先述の明細書の代わりにすることが認められるようになりました。

 具体的には、「お知らせ」の原本を申告書にそのまま添付するだけで、明細書への記入を省略できます。

 さらに、「お知らせ」を申告書に添付した場合には、そこに記載されている医療費については、後述する領収書の保存義務も有りません。領収書は捨ててしまって構いません。

「お知らせ」利用の際の注意点

 このように利用価値が一気にアップした「お知らせ」ですが、医療費控除に利用するにあたり、注意して頂きたい点がいくつかあります。

 

 まず、加入している健康保険によっては、法的に求められる要件を「お知らせ」が満たしておらず、せっかくの「お知らせ」を医療費控除に利用できない場合があります。

 手元の「お知らせ」が医療費控除に利用できるか否かは、必ず確認するようにしましょう。

 また、「お知らせ」は、前々年の10月から前年の10月まで(協会けんぽの例)など、中途半端に年度をまたがる形で集計されているケースが大半です。

 医療費控除できるのは、あくまでも前年1月から12月までに実際に支払った医療費に限られます。先ほどのケースでは、「お知らせ」に記載されていない11月・12月の医療費については、領収書をもとに「明細書」を別途記入して医療費控除を受けることになります。

 さらに、「お知らせ」には、薬局で購入した市販薬等や、医療機関までの交通費、受け取った高額療養費・出産一時金などは記載されていません。これらについては、医療費控除にあたり「明細書」を作成するほかありません。「お知らせ」は万能では無いのです。

「お知らせ」を医療費控除に利用する場合でも、「お知らせ」だけで済ませるケースよりも、「お知らせ」プラス「明細書」の二段構えで利用するケースのほうが、実務上は多くなると見込まれます。

領収書を5年間保存

 領収書を5年間保存する義務が、納税者サイドに課せられることになりました。

 この5年間の起算日は、確定申告期限の翌日となります(原則)。たとえば、2017年度の確定申告であれば、確定申告期限2018年3月15日の翌日から5年を経過する「2023年3月15日まで」となります。

 この保存義務期間中は、税務署から領収書を見せて欲しいと言われたら、領収書を提出、または提示しなければなりません。

 実際のところ、税務署から自宅に「領収書見せろ」コールがやって来ることは滅多に無いと思います。ただ、可能性はゼロでは有りませんので、いざという時に備えてきちんと保管しておきたいものです。

領収書保存が面倒な場合の裏ワザ

 領収書を5年間も保存しておくスペースが無いという方には、期間限定の裏ワザがあります。

 その裏ワザとは、「税務署に領収書を提出する」というものです。

 実は、2017年分から2019年分までの3年度分の確定申告については、今回の税制改正を適用せずに、改正前の医療費の領収書の添付による方法、早い話が従来通りの方法によることも経過措置として認められています。

 2019年度の確定申告期限である2020年3月15日を過ぎると、税務署はもう医療費の領収書を受け取ってくれなくなりますので、それまでの期間限定の裏ワザということになりましょう。

領収書をなくしたら

「領収書が見つからなくて、医療費控除をあきらめてしまった」という経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

 医療機関では、領収書の再発行に応じてくれないところも多いです。この場合であっても、医療機関によっては領収書に代わるものを発行してくれるケースもありますので、お願いしてみてはいかがでしょうか。

 また、支払先の住所、氏名、支払金額を記載したメモを、診察券や薬袋などとともに保管するなど、医療費を支払った事実を税務署が確認できるようにしておくことで、医療費控除が認められるケースもあるようです。

税金還付の申告期限は?

 会社員や年金生活者が医療費控除で還付を受ける場合のように、税金の還付を受ける申告については、その対象となる年の翌年1月1日から5年間提出することができます。

 つまり、2017年度の所得税の還付申告は、2022年12月末まで可能です。

 なお、領収書の保存義務期間は、確定申告期限後に行う還付申告の場合には、還付申告書提出日の翌日から5年間となります。

 また、これまで見てきた税制改正は2017年分以降の医療費控除に関するものです。2016年以前分の所得税について医療費控除もれが見つかったので、これから税務署に申告書を提出しようという方は、従来通り領収書の提出が必要となりますのでご注意下さい。