先月、京都市PTA連絡協議会(以下、京都市P)が、PTAの全国組織である日本PTA全国協議会(以下、日P)からの退会を検討していることが報じられました。3月2日に開かれた京都市P理事会で、同会会長の大森勢津さんが退会提案を行ったということです。

 近年、都道府県Pから市区町村Pが退会するケースや、市区町村Pから単P(各校のPTA)が退会するケースは徐々に増えていますが、全国組織から都道府県P・政令市Pが退会するという話は、これまであまり表沙汰になっていません。(*1)

 今回どんな経緯で退会提案に至ったのか、大森さんに聞かせてもらいました。

*市Pは単Pを支えるためにある

 最初に、京都市PTA連絡協議会(京都市P)について、簡単に説明しておきましょう。京都市には5つのPTA連絡協議会があり(幼稚園、小学校、中学校、高校、総合支援学校)、京都市Pはこの5つのP連を代表する役割の団体です。

 日Pには、この京都市Pが参加しています。他の都道府県や政令市は、小学校か中学校のPTA連絡協議会が日Pに参加していることがほとんどで、京都市はやや特殊な形です。

 京都市Pは、2018年度には各PTA向けに「入会届」のひな形を作成し、市教育委員会とともに加入意思の確認を促してきました。他地域と同様、せっかく市Pや教育委員会がひな形を示しても採用しないPTAもありますが、今では市内の7、8割のPTAが入会届を導入しているといいます。これは全国的に見ても進んでいるほうでしょう。

 「京都市Pが『多くの保護者が安心して入れる組織に変わるべし』と旗振りすることで、『変わらなければいけない』という意識がある単Pは、適正化を進めやすくなるのではないか」と、大森さんは話します。

 なお、P連は大体どこでも「研究大会」と呼ばれるPTAの事例発表・研修会を毎年開催していますが、事例発表は持ち回り(輪番)で行われることが多く、当番校のPTA役員さんからはよく「負担が大きい」と悲鳴があがります。京都市Pは、この研究大会を20年以上前にやめ、代わりに「PTAフェスティバル」というイベントを毎年行ってきました。ブースを出したりステージ発表を行ったりして、子どもも参加して楽しめるものだったとのこと。(*2)

 以前はこのPTAフェスティバルのとき、活動を披露し合うため、各校のPTAが「壁しんぶん」を作らなければなりませんでしたが、これも令和2年度から見直し、「写真を1枚、コメントを添えて出せばOK」に変えたそうです。大森さんは「市Pは単Pを支えるためにあるのだから、可能な限り単Pの負担を減らすことを考えるべき」と言います。

 筆者も、もしP連に役割があるなら、それは何よりPTAの現場の人たちを支えることだろうと感じます。でも現状、そのような認識で活動するP連は残念ながら少なく、ただ前年通りの活動をこなし、各PTA役員さんたちの「お仕事」を増やすケースが多い印象です。

 見直しが必要ですが、多くの役員さんは自分のPTAのことで手いっぱいで、P連のことにまで手が回りませんし、稀にP連で熱心に社交する人もいるものの、そういった人は単Pの負担に関心が薄い場合もあり、P連はなかなか変わりづらいところがあるのです。

*どれだけ意見が出ても検討されることがない

 さて、では大森さんはどんな経緯で、京都市Pが日Pから退会することを提案したのでしょうか。

 大森さんが京都市Pの会長として初めて日Pの会合に参加したのは、2021年6月に行われた定時総会でした。当時は「退会」など、まったく頭になかったといいます。

 この総会で、大森さんは日Pの会費(分担金)について意見しました。日Pはこれまで、児童生徒1人当たり10円という計算で会費を徴収してきましたが、コロナ禍の2020年度は5円に変更。しかし2021年度は10円に戻すというので、大森さんは「コロナ禍は続いているので5円に据え置いてほしい」と発言。でも残念ながら、総会であがった他の意見と同様に、聞き流されてしまいました。

 また総会で採択された宣言文には「PTAの存在意義を明確にする」「活性化方策を構築し、普及啓発を進める」といった文言がありましたが、具体的な話が何もなかったため、どんなスケジュールで実行するのか質問してみました。でもこれも残念ながら、回答は得られませんでした。なお、この日の総会は多くの会員から活発に意見が出され、日Pの役員も「珍しいこと」と驚いていたようです。

