できたばかりの小学校で、PTAではなく「サポーターズクラブ」を立ち上げて、強制ナシ&会費ゼロで活動を始めました――先日、筆者のもとにこんな報告が届きました。

 うらやましいし、面白そうです。筆者も、もし「ゼロから保護者の会をつくっていいよ」という機会をもらえたら、是非こんな組織をつくってみたいものです。

 強制も会費もナシで大丈夫なのか? 会員が保護者だけで問題ないのか? 連絡をくれた「船橋市立塚田南小学校サポーターズクラブ」代表の成瀬有さんに、さっそく詳しく聞かせてもらいました。

*「みんなで、これから作る」と思ってもらえた

 塚田南小学校(児童数約1080人)は、2021年の春に開校しました。成瀬さんは2020年度、近隣の小学校でPTA会長になりましたが、2021年度からは子どもが塚田南小に編入することが決まっていたそう。

 新設校では開校前に、教育委員会が主導してPTAの立ち上げ準備をすることがありますが、船橋市教育委員会はこの年、保護者ボランティアの取りまとめ役をする「コーディネートボランティア」を募集。成瀬さんも、この一員となったのでした。

 「コーディネートボランティア」のメンバーは成瀬さんのほか、同じ小学校の「おやじの会」の仲間や、他校の保護者など、計10人弱。自然と、PTA会長の成瀬さんがまとめ役になりました。

 「教育委員会は『初年度は、学校からPTAを作るという話はしないよ』というふうに言っていました。作らないと言ったわけではなく『初年度はありません』という言い方です。つまり『保護者がやるんだったら、いいよ』ということでしょう。たぶん『学校が主導するものではない』ということを言いたかったんだと思います」(成瀬さん)

 このやり方、筆者は正しいように感じます。保護者活動の枠組みづくりを教育委員会や学校が完全に主導してしまうと、保護者の主体的な参加は難しくなりそうです。成瀬さんも「やらされるという感覚ではなく『みんなで、これからつくる』という意識をもってもらえたことは、結果的によかった」とふり返ります。

 このとき、集まったコーディネートボランティアの人たちは、他の保護者に対して加入や活動を強制したいとは考えていませんでした。

 「いまの時代の流れを考えれば、全員参加型の活動は無理だよね、やりたい人がいなければ『無理だよ』と言うしかない、ということは、わりと最初の段階から合意できていました。やれる範囲でやりましょう、という感じです」(成瀬さん)

 開校から間もない、2021年5月に行われた運動会のお手伝いは、コーディネートボランティアがプリントを配布して募集。すると、80~90人もの保護者が自ら集まってくれたそう(2021年度の児童数は800人弱)。「これなら、今後もボランティア募集でやっていけるだろう」。そんな認識も共有されました。

 次に悩んだのは、このままコーディネートボランティアが中心となって活動を続けていくか、あるいは組織化して何らかの団体をつくるか、ということでした。どちらも一長一短ありますが、成瀬さんらは考えた末、団体をつくることに。

 「いい悪いは別として、現状の行政や地域、他校との関係において『何かしらの保護者の代表組織』が組み込まれ、求められている部分はあります。たとえば、他校とかぶっている通学路の安全対策について情報交換をするときなど、やはり何か代表組織はあったほうがいい。ほかにも銀行口座をつくるときや、保険を契約するときも団体が必要です。それで組織化することにしました」(成瀬さん)

 ただしもちろん、団体への加入は任意ですから、入会届や退会届は整備することに。そうして今年度(2022年度)、「サポーターズクラブ」が始動したのでした。

 「『サークル活動開始届』というものも用意しました。何でもいいのでサークルとして活動してくれれば、保護者同士のつながりができますし、届出があれば活動中や行き帰りの事故を団体保険でカバーできるので。近日中に『おやじの会』が登録予定で、あとは図書サークルも9月頃までに登録すると聞いています」

 成瀬さんはサポーターズクラブを「使ってほしい」と考えています。「組織ありきではなく、みんながうまいように使ってくれたら、いつか子どもたちのサポートにもつながっていく」と思うからです。

*会員が保護者だけでも学校と協力することは大前提

 塚田南小サポーターズクラブには、いくつか特徴的な点があります。

 ひとつは、会費がないこと。いまのところ活動のために使う費用などは、自治体から出る有価物回収(資源回収)の協力金で賄っています。今後足りない分が出てきたら、寄付や協賛を募ることなどを考えているそうです。

 なお、会費がゼロということは、現状よくPTAが行っている学校への「(割り当て)寄付」ができないことを意味します(*1)。会費の値下げさえ拒む校長先生も少なくないのに、「会費ゼロ」は嫌がられなかったのでしょうか。

 「開校前から『初年度は学校としてPTAを立ち上げない』と言っていたので、当然そこは確認していました。学校に必要なお金は、公費や学校徴収金で賄ってもらいます」(成瀬さん)

