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子どもにウクライナ侵攻をどう伝えるか? 学校でのロシア人いじめ問題や家庭で今できることを考える

親野智可等教育評論家
(提供:イメージマート)

ロシアのウクライナ侵攻について、テレビやネットに衝撃的な映像や悲惨な情報がたくさん出ています。子どもを持つ親御さんたちは、「それらを子どもにはどの程度見せていいのか? ウクライナ侵攻について、子どもにどう伝えればいいのか?」と悩んでいる人も多いと思います。

そこで、この件について、家庭で心がけるべき大切な点や注意点などを7つ提案します。

1,子どもが差別的な言動をしないようにする

ロシアによるウクライナ侵攻への影響で、ロシアにルーツのある子へのいじめが発生しています。クラスメートが「うわっ、ロシア人だ」と笑いながらからかってきて、学校にいけなくなってしまったということです。

また、ロシアとは何のゆかりもないのに、親の一方が欧米人であることから、「ロシア人だ。プーチンだ」とからかわれたという例もあります。これらの言葉は、たとえ言っている側が意識していなくてもヘイトスピーチであり、言われた方は深く傷つきます。

でも、こういったことは、事前に家庭でちょっとした啓発をしておけば防ぐことができます。例えば、次のように聞いて、子どもに考えさせてみましょう。

「クラスの○○さんに、周りの子が『あっ、ロシア人だ』とか『プーチンだ』などと言ったら、その子はどういう気持ちになるかな?」「もしあなたが同じことを言われたらどう?」

このように聞いて考えさせれば、子どもも相手の立場に立って気持ちを想像することができます。そうすれば、ヘイトスピーチなどできなくなります。それほど時間がかかることではなく、ほんの数分あればできることです。

また、子どものことではありませんが、ロシア料理店が中傷を受けた例もありますので、そのような実例をもとに親子で話し合うのも効果的です。

2,子どものさらなる学びにつなげる

テレビやネットのニュースを見るだけでなく、子どもの年齢・資質・興味・理解度などに応じて、さらに積極的に深掘りしていけば子どもの学びになると思います。例えば、ウクライナの歴史、民族問題、現ロシアや旧ソビエト連邦との関係、EUやNATOとの関係、日本との関係などについてです。

これは、世界平和、政治のあり方、経済システムなどについて考えるきっかけにもなり、歴史、地理、政治、経済などの勉強にもつながります。

3,親子で解決策を考えてみる

親子で解決策を考えてみるのもいいと思います。子どもたちも、友達とケンカをしたり話し合いで解決したりした経験がありますので、子どもなりの考えを言ってくれるはずです。

もちろん問題の深刻度は比較にならないほど大きいのですが、それでも子どもなりに考えることには大きな教育的効果があります。

4,自分たちにできることを考えてみる

悲惨な状況にいる人たちのことを知り、自分たちにもできることをしたいと感じる人は大人でも子どもでもたくさんいます。これはとても大切な感情です。

親から言い出しても子どもから言い出してもいいので、何か一つ実際に行動に移してみるといいと思います。例えば、寄付、募金活動、応援メッセージ、平和を祈る絵を描く、手紙を書く、鶴を折る、平和を呼びかける活動をする、などです。

5,戦争の映像や情報に接する時間について配慮する

衝撃的な映像や悲惨なニュースを見聞きするのは、大きなストレスです。子どもにとっては大人以上に大きなストレスになります。それによって、気持ちが鬱屈としてきたり、不安になったりもします。その結果、夜によく眠れなくなったり、注意散漫になったり、イライラしたりすることもあります。

ですから、戦争の映像や情報に接する時間は、子どもの年齢・成長度合い・資質などに応じて調節することが必要です。特に小さな子どもや繊細な子については意図的に減らす配慮をしましょう。

先に挙げた2,3,4についても、子どもの気持ちに添う形で進める必要があります。親がよかれと思って無理にリードすると、子どもに大きな負荷を掛けることになります。

6,戦争ごっこをする子を止めない

子どもが戦争ごっこをすることもあると思います。そういう形で表現することで、溜め込んだ不安や恐怖を排出して精神的な安定をはかるためです。そこで叱って止めたりしないで、排出させてあげてください。

7,子どもの不安や恐怖には共感を最優先する

子どもが「戦争が怖い。死にたくない」などと不安や恐怖を口にすることもあると思います。そういうとき、大人がすぐに「大丈夫だよ」と言ってしまうと、子どもはそれ以上自分の気持ちを話せなくなってしまいます。それによって、不安や恐怖を溜め込むことになります。

ですから、まずは「怖いよね。死にたくないよね」と共感してあげることが大切です。また、「なんで怖いの?」と聞いて、さらに子どもの話を引き出してあげるのもいいでしょう。

とにかく、子どもの話を共感的に聞くことでたっぷり話させてあげることが大事です。それが不安や恐怖を排出することにつながります。そして、たっぷり話させてから「でも、守ってあげるから大丈夫だよ」と言って安心させてあげましょう。それによって、子どもが普段通りの生活ができるようにしてあげることが大切です。

また、小さなことでもいいので、先に挙げたような自分たちにできることを行動に移してみるのもいいでしょう。それによって、前向きな気持ちになることができます。精神的な安定につながります。

教育評論家

教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。Instagram、Threads、Twitter、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」などで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、オンライン講演、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メルマガ、講演のお問い合わせなどについては「親力」で検索してHPから。

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