 2度目の集まりは、7月に開催された「協議会代表者会」という会合でした。ところが、この会合は文部科学省の人たちや、日PのOB(元役員)が話すのを、2時間ただ聞くだけだったため、大森さんは落胆しました。そこでZoomのチャット欄から意見を伝えることに。

 全国の協議会代表者が、貴重な時間を使いリアルタイムに参集しているのに、協議の時間がないことに疑問を感じる。情報共有のみなら別の方法でも可能なはず。日Pが多くの課題を抱えている今、代表者会では日Pの組織の在り方や事業の内容について話し合うほうが有効ではないか。

 そのような書き込みをしたからでしょうか。9月には、日P役員と近畿ブロックの会長が集まる臨時の懇談会が開かれることになりました。でもこれも、放っておけば形だけの会になりそうです。大森さんは今度こそ実りある意見交換の場にしようと、事前にブロック内の会長にアンケートで意見を募り、話し合いに向けたレジュメも作成し、それらを共有しました。

 しかしこの懇談会も、開催しただけになってしまいました。大森さんは、自らまとめた懇談会の議事録やアンケート結果を、全協議会の代表者全員に共有してもらえるよう日Pの役員に頼んだのですが、一部の会長にしか配布されなかったようです。後で複数の他ブロックの協議会会長に聞いたところ、「見たことがない」と言われてしまいました。

 懇談会やアンケートでは、せっかく近畿ブロック内の各協議会の会長から、PTA全国大会の見直し、会費の徴収方法、意思決定の方法等々について、さまざまな意見が出されたのに、日Pのなかで検討される様子はありません。

 大森さんは次第に、京都市Pは日Pを退会したほうがいいのではないかと考え始めます。

 これでは働きかけを続けても意味がない。いま京都市は財政的に厳しく、P連への補助金や委託金もことごとくカットされているなか、研修会のオンライン化などで新たな費用も発生している。これまで日Pや全国大会、ブロック大会に費やしてきたたくさんのお金や労力を、京都市のPTAの活動に振り向けたほうがよほどよいのではないか――。

 悩んだ末、大森さんは理事会に退会を提案することに。このとき作成したのが、下記のような退会提案資料だったのでした。

*会長の覚悟と構成員の声がなければ、ずっと変わらない

 この退会提案は近日中に、京都市Pの理事会(PTA会長が26名、校長が14名)で採決される予定ですが、賛否は分かれているといいます。

 「反対意見は、『もっと時間をかけて丁寧に議論すべき』という手続き論がほとんどですが、人の入れ替わりスパンが短いPTAやP連では、会長が任期において決断する覚悟を持つと同時に、全構成員が『物事を決定する仕組み』を尊重しない限り、前例踏襲から抜け出せません。それができなければ、後の人たちもずっとしんどい思いをすることになります。

 各PTAにとって日Pは遠い存在で、ふだん意識さえしないものです。でも実は市Pでは毎年、各会員家庭から集めた会費のなかから日Pの会費を納めており、このほかに研究大会(全国大会・ブロック大会)のために多額の積み立ても行っています。いつか輪番で大会がまわってくるときには、そのときのPTA役員さんたちにも、大きな負担がかかります。P連が判断しなければ、役員さんたちはしんどい思いをして、それがPTA離れにつながる可能性もあります。

 だから今回、『いったん』退会することを提案しました。来年度以降は、またそのときのメンバーで、日Pに所属することが必要かどうか判断すればいい。前例踏襲ではなく、その年、その年で、自分たちの組織の在り方に真剣に向き合ってほしい。そうやって代々バトンをつないできたのが、京都市Pなのです」

 否決される可能性もあるものの、「この提案をきちんと議論できれば、そのこと自体に意味があると思う」と、大森さんは話します。

 「私はいま協議会の会長という立場にありますが、ふだんは小学校のPTAで活動している『ふつうのお母さん』です。クラス委員や、会長以外の本部役員の経験もあります。その感覚も持って『おかしい』と思うことには『おかしい』と言ってきました。協議会に出てくるのは、ふだんのPTA活動をあまり知らない会長が多いなか、『ふつうのお母さん』が声をあげることは、とても大事ではないかと思っています」

 さらに、日Pの正会員である協議会の会長という立場に置かれたからこそわかることもある、とのこと。

 「皆さんに知っていただきたいのは、私だけでなく、悩んでいる協議会の会長さんは、全国にもたくさんいるということです。『おかしい』という問題意識もあるし、変えたいという気持ちももっている。それぞれ思いもあり、忸怩たる思い、ジレンマも抱えている。『このままでいい』と思っている方は、ほとんどいないと思います。