 それはよかった。本来は当たり前のことですが、現状は「PTA予算ありき」で学校を運営する自治体が多く、改善が求められるところです。

 ただ、「会費ゼロ」運営は、まだ手探りな部分もあります。

 「いまは市の有価物回収協力金がありますが、近々これが廃止されることが決まっているので、また別の収入源を考えなければなりません。会費を集めれば一定の収入ができますが、そうすると一定の『出』もつくらなければいけなくなる。すると自ずと『これをやらなきゃいけない』という義務的な活動も増えていくので、会費はとらずにやっていきたいのですが……」(成瀬さん)

 おそらく会費を集めたほうがラクな面もあるのでしょうが、必要以上のお金が入ってくれば、どうしても不必要な活動が生まれがちです。難しいかもしれませんが、このまま会費ゼロでやっていけたらいいなと、筆者も思います。

 同サポーターズクラブには、もうひとつ特徴があります。それはPTAのように教職員が入っておらず、「保護者だけで構成する組織」(PA)である点です。

 ただしもちろん、T(教職員)がいないからといって、保護者が好き勝手にするわけではありません。「教職員が会員ではない」というだけで、PTAと同様に「保護者と教職員が協力し合う」ことは大前提です。

 「先生と保護者って、PTAがないとアソシエーションできないものではないと思うんですね。先生は仕事として子どものことにコミットしているので、敢えて『PTAで連携しました!』と言わなくてもいいんじゃないかと」(成瀬さん)

 筆者も賛成です。たとえばドイツやフランスも、先生が入る「PTA」はありませんが、保護者たちは学校と意見交換を行っています。先生たちは最初から子どもたちのために働いているわけですから、本人が希望するのでない限り、わざわざ会に入ってもらう必要はないように思います。

*「大変ですけど、楽しいです」

 団体を立ち上げるのは、大変なことも多かったでしょう。でもきっと、楽しいことでもありますよね? 筆者が尋ねると、「大変ですけど、楽しいです」と成瀬さん。

 「やっぱり立ち上げのところは、理事の方たちにある程度負担感が出て、申し訳ないと思っています。ただ、これは今後ぼくらを含む保護者の人たちをラクにするためのステップなので、『今年もう1年間は我慢してほしい』と話しています。校長先生をはじめ、教頭先生や教員の方々は、ぼくらの活動を好意的に受け止めてくださっているので、いまのうちに仕組みやルールをしっかり整えておきたいです」

 やはり大変な部分はいろいろあるようです。「でも、楽しい面もありますよね…?」と、もう一度だけ尋ねると。

 「楽しいですよ。でも、あまり『楽しんでやっている』と言うと、『あの人たち…』って思われるので、それはそれで難しいところです(笑)」(成瀬さん)

 ほんとに難しいところです。言わせてすみませんでしたが、やっぱり「楽しい」と聞けて、ほっとしました。

 なお、塚田南小の「登下校の見守り」は、サポーターズクラブではなく「安全対策委員会」という別の枠組みで行っているということです。周辺は危険個所が多いため、学校と安全対策委員会で保護者の当番表を作成して、保護者に「お願い」する形です。

 最後に、成瀬さんがいま気になることを聞いてみました。

 「ぼくたちはPTAでなく保護者の組織を立ち上げましたが、これからはもっとそんなふうに『いろんな形の学校周辺組織』が出てくることを想定しておかないと、現実に追いつかなくなると思います。

 たとえばPTAの団体保険も、約款に『PTA』という文字があります。『実際はTがいなくても入れる』と言われましたが(*2)、今後『Tが入ることはPTAの成立要件か?』という点が問題になる場面は、ほかにも出てくるんじゃないでしょうか」(成瀬さん)

 なるほど、そうかもしれません。そもそも「PTA」という団体の定義自体、とても曖昧なのです。学校のなかで特別扱いする根拠が不明確になっているケースも、まま見られます。

 成瀬さんは今後、「全国でPTA改革した人たちとのつながりも欲しい」と話します。「これから生じてきそうな問題について、情報を得たい」とのこと。

 動き始めたばかりの塚田南小サポーターズクラブ。今後どうなっていくのかまだわかりませんが、またおいおい、お話を聞かせてもらえたらと思います。

塚田南小サポーターズクラブ代表の成瀬有さん。以前子どもが通っていた小学校では、何年も「おやじの会」で活動してきた(写真提供:成瀬さん)
塚田南小サポーターズクラブ代表の成瀬有さん。以前子どもが通っていた小学校では、何年も「おやじの会」で活動してきた(写真提供:成瀬さん)

運動会のテント設営の準備をする保護者のみなさん(写真提供:成瀬さん)
運動会のテント設営の準備をする保護者のみなさん(写真提供:成瀬さん)

  • *1 地方財政法は、割当寄付を禁じています。「第四条の五 国(中略)は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共団体又は住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄附金(これに相当する物品等を含む。)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む。)するようなことをしてはならない」
  • *2 保険会社によっても異なります
  • 関連記事/船橋よみうり「無理なく学校をサポート PTAに代わる塚田南小の保護者組織」