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どこ行ったタイムカプセル「工事中に出てきちゃった」「この辺のはず…」保護者が知らない“学校の仕事”

大塚玲子ライター
「明新小タイムカプセルプロジェクト」の作業風景(写真提供:同プロジェクト)

 PTA活動に参加して「学校の様子がわかった」という声は、ときどき聞く。本当は活動に参加しない保護者(多くの父親を含む)にも、学校の様子が伝わる必要があるが、現状、学校が積極的に発信する情報は決して多くない。

 筆者も活動(運営委員会)のなかで、思いもしなかった学校の裏話を聞いて「へえ…」と思ったことは何度かある。

 なかでも妙に印象深かったのが、「タイムカプセル対応」の話だ。校舎や体育館等の増改築を行う工事のとき、敷地のあちこちから「昔の卒業生が埋めたタイムカプセルが出てきてしまう」というのだ。

 そのままにもできないし、捨てるわけにもいかないので、学校(ほぼ教頭だろう)はやむなく埋めた代(学年)の卒業生を探すわけだが、これが難航するという。人づてに探しても、なかなか見つからないこともあるそうだ。

 一見どうでもいいような話だが、ここでも教員(教頭)の仕事が増えていることは間違いない。「我々が想像もしないようなことで、学校は忙しくなっているのだなぁ」と気付かされたエピソードだった。

 タイムカプセルのほかにも、おそらく学校にはこういった外から見えない仕事が無数にあるのだろう。どんどん可視化して、外部(保護者等)に伝えていく必要があるのではないか。

*数々の予想外の末路

 他方では、卒業生が集まってタイムカプセルを掘り返そうとしたものの、埋めた場所がわからなくなって往生するケースも多いようだ。

 今年3月にも、福井市立明新小学校の卒業生らが40年前に埋めたタイムカプセルを探して「広範囲にわたって深さ50センチほど掘ったがカプセルは見つからず、2時間で断念した」という。代表者はリベンジを誓い、現在も新たな情報を募っている。

参考)40年前のタイムカプセル、どこへ 福井市明新小卒業生が発掘計画/福井新聞ONLINE

参考)明新小学校タイムカプセルプロジェクトFacebookページ

 埋めた場所の目印があればすぐ見つけられそうなものだが、なかには目印に植えた苗木が育ってしっかりと根を張り、掘り起こしを阻んだ例もあった。ままならない。

参考)三重)タイムカプセル今度こそ! 8日再挑戦 伊賀:朝日新聞デジタル

 そこら中を掘り返す前に、場所の目星をつけようとした例もある。9年前、新潟市の旧万代小学校の卒業生らはタイムカプセル探しに“探査機”を活用して、掘削ポイントを絞り込んだという(新潟日報 2010.5.31)。

 いい方法に見えたが、真似をするのは難しそうだ。計測器等のレンタル会社に問い合わせたところ、「タイムカプセルの容れ物が金属なら“金属探知機”を使えるが、金属以外の素材(衣装ケース等)の場合は“地下レーダー探査機”が必要。レンタルでも60-70万円ほどかかる」とのこと。さすがに高い。

 しかも残念ながら、関係者に問い合わせたところ、タイムカプセルは見つからなかったという。「レーダー探査機が水に反応して」しまい、絞り込んだポイントを掘り返してもカプセルは出てこなかったのだ。

 もう、無理に見つけようとしなくてもいいのかもしれない。古い新聞記事には「埋めた場所がわからず探すのを断念したが、参加者は昔話に花を咲かせて楽しんだ」という話もいくつかあった。タイムカプセルを埋めた当初の目的は、これで達成されたと考えられなくもない。

 若干話が広がってしまったが、子どもも保護者も教員もどんどん入れ替わる「学校」という場においては、我々が何の気なしに始めたことが、何十年という時を経て、思いもよらない「誰かの手間」を生む可能性があることを、心に留めておきたい。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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