 だけど、変えられへんのです。その現役の人たちの思いをかなえられる『仕組み』がない。日Pにしても、各協議会の代表みんなで話し合って舵取りしていくのが本来のあり方やと思うんですけれど、それができていない。たぶん日Pの役員の人たちにも、思いはあると思うんです。だけど変えられへんのです、組織の意思決定をどうやってするのかがあいまいになってしまっていて」

 おそらくきっと、大森さんの言う通りなのでしょう。組織や集まるお金が大きくなりすぎると、誰にも手がつけられなくなってしまうことはあるのだろうな、と感じます。かといって、このまま放置しておくのが適切なはずもありません。

 退会するか、改善を働きかけるか、あるいはいっそなくすか――。各PTA協議会や、日Pのあり方を見直すためには、結局のところ、各PTAの会員である保護者や教職員たち、我々みんながどうすべきか考え、声をあげていくしかないのです。

<参考資料>

近畿ブロックの各協議会会長と日P役員・OBの懇談会のためのアンケートより

京都市P代表として大森さんが日P役員に伝えた内容(抜粋)

●日P事業内容について

【日Pでしかできないこと】は次の通りだと考えます。

①全国の声を集め、代表して政府に伝える。

②加盟協議会の情報を共有し、運営に還元する。

日Pに対し、一般会員や各協議会が何を求めているかを把握し、話し合い、その内容を求めていく仕組みに改める必要があります。

「これまでの経緯や契約があるから変えられない」では、PTAを取り巻く厳しい現状に対応できているとは言えず、むしろPTA離れに拍車をかけています。

「公益社団法人だから、定款に定められているから、やらないといけない」では本末転倒。一般会員や各協議会のニーズに応えられないのであれば、公益社団法人格である必要はないし、定款はニーズに合わせて変更すればよいだけです。

具体的には【日Pでしかできないこと】にリソースを集中し、協議会や単位PTAでも実施していることや、地域独自性の高いもの(国際交流・研修、いじめやスマホ等個別課題への対応等)については、各協議会に任せるべきです。そしてその各協議会での取組の情報共有の場を取り持つのが日Pの役割だと思います。

事業の成果については、ホームページ等を活用して広く公開すべきです

(分担金を負担しているのに、書籍を別途購入しないと成果を得ることができない現状は、一般会員に対し説明できません。)

●会議の持ち方について

行政説明やOBによる情報提供、各ブロック協議会の現状説明は、資料配布や動画配信など別の方法でも事足ります。

多忙な全国の協議会代表が一堂に会するという限られた機会であることをまずは認識した上で、議題を設定する必要があります。

具体的には、上述(1)の【日Pでしかできないこと】にリソースを集中すべきであり、そのための実質的な話し合いの場とすべきです。

●全国大会について

現行の開催形態(持ち回りで一協議会に実務を担わせ、全国から実質的には動員をかけ、泊まりがけで講演を聞くというスタイル)は、コロナ禍を経て、もはや理解を得られるものではなく、むしろPTA離れに拍車をかけるおそれがあります。

北九州大会の経験も踏まえ、この際、オンラインを主体(広く会員が無料で視聴可能)とするとともに、一協議会に実務を担わせるのではなく、日P本体が主催する形態に見直してはどうかと思います。

●その他

日Pとしての意思決定プロセスを明確にすべきです。誰が何をどのような手続きをもって組織としての意思決定がなされるのか、少なくとも協議会代表レベルまで共有しないと、「皆さんは日Pの当事者」と言われても説得力がありません。

(例えば、文科省への要望書等を提出されるときも、よほどの緊急性がない限り、事前に協議会代表に報告すべきです。また、年に1度は事業内容なども見直しをする機会を持っていただきたいです。)

その上で、会長としてのトップマネジメントを発揮されることを期待します。日Pをどうしたいのか、どのように将来を描いているのか、少なくとも会議の場では自ら質問に答えるなど、あらゆる場を通じて発信していただきたいです。

  • *1 日Pの正会員になることができるのは都道府県Pと政令市Pですが、政令市Pのなかには、日Pでなく都道府県Pの会員となっているところもあります
  • *2 京都市からの補助金がカットされ大規模な会場開催は難しくなったところ、コロナ禍も重なり、オンラインを中心とした形に変更