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「保護者=PTA」ではない 「お手伝い」が必要なら、学校はPTAでなく保護者に言おう

大塚玲子ライター
PTAを通さなくても手伝いは集まる。父親が参加しやすくなる傾向もあるようだ(写真:アフロ)

 夏休みが終わり、多くの学校が再開。コロナ禍の今年は特に、子どもたち、そして先生たちの負担が心配されています。文部科学省は先日、過剰な消毒は不要とする見解を出しましたが、これで一気に先生の仕事が減るわけではないでしょう。

 筆者は学校がPTAや保護者の手伝いを「前提とすること」に、基本的には賛成しません。なぜなら、学校が保護者の無償労働に頼っていると、いつまでも十分な公的予算がつかず、学校は手伝いをする保護者に対し恩に着て、保護者サービスに傾く傾向もあるように感じるからです。

 ただ、「できることがあれば手伝いたい」という保護者も、もちろんいます。先生たちと同じように、多くの保護者もいま厳しい状況にあるので、実際に手伝えるとは限りませんが、動ける人もなかにはいます。そこで今後、学校にすすめたいのは「PTAを通さず、保護者に直接ボランティアを募る」というやり方です。

 なぜ「PTAを通さず」かというと一番の理由は、現状多くの場合、PTAを通すと、本人の意思に反して参加を強いられる人が出てしまうからです。本部役員さんは「参加して当然」とみなされ、一般会員も「みんなやっているんだから」と同調圧力を受け、結局多くの保護者(なぜかほぼ母親)が本人の状況や意思にかかわりなく、参加を強制されることになりがちです。

 校長先生は軽い気持ちでお願いをするのかもしれませんが、役員さん→部長(委員長)さん→末端の一般会員へと話が伝わるうちに強制力が増し、手伝いの当日には、仕事を休んだ人や、病気で療養中の人が、無理をして集まってくることは、よくあります。

 以前、東京都教育委員会が東京五輪・パラリンピックの高校生ボランティアを募集した際も同様でした。都教委に強制の意図はなかったようですが、都から区・市、校長、担任へと話が伝わるうちにトーンが変わったのでしょうか。一部の学校では、「生徒は全員、申込用紙を提出すること」という“命令”になっていたのでした。

 「学校が直接募集したら、人が集まらないのでは」と心配かもしれませんが、筆者が聞く限り、それはなさそうです。筆者の周囲では、たとえばこんな声がありました。

 「6月に学校を再開してから、分散登校期間の登下校見守りと手洗い場や階段の手すりなど校内共用部の消毒を、学校が募集していました。十分な人数が集まったようです。PTAは関与していません」(Nさん/元PTA会長/岐阜県)

 「この春からPTAは活動していませんので、行事のお手伝いその他、すべて校長名でボランティアを募集しています。十分集まっているようです。学校とPTAの本部役員で意見交換は行っています」(Oさん/PTA会長/福島県)

 今年度の話に限りません。筆者は以前から、「PTAを通さず、学校(校長先生)がお手伝い募集の手紙を出したら、むしろいっぱい人が集まった」という話を聞いています。PTAを通さないほうが、父親が参加しやすくなる傾向もあるようです。

 たまに「人数が十分に集まらなかった(ので追加募集した)」という話も聞きますが、PTAで募集をかけてもこれはありますし(だからよく強制が起きるのです)、目標の人数設定のほうに問題があったともいえます。

 なお、先日筆者が取材をした、ESD(持続可能な開発のための教育)の実践で知られる住田昌治先生(横浜市立日枝小学校校長)も、6月に学校が再開してから、消毒作業などのボランティアの募集を学校がメールで直接行っていると話していました。「やらされている感」が生じないよう、敢えて「PTA役員は参加しない」そうです。(住田先生のお話は今後改めて別の記事で紹介する予定です)

*PTAに気を遣い、頼みづらいことも

 さて、PTAを通さなくても保護者ボランティアを集められるなら、なぜいまもPTAを使って手伝いを募集する学校が多いのでしょうか? 単純に、PTAを通したほうが学校側の手間が省けることや、保護者間に働く同調圧力(強制力)への期待もあるかもしれませんが(これを勘弁してほしいのですが)、関係者に聞くと、ほかにも理由はあるようです。

 たとえば、「PTAへの気遣い」。管理職の先生たちは、「PTAがあるからには、PTAを通さないと失礼だ」と思っていることがあるようです。

 「気遣いはたぶんあると思います。管理職の先生方は、私たち(役員)にとても気を遣われていて、ふだんから『何でもまずご相談』があるので、かえって申し訳ないくらいなので。実際、支配型のPTAだと、役員さんが『先にこっちに話を通してくれ!』となったりするかもしれないですね」(Tさん/PTA役員/神奈川県)

 「今年度、うちの学校がお手伝いを直接募集できたのは、この春から校長先生と教頭先生が一度に変わって、PTAに気兼ねしなくて済んだから、というのもあると思います」(Nさん/元PTA会長/岐阜県)

 実際、役員さんが「PTAを通さないのは失礼だ」と考えていることはあるようです。ある保護者は「PTAを通さず、学校にあるボランティアを申し出たら、役員さんのドンみたいな方が気を悪くしてしまい、あとで足を引っ張られたりして苦労した」と話していました(Tさん/一般会員/東京都)。

 このように難しいところはありますが、「直接募集してくれたほうがいい」と考える役員さんだって、大勢います。ただ気を遣っていても話は進まないので、思い切って本音で話し合ってみてはどうでしょうか。PTA役員さんのほうから、「学校が直接、募集してほしい」と提案できると、より話が早いかもしれません。

 なおこのほか、「保険」が理由ではないかという声もありました。ある地区の小学校では、学校のお手伝いのボランティアにPTAの保険(*)を適用させるため、校長単独でなく、PTAも連名で募集をかけているそうですが、これはちょっと本末転倒な印象です。善意なのはわかりますが、どうしても保険がほしいなら、別のものを用意したほうがいいでしょう。たとえば、各自治体が用意するボランティア保険などもあります(事前登録制が多い)。

 最後に念のため、筆者が「PTAを通さず」をすすめるのは、PTAではしばしば強制が起きてしまうからなので、もし強制が起きず、役員さんも一般会員も無理なく、自分の意思で参加・不参加を選べる状況であれば、「PTAを通して」募集でもよいのではと考えています。

 逆にもし、PTAを通さずに募集しても、本人の意思にかかわらず参加せざるを得ない人が出るのであれば、やめたほうがいいでしょう。どんな形で募集するにしても、ボランティアとはあくまで、参加者本人の意思によるものです。いやいややる偽ボランティアを、子どもたちが学ぶ学校という場で行うことは、避けたいものです。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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